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第3章
はな六のふぜんなクリスマス ①
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早くに目が覚めてしまい、何もやることがなくて退屈なので、はな六はシンクに置かれていた湯呑みと急須を洗うことにした。泡立てたスポンジで急須を擦っていると、ふと注ぎ口の内側にもっそりした黒い汚れがぐるりと付着していることに気づいた。茶の澱か、それともカビか。はな六は少しの間考え、ポンと手を打ち茶の間に向かった。棚の引き出しを漁り、
「あったー!」
綿棒を探し当てた。容器から一本取って台所に戻ると、急須の注ぎ口にそれを突っ込んで、よく擦る。みるみるうちに注ぎ口の内側はきれいになっていく。細い筒の中、小刻みに動く綿棒を見ていると、後孔がむずむずとしてきた。
「んふー」
こんな風に丹念にお腹の中を擦られたい。などと考えていたら不意に尻をむんずと掴まれて、はな六は「ぎゃん!」と飛び上がった。
「なぁーにエッチな表情してんだよ」
「サイトウ!」
「ケケケ、おはよ」
いつもながらサイトウは不意討ちが上手い。はな六の鋭敏な聴覚や皮膚感覚をもってしても、背後から忍び寄るサイトウの気配を察知するのは難しい。きっと足音を消して歩くことなどが上手というよりは、相手が油断している時を狙い澄ますのが上手いのだろう。はな六は、ぷるっと身震いをした。
大きくて硬い掌がスエット地の上から腰に押し当てられた。布地を通しても伝わって来るサイトウの高めの体温に反応して、お飾りがスエットパンツの前をツンと持ち上げた。腰を撫で回すサイトウの手はやがてお飾りの興奮に気付き、布越しにお飾りを包み込んだ。
サイトウはお飾りを撫でたり揉んだりしながらはな六の手を右手で抑え、泡のついたままの急須をシンクの底に下ろさせた。
「こんなん、おめぇはしなくていいって言ったんべぇに。あーあー、お手々ちゃんが真っ赤になって可哀想だ」
サイトウは蛇口を二つともひねり、惜し気もなく温水を流した。片手でさっさと茶器を洗い、そしてはな六の手をぬるま湯に当てさせる。寒さでカチカチになって痛いくらいだった指先が温まり、解れていく。サイトウは手拭き用のフェイスタオルを取り、はな六の手を包む。水気の拭き取られた指先を口もとに持っていって口付け、次に両の耳を丁寧に食み、最後に唇を丹念にねぶる。
お飾りの先端がじんわりとする。下着が濡れ、スエット地にまで粘液の染みが出来てしまう。
「あ……」
堪らず吐息を漏らせば、サイトウは興奮して獲物に喰らいつく猛獣のように息を荒げ、はな六の唇にむしゃぶりつきながら身体のあちこちを乱暴にまさぐり始めた。背中に覆い被さり、下着にまで手を入れてくる。下着の中ではお飾りが既に濡れそぼってサイトウを待ち構えている。溢れ出る粘液をサイトウの指は掬い取り、お飾り全体に塗りたくってヌチヌチと扱き上げる。腰から下に痺れが広がり、膝ががくがくと震え出すので、はな六はシンクの縁を両手で握った。
「ここでヤッちゃう?」
はな六の応えを待たず、すぐさまズボンと下着がずらされて、サイトウの一物がはな六の中に入ってくる。きゅうぅっと中が窄まると、サイトウの一物は一層大きく張って、擦られないうちからはな六は気を遣りそうになる。粘液をこぷこぷと溢れさせたお飾りに、サイトウはフェイスタオルを押し当て、はな六のうなじを甘噛みしながら器用に腰を使い始めた。
寝室のドアを後ろ手に閉めてそのままドアに寄りかかる。台所での立ちながらのセックスは気持ち良かったが、お飾りはまだ物足りないと湿った下着の中で疼いている。
はな六は今はなき“自分の城”から持ち帰られた荷物を漁り、以前客から貰った玩具を取り出した。それと携帯端末を持って布団に戻る。最近、自分一人でホームセンターに行って、自分で選んで買ったばかりの自分の布団。温かそうなピンク色で揃えてみたが、綿がスカスカでちっとも温かくない。その隣にはサイトウの古くて分厚くて重い布団。二つの布団はサイトウによって綺麗に整えられていた。
