63 / 239
62.稲刈り(5月16日)
しおりを挟む
翌朝は早朝から稲刈りを行う。
3人の娘達は気持ちよさそうに寝入っているから、とりあえずは一人で出来ることをやっておこう。
いつものフレック迷彩のBDUに作業帽、ヒップホルスターにUSPハンドガンを収めて外に出る。
手の保護具は軍手でいいか。
さて、稲刈りといっても子供の頃に爺さんの手伝いというか邪魔をしていた記憶と、小学生の頃の稲作体験ぐらいしか経験はない。あとは某大人になったアイドル達のテレビ番組を通じた知識ぐらいだ。
さすがに家庭菜園ごときで稲作はハードルが高い。
何はともあれ鎌は必要だ。
ガレージに置いている農作業道具の中から、草刈り鎌を2丁持ち出す。柄に対して鋸刃が斜めに付いている、収穫用の鎌だ。
独り身なのにどうして2丁あるかって?予備だよ予備。
エアガンでもそうだが、無いと困る物は予備を揃えておくのは基本だと思う。
自宅前の田んぼは東西20メートル×南北10メートルほど。その北東の角から南に向かって刈り始める。
右手で鎌を持ち、左手で稲株を手繰り寄せ、地面から拳一つ分ぐらいの高さで刈る。
刈った束は左側に置く。
これを延々と繰り返していく。
中腰で辛い作業だが、美味い米を食べるためには仕方ない。
例えば穂の部分だけを刈ったり、穂をこそぎ落とすように刈り取る方法もあるらしいが、どうしても溢れてしまう籾も出てくるし、効率も良くないようだ。
しかし機械植えした稲を手作業で刈り取るのは重労働だ。株の間隔が30cm弱開けてあるから、一本から多く分けつして一株が大きいのだ。
ざっくり計算で一面に1800株ぐらいは植えてありそうだから、一株15秒掛かるとして……まあ一日あれば刈り取りだけは終わるか……
縦に一列を刈り終わったら、稲の束を作り藁で結ぶ。
ただ刈るだけより、こちらの方がよっぽど大変だ。
畝一列にはだいたい60株ほどが植えられているから、1束30秒ほどで仕上げても一列30分はかかるだろう。
およそ1時間ほどかけて、ようやく一列分が終わった。
「痛たたた……」
腰を伸ばしていると、家の方で声がした。
「あ!お兄ちゃんあんな所にいた!」
イザベルが2階のベランダから身を乗り出して手を振っている。
「カズヤ殿!手伝います!」
すぐにアイダが小走りでやってくる。
アイダもすっかり馴染んだ砂漠仕様の迷彩柄のBDUにブーニーハット、ミリタリーブーツだ。
「ああ。ありがとう。じゃあこの鎌を使って刈り取りを任せる。刈る位置はこの辺りで頼む」
隣の切り株を指差して、アイダに鎌を渡す。
「ずいぶん根元で刈るのですね。麦のように穂の下で刈るのかと思っていました」
穂刈りというやつだ。アイダが穂刈りだと思っていたということは、この世界では麦は穂刈りするものなのかもしれない。
そういえば、街の周りで見た麦畑の麦の背は随分と高かったように思う。
アイダが手伝いに来てくれたおかげで、稲刈りのスピードは倍になった。アイダが刈り俺が縛る。逆でもいいのだろうが、ザックザック刈り取っていくアイダの姿がなんだか楽しそうに見えて、声を掛ける機会を逃してしまった。
もう一列刈り取り、休憩を兼ねて朝食を摂るために家に戻る。
台所ではアリシアとイザベルがゴソゴソと何かやっていた。
◇◇◇
「だから!ここに魔法式が書いてあるんだから、この中心にお鍋を置いて魔力を込めればいいんだって!」
「やってるよ!?でも全然発動しないんだもん!」
何をやってるんだ……
「2人ともどうした?」
「あ!お兄ちゃんおかえり!」
「おかえりなさいカズヤさん。お湯を沸かしたいんですけど、どうも上手くいかなくって……」
「やっぱりあれじゃん?お兄ちゃんみたいにめっちゃ魔力量が多くないと使えない魔道具なんじゃない?」
魔力量が少ない人でも使えるようにと開発された魔道具なのに、魔力量が多くないと使えないのでは意味がないのではなかろうか……
