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59.鑑定を受ける(5月15日)
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とりあえずゴブリンから回収したり洞窟から持ち帰った魔石や硬貨、首飾りや牙を机の上に並べる。
武器や防具は嵩張るから、別の機会でもいいだろう。
道中で回収したものもあるから、自宅で数えた時よりも少し増えている。
銀貨 35枚
銅貨 130枚
何かの牙 5個
何かの角 7個
牙や角でできた首飾り 62個
黒い石 12個
赤い石 20個
青い石 25個
白い石 20個
緑の石 10個
紫の石 5個
透明な石 5個
小石 115個
洞窟で回収した杭状の魔石 1個
「やれやれ…凄まじい数ですな。これは時間が掛かりますぞ…応援を呼びましょう」
無言で鑑定を始めたカミラさんに代わって、モンロイ師が提案してくれる。
「そうね。人選はお任せします。それじゃあ待っている間に別の部屋で魔力測定を済ませてしまいましょう」
そう言って校長先生が何やら木箱を小脇に抱えて席を立った。
◇◇◇
校長先生に連れられて向かった部屋は、大きな黒板を備えた講義室のような場所だった。
黒板とその前の演台を囲むように、階段状に机が並んでいる。
「ここは講義や講演を行う部屋なのだけれど、今日は使用予定は無いから使っちゃいましょう。アリシア達には改めて説明するまでもないわね。早速始めましょう」
校長先生が木箱から取り出したのは、一見すると両手で握って使う体脂肪計のようだった。銀色に光る棒を握って使うアレだ。
違いは表示部が液晶などではなく、アナログテスターのような針と切替スイッチのようなダイヤルが付いていること。針はゲージのちょうど中心を指している。
「あの……校長先生自ら魔力測定を行われるのですか?」
アリシア達の説明では、養成所にいる学生の総数は300人弱とのことだった。その全員の魔力測定を引き受けるほど、校長という立場は暇ではないはずだ。
「普段は担当教官に任せていますよ。この子達は特別思い入れがあるので。南方へ送り出すか否か、魔力測定の結果も踏まえて最終的に判断したのは私ですから」
とすれば、アリシア達の魔力量は少なくとも遠征に耐えると判断できるぐらいにはあるのだろう。
「最初はイザベルからね。前回測定時の数値は700。間違いない?」
「はい!調子が良ければもっといい数字が出るはず!」
イザベルは測定器のダイヤルを1000に合わせ、左右の電極部分を両手で握り、姿勢を正す。
「目を閉じて大きく息を吸って、ゆっくり魔力を込めるのよ。右手から左手へ、左手から右手へ、ゆっくり循環するように……」
校長先生の言葉に合わせるように、テスターの針が左右に大きく振れる。
1000の目盛りを超えたところで、校長先生がダイヤルを10000に合わせた。
途端に針の振れ方が小さくなる。
「ぷはあ……もう限界……」
イザベルが脱力した声を上げながらその場にへたり込む。
手から滑り落ちそうになる計測器を、寸でのところでアリシアが掬い上げた。
「どれどれ……え!?……1300……ちょっと、倍近く上がってるじゃない!」
「嘘!?何で!?」
アリシアとアイダの叫びを他所に、イザベルがふらふらと俺に近寄ってくる。
「お兄ちゃん……補給!!」
俺の首筋に噛みつくイザベルの姿を、呆気にとられた顔で校長先生が見ている。
「イザベル……何してるの?」
まあ普通はそう思うよな。俺も最初は吸血鬼なのかと思った。
「あ~気にしないでください。この子にとっては儀式みたいなものですから……」
「儀式って……頑張ったご褒美?」
「いや、これで魔力が補給できるらしいのですが……」
「次は私!!」
俺のしどろもどろの返事を他所に、アリシアが測定を始めている。
結局、アリシアの魔力量は1400、アイダは1500だった。
遠征前は3人とも700前後だったらしく、大幅に上昇したことについて校長先生が頭を抱えている。
