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宰府にて

16.式神達との邂逅

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光が薄らいだ先にいたのは4人の人影、うち2人は背が低い。小夜と同じくらいか。残り2人は頭一つ背が高い。
背が高い2人が歩み出てきた。

「はじめまして、青龍でございます」

そう言ったのは、切れ長の瞳に艶やかな黒い髪、メガネを掛けると敏腕秘書のような雰囲気を醸し出す、20代中頃の美人さんであった。青を基調にした袍を纏い、腰には太刀を履いている。

「私は紅龍だ。よろしくな!」

こちらは体育会系だろうか。人なつこいクリッとした瞳に赤髪のショートカット。年は10代後半ぐらいか。陽に焼けた肌に白い道着が映える。えんじ色の袴は一見すると巫女服のようにも見える。右手に持っているのは薙刀か。

「兄様!私が白龍でこっちが黒龍だよ!よろしくね!」

白龍と名乗った少女が右手を振る。白龍は抜けるような白い肌に赤い瞳。真っ白な長い髪を二つ結びにしている。無邪気な中学生といった趣きだ。白を基調にした裾の短い袍を纏い、長弓を背負っている。

一方の黒龍は無言で首を縦に振るのみ。同じ中学生でも物静かな雰囲気だ。顔立ちは白龍とそっくり。肩ほどの黒髪のポニーテールは、白龍の白さを引き立たせている。黒い袍のデザインは白龍とお揃いのようだ。黒い籠手を両手に付け、小太刀を両腰に履いている。

4人は青龍を先頭に左から横一列に並ぶと、一斉に片膝を付き、頭を垂れた。

『我ら4人、御身に従い、御身をお守りいたします』

一瞬の静寂…打ち破ったのは、じいさんの吹き出し笑いだった。

「ぶっっっっ、ぶははははっ…確かに人型とは言ったが…まさか4人…しかも全員美しい女とはなあ…お前さん相当欲求不満か?」

いや確かに下心がなかったわけではないだろう。だが、たぶん女性像のほうがイメージしやすかったのだ。だいぶ何かのアニメに引きづられている感は否めず、服装などこの世界からは浮いてしまっているだろうが…

「ちなみになあ、式神は基本的にお前さんの意志には絶対服従じゃ。もちろん式神がお前さんに意見したり、お前さんの意志に反対することはある。それぞれ別個の人格じゃからな。しかし根底にあるのはお前さんへの忠誠心と愛情じゃ。自分自身を扱うように、丁寧に扱え。自分の半身だと思え。親と子、長年連れ添った嫁、共に戦った戦友、受け止め方は人それぞれじゃがな」

そうか…信頼できる仲間を4人も得たと思えば心強い。俺は4人に向き直ると、それぞれに声をかける。

「青龍、他の者と協力し、俺と小夜を守ってくれ。俺はこの地に来て日が浅い。精霊を使う力もまだまだだ。お前の知恵に期待している」

「はっ、この身に代えましても」

そう言いながら青龍は更に頭を下げる。青龍に期待しているのは、俺への指南役、というよりアドバイザーだ。見た目どおり秘書をやってほしい。

「紅龍、青龍を補佐し、俺と小夜、そしてお前達自身を守れ。見たところお前がこの中で最も武に優れている。だがむやみに殺すな、突っ込むな。仲間を助け、協力して頼む」

「わかった。任せておけ」

紅龍は体育会系のようだ。責任感は強そうだし、護衛隊長のような役回りにしよう。

「白龍、黒龍、俺には小夜という妹がいる。ちょうどお前達と同じぐらいの歳の頃だ。お前達は小夜を守れ。小夜に知恵と武術を教えてやってくれ」

「わかったよ兄様!」
「承知…」

それぞれ対照的な返事が返ってきた。
小夜と出会ってまだ幾日も経っていないが、恐らく長い付き合いになる。小夜にも俺には言えないことや、言ってくれたとしても俺にはどうすることもできないことが増えてくるだろう。生まれ育った里から追い出された境遇なら、尚更同性のコミュニティが必要だ。

「挨拶は終わったか?よし…全員立て」

じいさんが声をかけてきた。

「まあこやつは儂の弟子じゃ。こやつの身に何かあって、こやつ自身では解決できん時には、儂に連絡しろ。もちろん儂もこやつの力を借りたい時もあるじゃろう。その時は儂を助けるのじゃぞ?」

じいさんは俺の肩を叩き、続けた。

「ちなみになあ…夜伽の相手はほどほどにな。まあ式神は自分の半身じゃ、ツボも分かっておる。天にも登る快楽じゃぞ?」

このスケベじじいが!
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