台所に置かれたまな板の上には、収納していたらしき何かの肉がぶつ切りにされている。米の入った袋も置いてあるところをみると、朝食の準備をしてくれていたようだ。
「それは魔道具じゃなくて、IHクッキングヒーターという機械だ。魔力を流すんじゃなくて、そこのスイッチ……それじゃない、その少し膨らんだ所を押してみろ」
アリシアが電源ボタンを押すと、ピッと音がする。
その瞬間、アリシアとイザベルがビクッと背筋を伸ばす。
電子音など聞き慣れているはずもない。ただ洗濯機は何度か回したのだから、風呂場にも聞こえていたはずなのだが……
「え…何ですか今の!」
「まあ気にするな。そういう音にいちいち驚いていたら、この家では暮らせないぞ?」
「ふぁい……」
耳があったらぺたんと倒すんだろうなあ……
「水を張った鍋を乗せて、隣の膨らんだ黄色い部分を押してみろ」
「ここだね!えいっ!」
イザベルが思い切りよく加熱ボタンを押す。
ピッと音がして、鍋の周りを赤いLEDライトがぐるりと点灯した。
「おお!すっげえ!!私にも使える魔道具だった!」
「だから魔道具じゃなくてだな…まあ火傷には注意してくれ。朝食の準備は任せていいか?」
「もちろん!お兄ちゃん達はゆっくりしてて!」
「もう!イザベルちゃんは味見役でしょ!食事の支度はお任せくださいカズヤさん!」
アリシアの料理の腕は間違いないし、イザベルの勘も悪くない。そう変なモノはできないだろう。ここは任せて一休みしよう。
◇◇◇
アリシアが用意してくれた朝食は、ウサギ肉入りの粥だった。畑から採ってきたらしいネギも散らしてある。
「ねえねえ、やっぱりこの家ごと引っ越しできないの?」
朝食の話題は新居の話になった。
「う~ん……あの森にある家でも十分だと思うけど?」
「でもさあ?お風呂ないじゃん?今さら水浴びとか嫌だよ?」
「う……確かに……カズヤ殿、何とかならないでしょうか……」
やはり女の子にとってはお風呂は死活問題のようだ。
そもそも俺は森にある“あの家”とやらを見た事もないのだから、コメントのしようもないのだが。
「あの!森の家とこの家を行き来すればいいんじゃないかな?カズヤさんの移動魔法を使えば、例えば森の家の裏口を開ければこの家の裏口に繋がってるなんて事ができるんじゃない?」
「あ!それいい!!でも、その度にお兄ちゃん呼ばなきゃいけないよ?」
「そこはカズヤさんに魔道具を作ってもらえばいいんじゃない?ダメですか?」
「ダメ??」
「ダメだろうか?」
3人の娘が食器とスプーンを持ったまま顔を寄せてくる。湯気の立つ器から粥が溢れそうになっているのが怖い。
「要は扉ごと魔道具にしてしまえばいいのか?」
「そうです!何だか古いお城にある地下室の宝物庫みたいでカッコいいじゃないですか!」
「私達だけしか開けられないようにしといてさ!合言葉を言わなきゃ発動しないの。“汝、この扉を通りたくば、誓いの言葉を述べよ!”とか何とか扉が喋ったら面白くない!?」
どうやらイザベルの厨二心に火を点けたらしい。いや、そもそもが中二ぐらいの年代なのだ。
「まあ、そんな機能が付与できるかはわからないが、やってみる価値はあるか。お前達がさっさと食事を済ませて、稲刈りの手伝いに来てくれたらな」
「わかった!お兄ちゃんの気が変わらないうちに、さっさと済ませるよ!」
「ほら!アイダちゃんも!急いで食べて!!」
「やれやれ……あまり急ぐと火傷するぞ?」
◇◇◇
猛然と稲刈りを始めたイザベルとアリシアのおかげで、その日のうちに稲刈りは終わった。
途中で鎌で刈り取る作業に飽きたイザベルが、風魔法で刈り取ろうとして稲の束を吹き飛ばしたりもしたが、アイダにしこたま怒られていたから特に何も言わないでおこう。
発想としては間違っていないのだ。刈り取りだけでなく搬送もできたりすれば、精度と周囲の状況次第では画期的な刈り入れ方法になるかもしれない。