「なあアリシア、アイダ。そろそろ俺に魔力量について教えてくれないか?700とか1400といった数値は何の意味があるんだ?」
計測を終えて俺の右手と左手の人差し指に吸い付いているアリシアとアイダに尋ねる。
ちなみにイザベルは満足したらしく俺の背中にしがみついてグテッと寛いでいる。
「えっと……魔力量は自身が行使できる限界の量です。この計測器は魔力を流し込むことでその総量、つまり人という器に入っている魔力の量を計測できます。もし器に魔力が満ちていない状態なら、その人の魔力量は小さく計測されてしまいます。それで、魔力量を計測する際には気力が充実している朝が選ばれることが多いです」
「一般的に狩人になれる最低値は500から600だと言われています。私のように魔法に頼らない戦闘職は比較的低めの魔力量でもいいのですが、アリシアのような魔法師は高ければ高いほどいいと言われますが……」
「あなた達……記録の残る魔法師の最大魔力量を覚えているかしら……」
校長先生が呟きにアリシアが答える。
「確か1万でしたっけ?」
「そう。偉大なる大魔法師、この計測器の生みの親でも在らせられるガスパル コルテ師の1万という数値が過去最高の数値よ。コルテ師でさえ10代の頃の数値は1000に満たない程度で、そこから何十年も修練を重ねてようやく1万という高みに昇られたの。あなた達は一か月かそこらであっさりと1000を超えるなんて、いったい何が……まさかカズヤ君に噛みつくことで?でもそんな……」
何かに思い当たったらしく、校長先生が頭を上げてこちらを見る。
「あなた達……まさか魔力が回復したなんて言わないでしょうね?流石に計測の後は数日経たないと……」
「ん?回復しました!もう一回計ってみますか?」
イザベルがぴょこんと頭を上げて答える。
「まさか本当にカズヤ君の魔力を吸っているの?まさか旅の間中そうやって魔力を回復していたの?」
「ええ。その通りです。私達もなぜカズヤ殿から魔力を補給できるのか不思議ではあったのですが……」
「それにカズヤさんの魔力が無くなる気配もないし……」
「ちょっと待って。カズヤ君の魔力量を測定しましょう。考えているとおりなら……まさかとは思うけど念のために」
校長先生の指示するまま、計測器の電極状の部分を握る。
魔力を込めればいいのだろう?イザベル達のやり方をみていたから何となくわかる。
ダイヤルは10000のままだ。電極を握った手から手へと交互に魔力を流すイメージで魔力を込める。
ゲージの針がゆっくりと振れはじめた。振幅が徐々に大きくなる。
2000、4000、6000と針は大きく揺れていく。
左右に最大に振れたところで、一旦魔力を流すのを止める。
俺の周りに集まった校長先生やアリシア達が、ゲージを食い入るように見る。
「一旦針を中心に戻して……もう一度魔力を流してみて?」
校長先生に言われたとおり、もう一度魔力を込める。
今度は6000を超えた辺りでどっと疲労感が押し寄せてきた。初日にゴブリン達の亡骸を埋葬した時以来の感覚だ。とうとう魔力切れか。
「合わせて1万6千超え。私達に補給した分を合わせると、合計で2万を超えているってこと?」
アリシア達が顔を見合わせる。
「驚愕というより呆れるといったほうが正しいでしょうね……これほどの魔力量なら人に分け与えても平気でしょう……いえ、そもそも人に分け与えることができる事が異常なのだけれど」
異常と言われても出来てしまう事は仕方ない。
何か反論しようとした時に、講義室のドアがノックされた。
ノックとほぼ同時にドアが開かれる。
入ってきたのはモンロイ師とカミラさんだ。モンロイ師は俺とアリシアが洞窟から回収した杭状の魔石を手にしている。
「カズヤ君。この透明な魔石はどこで手に入れたのかね?てっきり水晶だと思っておったのだが、手にした瞬間にはっきりと理解した。これは魔核だね?」
「え……魔核って、あの洞窟の?でも私達が掘り出した時には真っ黒だったよね!?」
