筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫

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開拓編

34.農作業を始める

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結局、広げてしまった荷物の片付けで1日が終わった。
この世界で使えないものは、まとめて奥の部屋に入れてしまう。

「タケル?なぜわざわざ部屋に入れる?私が管理すれば簡単」

黒が不思議そうに聞いてくる。

「そうだなあ…絶対に必要なものや、なくなると困るものは黒の力を頼る。けど、この世界で使えないものは結局はガラクタだ。捨ててしまってもいいけど、捨てるのも燃やすのも残ったゴミの扱いに困る。だから使わない部屋に放り込んでおくでいいんだ」

そう説得した。

ついでに、じいさんの部屋の荷物を囲炉裏の間に移動し、部屋ごと小夜達に明け渡した。5人で使うには手狭ではないか心配だが……

「私が住んでた家より広いよ!」

「寝るには2畳もあれば十分だよね!」

「狭かったらタケルの部屋に逃げ込む」

「まあ俺たち年長組は囲炉裏か仏間でもいいけどな」

それぞれ否定意見ではないので大丈夫なようだ。

俺は自室をそのまま使う。テレビやパソコンがなくなった代わりに、じいさんの部屋から日本史や図鑑が移動してきた。
青と黒が勉強したいらしい。書かれている文字は現代仮名遣いだから、まずはそこからだ。

そういえば照明器具も全て撤去した。電気がなければ、ただの飾りでしかない。
光の精霊を明かり代わりにすることもできるが、日が暮れたらさっさと寝るしかない。
今後皆が勉強を始めるのなら、早期に明かりの確保は必要だ。



翌日から、本腰を入れて農作業を始めた。

正門上空から見た台地の区画割りは、通りの突き当たりに家があり、向かって右手に畑がある。
通りの左手にも浅く水路を引き込み、水路で仕切られた西側一帯を水田にする。

10m×10mを1枚の田になるよう畦道あぜみちとし、内側の表土と砂礫層を一旦畑エリアの空き地に移動させる。
すると約60cm下の粘土層が露出した。

粘土層の上に水はけを良くするために無数の穴を開けた竹筒を置き、北東から南西へ導水できるようにする。
掘り起こした表土と砂礫層を混ぜながら、地面から30cmの深さまで埋めもどす。

水路を堰き止め、田に水を張る。

全ての田に水が行き渡るまで、1週間ほどはかかるだろう。

水を張っている間に苗代なわしろの準備をする。
通常は5日ほど水に浸けた種籾を育苗箱に撒き、そのまま苗代田に並べ、ビニールトンネルで保温して2週間ほどかかる。

今回は多少緑の精霊の力を借り、発芽率と成長率を補助する。
田に水を張り終える頃には、苗の高さが20cmほどになっていた。

あとは総出で田植えだ。田植え機などは使わず、縄を張って一定間隔で手植えする。

これで、10m×10m=1aアールの田が6枚出来た。

現代農法では10a=1反たんで600kgの反収たんしゅうを見込むから、6aではおよそ360kgの収穫が見込める。
1石を150kgとすれば、この作付け面積でおよそ2.4石。有機農法では反収はおよそ1/3に落ちるが、そこは2期作や3期作などで補う。

一般的に稲は暖かい地域の方が生育がよい。
そもそも開花には最低15度以上が必要だし、稲刈りまでには100~150日必要だ。

元の世界の気候では3月頃から7月頃までと、8月から11月末までの2期作のチャンスはあった。

今の世界では、既に日中の気温は20度近い。順調に生育すれば、恐らく7月には最初の稲刈りができるかもしれない。
青と小夜の話では、真夏になる前には梅雨時期があるようだから、梅雨明け後に稲刈りができるぐらいのペースで生育させよう。

合わせて、畑エリアで育てる作物も増やした。
乾燥した南東部分ではトウモロコシとジャガイモ、水利のいい北東部分でネギや大根、ホウレンソウやキャベツなどの葉物野菜、畑エリアの周囲の空き地で菜種、これは菜種油を灯の燃料にできないかと考えてのことだ。
田エリアの区画割りであぶれた南西部分には里芋、畦道には大豆をそれぞれ育てる。

納屋の近くでは、小夜が古い鳥の餌から拾い出したあわひえ蕎麦、アマランサスといった雑穀を育て始めた。上手に緑の精霊を使い、生育と収穫を繰り返している。
主に鶏やウズラの餌だが、緊急時には頼りにするかもしれない。
ちなみに昼間は鶏は放し飼いだ。夕方になると自分達で勝手に小屋に入るので、小夜が扉を閉める。

納屋からはいろいろな果物の種も見つかった。林檎か梨の種、柑橘類、栗、桃、梅、枇杷、葡萄などだ。
発芽するかは不安だったが、家の周囲に撒くときちんと発芽した。数年後には収穫できるかもしれない。
柑橘類は途中で接木が必要だろう。

農作物の管理リーダーは青を指名した。小夜と白もメンバーに加える。
これで皆の大方の役割分担が決まった。

青を中心に小夜と白で農作物管理。

紅は里の防衛と狩猟、俺もこれに加わる。

黒は資産管理。

作業は基本的に全員参加だが、必然的に農作業と狩猟のグループに別れることが多くなっていた。

そういえば、里に来た頃から、元の世界の服を着るようになった。慣れない着物は裾を踏んだり袖を付けたりと、とにかく汚れるのだ。腹回りが引き締まったおかげでブカブカだが、ベルトを締め込めば支障はない。

すると小夜や黒が真似をし始める。
最初は俺の服を着ていたが、流石に大きすぎた。
しかし一人で家にいることが増えた黒が意外な才能を見せる。自分で服や靴を作り始めたのだ。

雑誌や漫画を見ながらデザインし、布を複製し縫っていく。
素材は木綿か麻。靴は革か帆布のような厚手の木綿。流石にゴム底の再現は出来ず悩んでいたので、荒縄を松脂で固めたものを提案してみると上手くいった。
ファスナーは難しいようで、前合わせやポケットには磨いた木のボタンが付く。

結局、全員が黒の作った服を着るようになった。

青はミリタリーやパンツスーツが気に入ったらしい。作業に出るときはカーキ色のミリタリージャケットに軍パンが多い。

俺も同系統だが色はアースグリーン。

紅は一気に軽装になった。ショートパンツに淡い色のチュニックかTシャツが多い。裾がひらひらするのは好みじゃない様子。

白と小夜は黒の着せ替え人形のようになっているが、ワンピースやセーラー服っぽい服がお気に入りのようだ。

軽装になると、布地が透けるのが気になる。
一度紅にやんわりと申し入れたところ、翌日には全員がスポーツブラ状の下着を身につけてくれるようになった。
特に立派な年長組は危険だったから助かる。

こうして生活の基盤がほぼ完成した頃には、4月も中ごろになっていた。
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