稲刈りが終わる頃には辺りも日が暮れていたから、今夜も家に泊まることにした。
娘達が風呂に入っているうちに、米を炊きながら約束の“ほうとう”を作る。
あご出汁に冷凍のカボチャとサツマイモ、玉ねぎにウサギ肉、冷凍うどんを加えて味噌仕立てにしてみた。
本場の麺など手に入るはずもないが、強力粉が手に入ったら麺から打ってもいいかもしれない。
米は5合炊いたが、余るようならお握りにして収納しておけばいい。そうすれば、いつでも炊きたてお握りが食べられる。
◇◇◇
「これは……fidaws?」
麺を器用に一本だけフォークに巻きつけながら、アリシアが呟く。
「フィダーウシュ?なんだそれは?」
「えっと…小麦粉を練って伸ばして切ってから乾燥させた保存食です。食べる時には茹でてから炒めるか、そのままスープに入れますけど、こんなには長くないです」
「そうだよね!せいぜい親指半分ぐらいの長さだよね!」
パスタのような食べ方をするようだが、刀削麺やマカロニの類いかもしれない。
「ちょっと食べにくいけど、このスープは好き!」
「アリシアやイザベルもカズヤ殿のように啜って食べればいいのでは?」
「え…無理……さっきやってみたけど、めっちゃ咳しそうになったもん……それに熱いし……」
アイダは麺を啜ったり、ある程度熱い食べ物も平気そうだが、日本人の感覚で作った汁物などは、十分に冷まさないとイザベルは受け付けない。猫舌なのかと思っていたが、どうやら個人差というよりも生まれ育った環境によるもののようだ。
一方でイザベルがあっさりとマスターした箸使いは、アリシアやアイダは苦手に思える。
食文化の違いというのは、味覚云々の前に温度や食器でも表れるものらしい。
何はともあれ、味噌仕立ての煮込みうどんは気に入ってくれたようだから、今後のレパートリーには味噌汁など増えてくれると嬉しい。
3人の娘達は気持ちよさそうに寝入っているから、とりあえずは一人で出来ることをやっておこう。
いつものフレック迷彩のBDUに作業帽、ヒップホルスターにUSPハンドガンを収めて外に出る。
手の保護具は軍手でいいか。
さて、稲刈りといっても子供の頃に爺さんの手伝いというか邪魔をしていた記憶と、小学生の頃の稲作体験ぐらいしか経験はない。あとは某大人になったアイドル達のテレビ番組を通じた知識ぐらいだ。
さすがに家庭菜園ごときで稲作はハードルが高い。
何はともあれ鎌は必要だ。
ガレージに置いている農作業道具の中から、草刈り鎌を2丁持ち出す。柄に対して鋸刃が斜めに付いている、収穫用の鎌だ。
独り身なのにどうして2丁あるかって?予備だよ予備。
エアガンでもそうだが、無いと困る物は予備を揃えておくのは基本だと思う。
自宅前の田んぼは東西20メートル×南北10メートルほど。その北東の角から南に向かって刈り始める。
右手で鎌を持ち、左手で稲株を手繰り寄せ、地面から拳一つ分ぐらいの高さで刈る。
刈った束は左側に置く。
これを延々と繰り返していく。
中腰で辛い作業だが、美味い米を食べるためには仕方ない。
例えば穂の部分だけを刈ったり、穂をこそぎ落とすように刈り取る方法もあるらしいが、どうしても溢れてしまう籾も出てくるし、効率も良くないようだ。
しかし機械植えした稲を手作業で刈り取るのは重労働だ。株の間隔が30cm弱開けてあるから、一本から多く分けつして一株が大きいのだ。
ざっくり計算で一面に1800株ぐらいは植えてありそうだから、一株15秒掛かるとして……まあ一日あれば刈り取りだけは終わるか……
縦に一列を刈り終わったら、稲の束を作り藁で結ぶ。
ただ刈るだけより、こちらの方がよっぽど大変だ。
畝一列にはだいたい60株ほどが植えられているから、1束30秒ほどで仕上げても一列30分はかかるだろう。
およそ1時間ほどかけて、ようやく一列分が終わった。
