筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫

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開拓編

52.試料の採集と実験(黒と小夜のお勉強)

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昼食後、小夜が見つけた地層を確認しに行く。
まだ雨は降り出していない。

小夜の案内で、泥濘ぬかるんだ道を進む。

同行者は青と黒、そして椿。珍しく白が小夜と別行動になった。紅は昼寝するらしい。

地層は里の北側の山中にあった。
まだ新しい岩肌、法面に草木が生えていないところを見ると、小夜の見立てどおり最近崩落したのだろう。

高さ5mほどの崖は、上から土の層、その下に花崗岩と砂岩、石灰岩の層があり、更にその下に幅50cmほどの黒い石炭層がある。

見えている範囲では石炭層は最も下部に位置している。
辺りには崩落時に一緒に砕けたであろう岩の欠片が散らばっている。小夜達が収集してきたのは、この散らばった石炭と石灰石だった。

手分けして石炭と石灰石を回収する。
本格的な試掘は梅雨明けにするとして、どのように利用するかを梅雨の間に検討しておこう。

集めた試料はそれぞれ5kgほど。麻袋に入れ、納屋に持ち込む。
一応石炭は比重など測っておきたい。

「比重ってなに?」

早速黒の質問タイムが始まった。

しっかり説明してあげたいし、何より黒は理解も早いし応用力もある。だが、今は少し時間が惜しい。

「比重ってのは、その物質の密度、つまり単位体積あたりの質量と、標準物質の密度との比だ」

「ミツド……?」

「水を標準物質とした場合、水の4℃における密度を1.00g/㎤とする。同じ1㎤の物質の質量が1.00gより軽ければ、その物質は水に浮く。逆に1.00gより重ければ、その物質は水に沈む。そうやって、その物の性質を分類する基準になる」

「どうして4℃の水を基準にする?沸騰していたり凍る寸前のほうがわかりやすい」

「水は4℃で密度が最も重くなる性質がある。温度が高くても低くても、水の密度は軽くなるんだ」

「何故??」

ああ、その疑問を解説するには分子物理学の知識が必要だ。理解させるには基礎教育も時間も圧倒的に足りない。


「とにかく!何をしたらいいですか?」

小夜が指示を仰いでくる。正直助かった。

「小夜は試料1個がすっぽり入りそうな容器を探してくれ。丼でもバットでもいい。黒は電子天秤と計量カップの準備。調理器具にあったはずだ。椿は試料の洗浄と俺の手伝いを頼む」

その間に実験ノートを準備する。

青、白、黒、小夜は文字の読み書きをマスターしている。椿はまだまだ勉強中だ。青と黒は教科書や図鑑を読むため、白と小夜は漫画やラノベを読むためと、双方目的は違ったが。

特に黒と小夜は自分でテーマを決め試行錯誤することが多いから、実験ノートの書き方はきっと役に立つだろう。いい機会だし体験させよう。

新品の大学ノートとボールペンを2セット準備する。

バケツに水を張り、椿が洗ってくれた石炭を投入し、水に浮いたもの(Aグループ)と沈んだもの(Bグループ)で、別々に回収し、乾燥させ試料とした。

小夜と黒が頼んだ実験器具を持って集まってきた。
大学ノートとボールペンを渡し、実験の目的と手順を説明する。


実験の目的
石炭試料の重量と比重を測定し試料ごとに記録して、今後の研究に活かすこと
手順
①試料を洗浄し、検体毎に水に投入し、比重が水より小さいか大きいかを分別する

②比重が水より小さいものをA、大きいものをBとする

③AグループとBグループの実験担当者を決める。Aグループを黒、Bグループを小夜にする

④Aグループの試料にそれぞれA-1、A-2…と、Bグループの試料にそれぞれB-1、B-2とナンバリングする

⑤実験に使う容器の空重量を測り、記録する

⑥試料それぞれの重量を測り、記録する

⑦容器に計量カップで水を容器の縁いっぱいまで投入し、投入した水の重量と体積から水の密度を算出する。
水の密度=投入した水の重量〔g〕/投入した水の体積〔㎤〕

⑧同じく、比重が軽い試料の標準物質としてラードを加温して温め、⑦と同様に密度を算出する
温度による密度変化を評価するため、温度を変えて2回測定する

⑨容器に試料を1つ入れ、水を容器の縁いっぱいまで投入する

⑩水投入前後の重量変化から、投入した水の重量を求め、⑦で求めた水の密度を使って、投入した水の体積を算出する。これが試料の体積に等しい

⑪試料の重量と⑩で算出した試料の体積から、試料の密度と比重を算出する
試料の密度=試料の重量〔g〕/試料の体積〔㎤〕
試料の比重=試料の密度〔g/㎤〕/水の密度〔g/㎤〕

⑫手順⑨から⑫を試料の数だけ繰り返し、記録する
なお、Aグループの測定では、手順中の水をラードに置き換え、測定する


さて、これだけの情報と限られた資材で実際にデータが採れるだろうか。


結論からいうと、黒も小夜もあっさりと測定を行ってしまった。
得られた石炭試料の比重は0.9~1.2、平均1.0だった。
これは見かけ比重だから、内部に空洞があったり、他の鉱物を抱き込んでいた場合は測定値が軽くなったり重くなったりしてしまうが、概ねイメージどおりの結果だ。

実際に発熱量を測ったり、あるいは燃料比を測定したわけではないから一概には言えないが、恐らく瀝青炭れきせいたん亜瀝青炭あれきせいたんに該当しているだろう。
三池炭鉱や英国ウェールズで採掘されていたものと同じだ。

重要なことは、これでこの黒い石が石炭であることが確定したこと、そして黒と小夜が立派に実験データを採取できたことだ。

鉱業的な採掘はずっと先の未来かもしれないが、少なくとも当面の燃料には困らないし、黒と小夜を中心に教育体系を整えていけば、里の未来も明るい。
梅雨のうちに教育体系を整えることが、俺にとっての重要課題になった。
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