はな六は自分の布団に潜り込んで寝たふりをした。朝食を終えたサイトウが階下に降りていくのを、枕に耳を押し当てて待つ。やがてサイトウが作業を始める物音がしてくる。そうすればサイトウは昼頃まで上がって来ないのだ。
頃合いを見計らって、はな六はサイトウの布団に移動した。敷布団のシーツの上には、はな六が粘液で布団を汚すのを見越したように、バスタオルが敷いてある。はな六は布団の中でスエットパンツと下着をずらし、後孔に玩具を挿入してからまた履いた。玩具の遠隔スイッチを握り、サイトウの枕の匂いをくんくんと嗅ぐ。
くぐもったモーター音が階下まで聴こえてしまうのではないかと最初はハラハラしていたが、サイトウが何も言って来ないのをいいことに、この頃はこうしてすっかり遠慮の気持ちを失って、日が高くなるまで寝ているふりをしながら玩具で遊んでいる。
スイッチで玩具を操作しながら携帯端末で良さそうな動画を物色する。インターネットには沢山のセックス動画が溢れていると知ったのは、つい最近のことだ。クマともタヌキともつかないぽんぽこりんだった時代は脳から直接ネットに接続出来たのだが、どうやらセックスに関する情報の一切がフィルタリングされていたらしい。
すぐ階下にサイトウがいるというのに、こうして動画を観ながら自分で自分を気持ちよくしていることには、妙な後ろめたさがあるが、そうしなければお飾りと後孔が疼いて居ても立ってもいられないので仕方がない。やっぱりこのボディはひたすらセックスをしていないと生きていけない質らしい。
数回射精すると、人間とセックスした後には感じ得ない、重い疲労感と虚無感が襲ってくる。はな六は布団から上半身だけ這い出して、部屋の隅に転がっていた充電器を取り、臍に挿した。
(はぁ、一体おれは何をしたくてこんな……)
と、レッカ・レッカに魂を移植して転生したことを後悔してしまう。こんなはずではなかった。こんな風に引き込もってばかりいるのではなく、もっと色々なことに挑戦したかったはず。だが囲碁以外に自分が何をしたいかなんて、実はひとつも考えたことがなく、ただ勢い任せに棋院を飛び出して来てしまったというのが本当のところだった。
もう半月以上もこうしてダラダラと過ごしているが、サイトウは特に何も言ってこない。はな六をまだ怪我人扱いしているのか、何なのか。気遣われているというよりは放任されているようだが、はな六は却って居心地悪く感じてしまう。
ボディーショップ斎藤に居候を始めたばかりの頃のように、いつかだらしないと怒られる日が来るのかもしれないとはな六は思い、今日を限りにダラダラ生活はやめようと、自分の中で線引きをしていた。先の暴行事件で受けた怪我は数回にわたる手術ですっかり治ったし、今夜から“お客様に夜の楽しみを提供するお仕事”に復帰することになっている。
仕事はクビになったはずが、サイトウがマサユキに電話一本かけただけでクビは取り消しになった。まるでサイトウに泣きついたかのようになってしまったが、他に働き口が見つからないので、はな六は恥を忍んで仕事復帰をすることを決めた。
夕方、マサユキの事務所に行くと、すでに仕事仲間達は何人か出勤してきていた。待機所の中は相変わらず常春の温かさで、部屋の中央に設えられた炬燵など不要ではないかと思うほどだ。だが、足を炬燵に入れてみれば、寒い中を歩いてきたことで思ったよりも身体が冷えていたようで、じんわりとした心地よさが足から身体全体に広がっていった。
仲間達はめいめい好きなことをして過ごしている。はな六にはこういう時にするような“好きなこと”がない。とりあえず携帯端末をテーブルの上に出し、ニュースでも見ているふりをして仲間達の様子をうかがう。ムイはごろ寝でゲームをしているし、ユユは自分のおっぱいを自分で揉んでいた。
(自分でおっぱいを揉むって)
だがユユはとても幸せそうだ。
「おい、ユユ。お前何やってんだよ」
ムイが不機嫌そうに言ったが、
「おっぱい揉んでるー」
ユユは見たままのことを述べた。
「ふん、“小人閑居して不善を成す”って奴だな」
(“ふぜん”かぁ……)
はな六は炬燵布団の下で、服の上からお飾りをぎゅっと握った。
そういえばサイトウも“淋しいとふぜんをなすタイプ”だとマサユキが言っていた。“ふぜん”をなすと虚しい気分になるのは分かるが、サイトウが虚しい気分にならない為に、はな六が自分を犠牲にしてサイトウと付き合わなければいけないというのには、納得できない。