「痛たたた……」
腰を伸ばしていると、家の方で声がした。
「あ!お兄ちゃんあんな所にいた!」
イザベルが2階のベランダから身を乗り出して手を振っている。
「カズヤ殿!手伝います!」
すぐにアイダが小走りでやってくる。
アイダもすっかり馴染んだ砂漠仕様の迷彩柄のBDUにブーニーハット、ミリタリーブーツだ。
「ああ。ありがとう。じゃあこの鎌を使って刈り取りを任せる。刈る位置はこの辺りで頼む」
隣の切り株を指差して、アイダに鎌を渡す。
「ずいぶん根元で刈るのですね。麦のように穂の下で刈るのかと思っていました」
穂刈りというやつだ。アイダが穂刈りだと思っていたということは、この世界では麦は穂刈りするものなのかもしれない。
そういえば、街の周りで見た麦畑の麦の背は随分と高かったように思う。
アイダが手伝いに来てくれたおかげで、稲刈りのスピードは倍になった。アイダが刈り俺が縛る。逆でもいいのだろうが、ザックザック刈り取っていくアイダの姿がなんだか楽しそうに見えて、声を掛ける機会を逃してしまった。
もう一列刈り取り、休憩を兼ねて朝食を摂るために家に戻る。
台所ではアリシアとイザベルがゴソゴソと何かやっていた。
◇◇◇
「だから!ここに魔法式が書いてあるんだから、この中心にお鍋を置いて魔力を込めればいいんだって!」
「やってるよ!?でも全然発動しないんだもん!」
何をやってるんだ……
「2人ともどうした?」
「あ!お兄ちゃんおかえり!」
「おかえりなさいカズヤさん。お湯を沸かしたいんですけど、どうも上手くいかなくって……」
「やっぱりあれじゃん?お兄ちゃんみたいにめっちゃ魔力量が多くないと使えない魔道具なんじゃない?」
魔力量が少ない人でも使えるようにと開発された魔道具なのに、魔力量が多くないと使えないのでは意味がないのではなかろうか……
台所に置かれたまな板の上には、収納していたらしき何かの肉がぶつ切りにされている。米の入った袋も置いてあるところをみると、朝食の準備をしてくれていたようだ。
「それは魔道具じゃなくて、IHクッキングヒーターという機械だ。魔力を流すんじゃなくて、そこのスイッチ……それじゃない、その少し膨らんだ所を押してみろ」
アリシアが電源ボタンを押すと、ピッと音がする。
その瞬間、アリシアとイザベルがビクッと背筋を伸ばす。
電子音など聞き慣れているはずもない。ただ洗濯機は何度か回したのだから、風呂場にも聞こえていたはずなのだが……
「え…何ですか今の!」
「まあ気にするな。そういう音にいちいち驚いていたら、この家では暮らせないぞ?」
「ふぁい……」
耳があったらぺたんと倒すんだろうなあ……
「水を張った鍋を乗せて、隣の膨らんだ黄色い部分を押してみろ」
「ここだね!えいっ!」
イザベルが思い切りよく加熱ボタンを押す。
ピッと音がして、鍋の周りを赤いLEDライトがぐるりと点灯した。
「おお!すっげえ!!私にも使える魔道具だった!」
「だから魔道具じゃなくてだな…まあ火傷には注意してくれ。朝食の準備は任せていいか?」
「もちろん!お兄ちゃん達はゆっくりしてて!」
「もう!イザベルちゃんは味見役でしょ!食事の支度はお任せくださいカズヤさん!」
アリシアの料理の腕は間違いないし、イザベルの勘も悪くない。そう変なモノはできないだろう。ここは任せて一休みしよう。
◇◇◇
アリシアが用意してくれた朝食は、ウサギ肉入りの粥だった。畑から採ってきたらしいネギも散らしてある。
「ねえねえ、やっぱりこの家ごと引っ越しできないの?」
朝食の話題は新居の話になった。
「う~ん……あの森にある家でも十分だと思うけど?」
「でもさあ?お風呂ないじゃん?今さら水浴びとか嫌だよ?」
「う……確かに……カズヤ殿、何とかならないでしょうか……」
やはり女の子にとってはお風呂は死活問題のようだ。
そもそも俺は森にある“あの家”とやらを見た事もないのだから、コメントのしようもないのだが。