モンロイ師の言葉にアリシアが大きな声を上げる。
「あ、そういえば言うのを忘れていた。小鬼から回収した魔石なんかと一緒に洗っていたら、何故か透明になってしまったんだった」
武器や防具は嵩張るから、別の機会でもいいだろう。
道中で回収したものもあるから、自宅で数えた時よりも少し増えている。
銀貨 35枚
銅貨 130枚
何かの牙 5個
何かの角 7個
牙や角でできた首飾り 62個
黒い石 12個
赤い石 20個
青い石 25個
白い石 20個
緑の石 10個
紫の石 5個
透明な石 5個
小石 115個
洞窟で回収した杭状の魔石 1個
「やれやれ…凄まじい数ですな。これは時間が掛かりますぞ…応援を呼びましょう」
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「そうね。人選はお任せします。それじゃあ待っている間に別の部屋で魔力測定を済ませてしまいましょう」
そう言って校長先生が何やら木箱を小脇に抱えて席を立った。
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黒板とその前の演台を囲むように、階段状に机が並んでいる。
「ここは講義や講演を行う部屋なのだけれど、今日は使用予定は無いから使っちゃいましょう。アリシア達には改めて説明するまでもないわね。早速始めましょう」
校長先生が木箱から取り出したのは、一見すると両手で握って使う体脂肪計のようだった。銀色に光る棒を握って使うアレだ。
違いは表示部が液晶などではなく、アナログテスターのような針と切替スイッチのようなダイヤルが付いていること。針はゲージのちょうど中心を指している。
「あの……校長先生自ら魔力測定を行われるのですか?」
アリシア達の説明では、養成所にいる学生の総数は300人弱とのことだった。その全員の魔力測定を引き受けるほど、校長という立場は暇ではないはずだ。
「普段は担当教官に任せていますよ。この子達は特別思い入れがあるので。南方へ送り出すか否か、魔力測定の結果も踏まえて最終的に判断したのは私ですから」
とすれば、アリシア達の魔力量は少なくとも遠征に耐えると判断できるぐらいにはあるのだろう。
「最初はイザベルからね。前回測定時の数値は700。間違いない?」
「はい!調子が良ければもっといい数字が出るはず!」
イザベルは測定器のダイヤルを1000に合わせ、左右の電極部分を両手で握り、姿勢を正す。
「目を閉じて大きく息を吸って、ゆっくり魔力を込めるのよ。右手から左手へ、左手から右手へ、ゆっくり循環するように……」
校長先生の言葉に合わせるように、テスターの針が左右に大きく振れる。
1000の目盛りを超えたところで、校長先生がダイヤルを10000に合わせた。
途端に針の振れ方が小さくなる。
「ぷはあ……もう限界……」
イザベルが脱力した声を上げながらその場にへたり込む。
手から滑り落ちそうになる計測器を、寸でのところでアリシアが掬い上げた。
「どれどれ……え!?……1300……ちょっと、倍近く上がってるじゃない!」
「嘘!?何で!?」
アリシアとアイダの叫びを他所に、イザベルがふらふらと俺に近寄ってくる。
「お兄ちゃん……補給!!」
俺の首筋に噛みつくイザベルの姿を、呆気にとられた顔で校長先生が見ている。
「イザベル……何してるの?」
まあ普通はそう思うよな。俺も最初は吸血鬼なのかと思った。
「あ~気にしないでください。この子にとっては儀式みたいなものですから……」
「儀式って……頑張ったご褒美?」
「いや、これで魔力が補給できるらしいのですが……」
「次は私!!」
俺のしどろもどろの返事を他所に、アリシアが測定を始めている。
結局、アリシアの魔力量は1400、アイダは1500だった。
遠征前は3人とも700前後だったらしく、大幅に上昇したことについて校長先生が頭を抱えている。
「なあアリシア、アイダ。そろそろ俺に魔力量について教えてくれないか?700とか1400といった数値は何の意味があるんだ?」
