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いざ安住の地へ

<フィン> 兄への見舞い

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 僕は兄上のところを訪れる。本当に心臓病なのかの確認と、会話可能なら兄上と選定会議のことで話したい。できれば魔導具のことも。

 兄上はずっと病床に伏せっている。
 来るのは久しぶりだ。

 訪問を断られたらまずいので使いを出した後、図書室を出てすぐに使いを出し、食事をして風呂に入って身だしなみを整える。
 そうしているうちに使いが戻り、訪問の許可を貰えた。

「兄上、失礼します」
「……」
 兄上は無言で横になっている。
 弱弱しい。こんなにも細ってしまって。

「フィン……殿とお呼びしますわね。ミカエルの見舞いに来てくださってありがとうございます」
「レオノーラ様。突然の訪問、お許しください」
「もちろんです。このような時期だからこそ、思い出してくださって嬉しいわ」
 レオノーラ様もご一緒だった。
 彼女は正妃、つまりミカエル様の母上だ。
 嬉しいと言いつつ、その表情は決して明るいものじゃない。
 
「少しお伺いしたいことがあって参りました。兄上のことで、聞いていただきたいことがあります」
 兄上は話をできる状態ではなさそうだ。なら、レオノーラ様に伺うしかない。しかも彼女が味方になってくれたら……。

「わかりました」
 聞いてくれるようだ。

「兄上が倒れられたとき、胸を押さえていたと伺いました。また、その前から体力が低下していたと」
「どうしたのですか?何かを探っていらっしゃるのですか?」
「はい」
「魔力病は何かの呪いなどで起こるものではないと聞いておりますが……?」
 いけない。誤解されてる。怪訝な表情をされている。

「いえ、そういうことではないのです。実は魔力病を治す術を探っておりまして」
「治す?あなたはミカエルを治すために活動しているの?」
「はい」
「それはいけません」
「えっ?」
 どういうことだ?治したらいけない?


「てっきり、仲の良かったミカエルに王位継承への決意を聞いてほしいのかと思いました。いえ、そうあるべきです」
「レオノーラ様、私は……」
「その考えは危険です。なぜ今なのですか?」
「……それは」
「今はご自分のことを考えなさい。ミカエルを道具にしないで」
「レオノーラ様、違います」
「何が違うというの?魔力病は治りません。そしてもしミカエルを治しても、ここまで弱ってしまっては元には戻りません。それでも慈悲深きものとして王位継承に役立てようと、そうお考えなのではありませんか?」
「違います、レオノーラ様……」
「あなたがそんな子だとは思いませんでした。どうか出て行ってください」
 違うんです、レオノーラ様。どう言えばいい?どう言えば伝わる?

「……ふぃん、か……」
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