「あの!森の家とこの家を行き来すればいいんじゃないかな?カズヤさんの移動魔法を使えば、例えば森の家の裏口を開ければこの家の裏口に繋がってるなんて事ができるんじゃない?」
「あ!それいい!!でも、その度にお兄ちゃん呼ばなきゃいけないよ?」
「そこはカズヤさんに魔道具を作ってもらえばいいんじゃない?ダメですか?」
「ダメ??」
「ダメだろうか?」
3人の娘が食器とスプーンを持ったまま顔を寄せてくる。湯気の立つ器から粥が溢れそうになっているのが怖い。
「要は扉ごと魔道具にしてしまえばいいのか?」
「そうです!何だか古いお城にある地下室の宝物庫みたいでカッコいいじゃないですか!」
「私達だけしか開けられないようにしといてさ!合言葉を言わなきゃ発動しないの。“汝、この扉を通りたくば、誓いの言葉を述べよ!”とか何とか扉が喋ったら面白くない!?」
どうやらイザベルの厨二心に火を点けたらしい。いや、そもそもが中二ぐらいの年代なのだ。
「まあ、そんな機能が付与できるかはわからないが、やってみる価値はあるか。お前達がさっさと食事を済ませて、稲刈りの手伝いに来てくれたらな」
「わかった!お兄ちゃんの気が変わらないうちに、さっさと済ませるよ!」
「ほら!アイダちゃんも!急いで食べて!!」
「やれやれ……あまり急ぐと火傷するぞ?」
◇◇◇
猛然と稲刈りを始めたイザベルとアリシアのおかげで、その日のうちに稲刈りは終わった。
途中で鎌で刈り取る作業に飽きたイザベルが、風魔法で刈り取ろうとして稲の束を吹き飛ばしたりもしたが、アイダにしこたま怒られていたから特に何も言わないでおこう。
発想としては間違っていないのだ。刈り取りだけでなく搬送もできたりすれば、精度と周囲の状況次第では画期的な刈り入れ方法になるかもしれない。
稲刈りが終わる頃には辺りも日が暮れていたから、今夜も家に泊まることにした。
娘達が風呂に入っているうちに、米を炊きながら約束の“ほうとう”を作る。
あご出汁に冷凍のカボチャとサツマイモ、玉ねぎにウサギ肉、冷凍うどんを加えて味噌仕立てにしてみた。
本場の麺など手に入るはずもないが、強力粉が手に入ったら麺から打ってもいいかもしれない。
米は5合炊いたが、余るようならお握りにして収納しておけばいい。そうすれば、いつでも炊きたてお握りが食べられる。
◇◇◇
「これは……fidaws?」
麺を器用に一本だけフォークに巻きつけながら、アリシアが呟く。
「フィダーウシュ?なんだそれは?」
「えっと…小麦粉を練って伸ばして切ってから乾燥させた保存食です。食べる時には茹でてから炒めるか、そのままスープに入れますけど、こんなには長くないです」
「そうだよね!せいぜい親指半分ぐらいの長さだよね!」
パスタのような食べ方をするようだが、刀削麺やマカロニの類いかもしれない。
「ちょっと食べにくいけど、このスープは好き!」
「アリシアやイザベルもカズヤ殿のように啜って食べればいいのでは?」
「え…無理……さっきやってみたけど、めっちゃ咳しそうになったもん……それに熱いし……」
アイダは麺を啜ったり、ある程度熱い食べ物も平気そうだが、日本人の感覚で作った汁物などは、十分に冷まさないとイザベルは受け付けない。猫舌なのかと思っていたが、どうやら個人差というよりも生まれ育った環境によるもののようだ。
一方でイザベルがあっさりとマスターした箸使いは、アリシアやアイダは苦手に思える。
食文化の違いというのは、味覚云々の前に温度や食器でも表れるものらしい。
何はともあれ、味噌仕立ての煮込みうどんは気に入ってくれたようだから、今後のレパートリーには味噌汁など増えてくれると嬉しい。
34
お気に入りに追加
1,713
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる