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第一章

第40話 冥神ざまぁ回①だよ、みんな見てね♪

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「なっ、なっ、なっ、なっ、なっ……」
 怒り狂ったミルティアが俺と戯神を連れて乗り込んだ先……部屋の中央でアナトと同じように呆然としている太ったおっさん……これが冥神様らしい。


「あっ……えーと、その……」
 あきらかに狼狽している。


 ???:さすがに酷すぎるだろ~!
 ???:まさかあの人間が生まれたときから細工をしていたとは……。
 ???:ちょっとかわいそうだよな。本当はもっと多彩なスキルを駆使して強くなってたはずのやつのスキルを封じるなんてな。
 ???:そもそもちょっとよくわかなかったんだが、その多彩なスキルを覚えるための称号も冥神様が与えたのか?

「冥神さま?(怒)」
 うしろに『ゴゴゴゴゴゴ』って感じの効果音でも引き連れてそうなほど怒っているミルティアが冥神様に詰め寄る。

 ???:さすがに擁護できんよな。
 ???:そもそも人間の世界に介入しすぎでは?
 ???:冥神様、あやまれ~!!!

「ちっ、違う。たしかにスキルを制限するよう封印したが、"コレクター"を与えたのは私ではない……だから……ぎゃーーー!!!」
 ミルティアが凄まじいオレンジ色の光を冥神様にぶっ放した。

 1級神vs2級神の攻防ということになるのだろうが、ダメージ入るんだ……と、他人事のように感じてしまう俺。

 ???:慌ててるからもう何言ってるのか理解できてないんだろうけど、それだとよけい酷くないか?
 ???:だよな。スキル群はアナトのもともと持ってるもので、使えなくしてたなんて、ただの祟りとか呪いだもんな。

「はっ……いや、ちがっ……ぎゃーーーー!!!!!」
 ミルティアのオレンジ色の攻撃に加えて、おそらく戯神様の紫色の攻撃も混じった。


 えーと、どうしよう。
 こんなに怒ってもらえると、俺自身は冷静というかなんというか……。


『となると、"コレクター"を付与したのは誰なんだろうな?』
 攻撃の振動で寝ていた火竜が起きてコメントを伝えてくるが、今そこ気にするの?って感じだった。

 ???:火神様、疑問はわかるけど今はそこじゃなくね?
 ???:火竜かわゆい♡
 

 
「さぁ、冥神さま。どうしてこんなことを仕出かしたのか、全て吐いてもらうからね。20年も前にアナトに何をしたのか、なぜそんなことをしたのか(怒)」
「ぐっ……わかった……ぎゃーーーー!!!!!!」
 もう一度オレンジ色と紫色の攻撃が冥神様を襲った。なんで?

 さすがに驚いた俺がミルティアと戯神を見ると、2人ともその手で冥神様を掴んで攻撃していた。
 もしかして逃亡対策か?

 えぇと、そんなに怒ってくれてありがとう。


「で?」
「うぅ……企画を面白くしようと思ったんだ……」
 2人の女神に詰め寄られて身動き取れずにしぶしぶ冥神様が白状したそれはこんなものだった。

「どうして俺の力を制限したら面白くなるんだ?」
 
 ???:そうだよな?
 ???:神が支援するのであればだれでもよかったのでは?
 
 つい、気になって聞いてしまった。誰かわからないけど『誰でもよかった』はちょっと凹むな。
 でも、冥神様が俺の方に目を向けて……なんか期待するような目はやめてほしい……語りだした。


「今回の企画は旅企画だった。だから、旅に出てもらわないといけない。でも、ちょっと不調になったくらいでは人間は全てを捨てて旅にはでないだろ?だから、追い込むために所属していたパーティーから追放されればと思ったのだ」
 聞いてみると予想の範囲内だが、どう考えても酷い理由に唖然とする俺とミルティアと戯神様……と、配信の向こうの神様達。


「どうだ?遊神に戯神よ。私が企画した通り面白い企画になっただろう……ぐはぁ!!!!」
 手を掴んだまま、反対の手でまたオレンジ色と紫色の魔力攻撃を放つ2柱の神様。

 ???:いやいやいや。そこで『さすがです冥神様!』とはならんだろう。
 
 
「そこではなく、アナトのスキルを制限した理由を聞いてるんだけど?(怒)」
 そうだよな。
 思わず企画のためか、って思いかけた俺も思い直して冥神様の言葉を待った。

「もちろん旅をスリリングにするためだ。最初から強い、ではつまらないだろう。旅の中でスキルが解放され、強化されながら目的に向かっていく。そうして試練を乗り越えた先で戯神と会い、解放されるという感動的なストーリーのために決まって……ぐぉおおぉぉお!!!」
 手を掴んだまま、反対の手でまたオレンジ色と紫色の魔力攻撃を放つ2柱の神様。
 何回目だろ?
 
 ???:さすがにこんなので企画が成り立ってるとするとちょっと引くな。

 番組を見ている神様達ですら引き気味だ。
 

『もしかしてある程度強さになることは分かった上でそこのアナトとやらを狙ったのか?だからスキル封印という手段を選んだと?』
 そういうことか……。
 強くなるかわからないやつを連れてくるより、ある程度の強さが望める俺に目をつけてスキルを制限することで弱くし、さらに仕組んでパーティー追放させて退路を断ったうえで企画に出したと……。

 何も言えない。
 ミルティアの表情をふと見てしまったが、歯を食いしばっていた……ブチ切れ継続中だな。

 
「そうだ!だから面白い企画になったのだ!……ん?」
 これまでのようにオレンジ色と紫色の攻撃が来ることを警戒していたのか、それがなかったことに怪訝な表情をする冥神様。


 そして……
 
「覚悟はいいかな?冥神さま……(怒)」
「冥神様……さようなら……」
 なんだろう、プレッシャーがやばい。
 たくさんの強力なスキルを解放してもらった俺にしても裸足で逃げ出したいくらいの強力な魔力を感じる……。


「えっ……なっ……えっ……?」
 バシュン!

 そして姿が消えた冥神様……。


 その姿をこのあと見たものはいない……って、えっ?
 ミルティアも戯神も火竜もいなくなってる。





 なんで、俺が1人で取り残されてんの?
 
 光神 :アナトとやら。冥神がすまぬな。とんだ迷惑をかけてしまったようだ。
 
 なっなっなっ……

 光神 :冥神にはたっぷり仕置きをするので、どうか許してほしい。
 雷神 :そうだな。娘たちのことがあって感情的になってしまったが、明らかにこちらが悪い。迷惑をかけすぎだ。
 闇神 :キミのこれまでの努力は決して無駄ではないことだけは覚えておいてくれ。"コレクター"は努力がなければスキルは覚えない。ただ寝ているだけでスキルが増えるようなものではないのだ。
 風神 :すまない。今連絡を受けて知ったが、申し訳ない。君に"コレクター"を付与したのは古代神様の誰かなのではないかという予想だけ伝えておこう。そこに、冥神が気付いて漬け込むような出来事が織り込まれていたのかはわからないが、その力は君に刻まれた君のものだ。
 
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