計測を終えて俺の右手と左手の人差し指に吸い付いているアリシアとアイダに尋ねる。
ちなみにイザベルは満足したらしく俺の背中にしがみついてグテッと寛いでいる。
「えっと……魔力量は自身が行使できる限界の量です。この計測器は魔力を流し込むことでその総量、つまり人という器に入っている魔力の量を計測できます。もし器に魔力が満ちていない状態なら、その人の魔力量は小さく計測されてしまいます。それで、魔力量を計測する際には気力が充実している朝が選ばれることが多いです」
「一般的に狩人になれる最低値は500から600だと言われています。私のように魔法に頼らない戦闘職は比較的低めの魔力量でもいいのですが、アリシアのような魔法師は高ければ高いほどいいと言われますが……」
「あなた達……記録の残る魔法師の最大魔力量を覚えているかしら……」
校長先生が呟きにアリシアが答える。
「確か1万でしたっけ?」
「そう。偉大なる大魔法師、この計測器の生みの親でも在らせられるガスパル コルテ師の1万という数値が過去最高の数値よ。コルテ師でさえ10代の頃の数値は1000に満たない程度で、そこから何十年も修練を重ねてようやく1万という高みに昇られたの。あなた達は一か月かそこらであっさりと1000を超えるなんて、いったい何が……まさかカズヤ君に噛みつくことで?でもそんな……」
何かに思い当たったらしく、校長先生が頭を上げてこちらを見る。
「あなた達……まさか魔力が回復したなんて言わないでしょうね?流石に計測の後は数日経たないと……」
「ん?回復しました!もう一回計ってみますか?」
イザベルがぴょこんと頭を上げて答える。
「まさか本当にカズヤ君の魔力を吸っているの?まさか旅の間中そうやって魔力を回復していたの?」
「ええ。その通りです。私達もなぜカズヤ殿から魔力を補給できるのか不思議ではあったのですが……」
「それにカズヤさんの魔力が無くなる気配もないし……」
「ちょっと待って。カズヤ君の魔力量を測定しましょう。考えているとおりなら……まさかとは思うけど念のために」
校長先生の指示するまま、計測器の電極状の部分を握る。
魔力を込めればいいのだろう?イザベル達のやり方をみていたから何となくわかる。
ダイヤルは10000のままだ。電極を握った手から手へと交互に魔力を流すイメージで魔力を込める。
ゲージの針がゆっくりと振れはじめた。振幅が徐々に大きくなる。
2000、4000、6000と針は大きく揺れていく。
左右に最大に振れたところで、一旦魔力を流すのを止める。
俺の周りに集まった校長先生やアリシア達が、ゲージを食い入るように見る。
「一旦針を中心に戻して……もう一度魔力を流してみて?」
校長先生に言われたとおり、もう一度魔力を込める。
今度は6000を超えた辺りでどっと疲労感が押し寄せてきた。初日にゴブリン達の亡骸を埋葬した時以来の感覚だ。とうとう魔力切れか。
「合わせて1万6千超え。私達に補給した分を合わせると、合計で2万を超えているってこと?」
アリシア達が顔を見合わせる。
「驚愕というより呆れるといったほうが正しいでしょうね……これほどの魔力量なら人に分け与えても平気でしょう……いえ、そもそも人に分け与えることができる事が異常なのだけれど」
異常と言われても出来てしまう事は仕方ない。
何か反論しようとした時に、講義室のドアがノックされた。
ノックとほぼ同時にドアが開かれる。
入ってきたのはモンロイ師とカミラさんだ。モンロイ師は俺とアリシアが洞窟から回収した杭状の魔石を手にしている。
「カズヤ君。この透明な魔石はどこで手に入れたのかね?てっきり水晶だと思っておったのだが、手にした瞬間にはっきりと理解した。これは魔核だね?」
「え……魔核って、あの洞窟の?でも私達が掘り出した時には真っ黒だったよね!?」
モンロイ師の言葉にアリシアが大きな声を上げる。
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