灰色のエッセイ

板倉恭司

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近所にあったコンビニの話

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 これは、私がまだ実家にいた時代の話です。



 私の地元は下町でして、様々な人種が住んでいました。いわゆるホワイトカラーの人間はほとんどおらず、建設現場の作業員や工員といった職業の人間が圧倒的に多かったです。当然ながら、お洒落な店など皆無に等しく、公園では髪を染めた高校生がたむろしタバコを吸っているような街でした。
 そんな街でも、一応はコンビニがあります。それも、若干マイナーなコンビニがあったのですよね(あえて店名は出しません)。
 オーナーもしくは店長の趣味なのでしょうか、普通ではあんまり見かけないような雑誌が堂々と置かれていたり、ちょっとマイナーなジュースが売られていたりしました。また、家族経営なのでしょうか……たまに、おばあちゃんがレジを打っていることがあったのです。
 このおばあちゃん、八十歳くらいでしょうか。レジを打つのも、商品の袋詰めも遅かったです。見ていて、危なっかしい手つきで袋詰めしている姿はなかなかスリリングでしたね。
 にもかかわらず、私はこのおばあちゃんが好きでした。のんびりとレジを打つ時、ゆっくりと袋詰めをしている時、私はゆったりとした時間に身を任せておりました。なぜか、イライラせずボケ~ッと待っていられたのです。
 このおばあちゃん、たまーに話しかけてくることもありまして、私が三月に半袖シャツで来店した時など、ゆったりと袋詰めをしながら「元気ですねえ」と言ったので「はい。お陰様で元気です」などと、訳わからん返しをしていました。

 そんなコンビニですが、当然ながら今はありません。こういう親族経営で、おばあちゃんにレジ打たせてるコンビニは、もうないのでしょうね。昔は良かったなどと言うつもりはありませんが、ふと懐かしくなることがあります。




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