はな六は溜息を吐いた。ユユはまだご機嫌におっぱいを揉んでいる。世の中には成しても虚無感に陥らない“ふぜん”もあるという訳か。サイトウもそういうタイプの奴だったらいいのだが。
「あったー!」
綿棒を探し当てた。容器から一本取って台所に戻ると、急須の注ぎ口にそれを突っ込んで、よく擦る。みるみるうちに注ぎ口の内側はきれいになっていく。細い筒の中、小刻みに動く綿棒を見ていると、後孔がむずむずとしてきた。
「んふー」
こんな風に丹念にお腹の中を擦られたい。などと考えていたら不意に尻をむんずと掴まれて、はな六は「ぎゃん!」と飛び上がった。
「なぁーにエッチな表情してんだよ」
「サイトウ!」
「ケケケ、おはよ」
いつもながらサイトウは不意討ちが上手い。はな六の鋭敏な聴覚や皮膚感覚をもってしても、背後から忍び寄るサイトウの気配を察知するのは難しい。きっと足音を消して歩くことなどが上手というよりは、相手が油断している時を狙い澄ますのが上手いのだろう。はな六は、ぷるっと身震いをした。
大きくて硬い掌がスエット地の上から腰に押し当てられた。布地を通しても伝わって来るサイトウの高めの体温に反応して、お飾りがスエットパンツの前をツンと持ち上げた。腰を撫で回すサイトウの手はやがてお飾りの興奮に気付き、布越しにお飾りを包み込んだ。
サイトウはお飾りを撫でたり揉んだりしながらはな六の手を右手で抑え、泡のついたままの急須をシンクの底に下ろさせた。
「こんなん、おめぇはしなくていいって言ったんべぇに。あーあー、お手々ちゃんが真っ赤になって可哀想だ」
サイトウは蛇口を二つともひねり、惜し気もなく温水を流した。片手でさっさと茶器を洗い、そしてはな六の手をぬるま湯に当てさせる。寒さでカチカチになって痛いくらいだった指先が温まり、解れていく。サイトウは手拭き用のフェイスタオルを取り、はな六の手を包む。水気の拭き取られた指先を口もとに持っていって口付け、次に両の耳を丁寧に食み、最後に唇を丹念にねぶる。
お飾りの先端がじんわりとする。下着が濡れ、スエット地にまで粘液の染みが出来てしまう。
「あ……」
堪らず吐息を漏らせば、サイトウは興奮して獲物に喰らいつく猛獣のように息を荒げ、はな六の唇にむしゃぶりつきながら身体のあちこちを乱暴にまさぐり始めた。背中に覆い被さり、下着にまで手を入れてくる。下着の中ではお飾りが既に濡れそぼってサイトウを待ち構えている。溢れ出る粘液をサイトウの指は掬い取り、お飾り全体に塗りたくってヌチヌチと扱き上げる。腰から下に痺れが広がり、膝ががくがくと震え出すので、はな六はシンクの縁を両手で握った。
「ここでヤッちゃう?」
はな六の応えを待たず、すぐさまズボンと下着がずらされて、サイトウの一物がはな六の中に入ってくる。きゅうぅっと中が窄まると、サイトウの一物は一層大きく張って、擦られないうちからはな六は気を遣りそうになる。粘液をこぷこぷと溢れさせたお飾りに、サイトウはフェイスタオルを押し当て、はな六のうなじを甘噛みしながら器用に腰を使い始めた。
寝室のドアを後ろ手に閉めてそのままドアに寄りかかる。台所での立ちながらのセックスは気持ち良かったが、お飾りはまだ物足りないと湿った下着の中で疼いている。
はな六は今はなき“自分の城”から持ち帰られた荷物を漁り、以前客から貰った玩具を取り出した。それと携帯端末を持って布団に戻る。最近、自分一人でホームセンターに行って、自分で選んで買ったばかりの自分の布団。温かそうなピンク色で揃えてみたが、綿がスカスカでちっとも温かくない。その隣にはサイトウの古くて分厚くて重い布団。二つの布団はサイトウによって綺麗に整えられていた。
はな六は自分の布団に潜り込んで寝たふりをした。朝食を終えたサイトウが階下に降りていくのを、枕に耳を押し当てて待つ。やがてサイトウが作業を始める物音がしてくる。そうすればサイトウは昼頃まで上がって来ないのだ。
頃合いを見計らって、はな六はサイトウの布団に移動した。敷布団のシーツの上には、はな六が粘液で布団を汚すのを見越したように、バスタオルが敷いてある。はな六は布団の中でスエットパンツと下着をずらし、後孔に玩具を挿入してからまた履いた。玩具の遠隔スイッチを握り、サイトウの枕の匂いをくんくんと嗅ぐ。
