上 下
171 / 554

現実逃避

しおりを挟む

            そしてエリはダンジョンの一番奥までやってきた。

「ふぅ~。アイン様、ただいま戻ってきました。」

「お疲れ。どうだった勇者は?」

「さすがに分身体では勝てませんでしたね。あの分身も私が操っていたので勝ちたかったのですが。」

「でも、今回の戦闘のおかげで、エリの分身体の力は分かったね。」

「はい。あの体ですと、あまり早く動けませんね。勇者たちにもそこを突かれましたし。」

「まぁ、何はともあれ、今回はやっと勇者の討伐ができたんだ。これで良いじゃないか。」

「それもそうですね。しかし、この王国の国王は勇者が帰ってこないことで、このダンジョンに対してなにもやってきませんかね?」

「なにもやってこないと思うよ。だって、勇者全員の力でダンジョンに入っても、誰も出て来れなかったダンジョンなんかできるだけかかわりたくないと思うから。」

「しかし、1階層あたりには何人かきませんかね?」

「もしも、来たとしても大丈夫だと思うよ。だって今回は勇者のせいで弱く見えてしまったかもしれないけど、1階層のモンスターも十分強いからね。」

「まぁ、勇者はあまり1階層では戦闘をしていませんでしたけど…」

「そうだね。それでも他の3つのダンジョンはともかく、このダンジョンにはあまりちょっかいはかけてこないと思うよ。」

「それでは今後の予定はどうするのですか?」

「う~ん。とりあえずは王都に勇者が死んだって言う、噂を流して、監視用使い魔で王城の中を見てみようか。」

「それでは、私は王都に噂を流して来れば良いですか?」

「そうだね。今回はいっぱい動いてもらっているけど、これも流しておいて。」

「いえ、アイン様の従者として、主人から与えられた仕事はやって見せます。」

「ありがとう。でも今回のこの噂はエリが大きな声で言う訳じゃなく、本当に数人に話してみて、市民から市民に流れるような噂にしてほしいから、あまりやる気を出さなくても良いよ。」

「分かりました。では、できるだけ知り合いの多そうな人にこの情報を流してみますね。」

「よろしく。」

そしてエリは、街に出て、数人の人にこの情報を聞かせた。

そして勇者の死という大事件はすぐに王都中に広まった。

~王城~

「なかなか遅いな、勇者は。」

「確かにそうですね。」

「本当に勇者はダンジョンに行ったんだろうな。」

「はい。彼らに持たせた武器の中には位置情報をこちらに伝える魔法をかけてあります。そしてその情報が報告にあったダンジョンについた瞬間に消えているところを見ると、勇者たちはちゃんとダンジョンに入っているようです。」

「そうか…それでは勇者の帰りを待つか。」

そんな時、玉座の間にノックの音が響いた。

「入れ。」

「失礼します。」

「何用だ?」

「この国の騎士団長が王様に話があるそうです。」

「そうか、それでは中に入れろ。」

「ハッ!」

そして騎士団長が中に入ってきた。

「それで騎士団長よ。何のようだ?」

「はい。今回は街で騒がれている噂について話をしに来ました。」

「何だと?我に噂話をするためだけに来たのか!?」

「しかし、今回の噂が本当だとすると、まずい事態が発生するのです。」

「何だ?言ってみろ。」

「勇者の死が、街中で騒がれています。」

「何だと?勇者が死んだだと?ありえん。彼らは人類最強の集団なんだぞ。」

「はい。私も信じたくはありませんが、もし、本当のことだとすると、勇者に頼りきっていたいままでの常識が通用しません。」

「いや、大丈夫だ。彼らのことだからそのうち平気な顔をして出てくるだろう。」

「そうでしょうか?」

「ああ、だから今の法は変えないぞ。」

「分かりました。それでは我々も今までどおりに活動しますね。」

こうして王様の一言によって、勇者は生きていることになった。
        
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...