くぐもったモーター音が階下まで聴こえてしまうのではないかと最初はハラハラしていたが、サイトウが何も言って来ないのをいいことに、この頃はこうしてすっかり遠慮の気持ちを失って、日が高くなるまで寝ているふりをしながら玩具で遊んでいる。
スイッチで玩具を操作しながら携帯端末で良さそうな動画を物色する。インターネットには沢山のセックス動画が溢れていると知ったのは、つい最近のことだ。クマともタヌキともつかないぽんぽこりんだった時代は脳から直接ネットに接続出来たのだが、どうやらセックスに関する情報の一切がフィルタリングされていたらしい。
すぐ階下にサイトウがいるというのに、こうして動画を観ながら自分で自分を気持ちよくしていることには、妙な後ろめたさがあるが、そうしなければお飾りと後孔が疼いて居ても立ってもいられないので仕方がない。やっぱりこのボディはひたすらセックスをしていないと生きていけない質らしい。
数回射精すると、人間とセックスした後には感じ得ない、重い疲労感と虚無感が襲ってくる。はな六は布団から上半身だけ這い出して、部屋の隅に転がっていた充電器を取り、臍に挿した。
(はぁ、一体おれは何をしたくてこんな……)
と、レッカ・レッカに魂を移植して転生したことを後悔してしまう。こんなはずではなかった。こんな風に引き込もってばかりいるのではなく、もっと色々なことに挑戦したかったはず。だが囲碁以外に自分が何をしたいかなんて、実はひとつも考えたことがなく、ただ勢い任せに棋院を飛び出して来てしまったというのが本当のところだった。
もう半月以上もこうしてダラダラと過ごしているが、サイトウは特に何も言ってこない。はな六をまだ怪我人扱いしているのか、何なのか。気遣われているというよりは放任されているようだが、はな六は却って居心地悪く感じてしまう。
ボディーショップ斎藤に居候を始めたばかりの頃のように、いつかだらしないと怒られる日が来るのかもしれないとはな六は思い、今日を限りにダラダラ生活はやめようと、自分の中で線引きをしていた。先の暴行事件で受けた怪我は数回にわたる手術ですっかり治ったし、今夜から“お客様に夜の楽しみを提供するお仕事”に復帰することになっている。
仕事はクビになったはずが、サイトウがマサユキに電話一本かけただけでクビは取り消しになった。まるでサイトウに泣きついたかのようになってしまったが、他に働き口が見つからないので、はな六は恥を忍んで仕事復帰をすることを決めた。
夕方、マサユキの事務所に行くと、すでに仕事仲間達は何人か出勤してきていた。待機所の中は相変わらず常春の温かさで、部屋の中央に設えられた炬燵など不要ではないかと思うほどだ。だが、足を炬燵に入れてみれば、寒い中を歩いてきたことで思ったよりも身体が冷えていたようで、じんわりとした心地よさが足から身体全体に広がっていった。
仲間達はめいめい好きなことをして過ごしている。はな六にはこういう時にするような“好きなこと”がない。とりあえず携帯端末をテーブルの上に出し、ニュースでも見ているふりをして仲間達の様子をうかがう。ムイはごろ寝でゲームをしているし、ユユは自分のおっぱいを自分で揉んでいた。
(自分でおっぱいを揉むって)
だがユユはとても幸せそうだ。
「おい、ユユ。お前何やってんだよ」
ムイが不機嫌そうに言ったが、
「おっぱい揉んでるー」
ユユは見たままのことを述べた。
「ふん、“小人閑居して不善を成す”って奴だな」
(“ふぜん”かぁ……)
はな六は炬燵布団の下で、服の上からお飾りをぎゅっと握った。
そういえばサイトウも“淋しいとふぜんをなすタイプ”だとマサユキが言っていた。“ふぜん”をなすと虚しい気分になるのは分かるが、サイトウが虚しい気分にならない為に、はな六が自分を犠牲にしてサイトウと付き合わなければいけないというのには、納得できない。
はな六は溜息を吐いた。ユユはまだご機嫌におっぱいを揉んでいる。世の中には成しても虚無感に陥らない“ふぜん”もあるという訳か。サイトウもそういうタイプの奴だったらいいのだが。
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