灰色のエッセイ

板倉恭司

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十円ちょうだいの話

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 皆さんは、道を歩いていて見ず知らずの人から「金を貸してくれ」と言われたことがありますか? 私はあります。以前にも、パチンコ屋で金を貸してくれと言われた話を書きましたが、私の生まれた地域には見知らぬ通行人に平気で「金貸してくれ」という人がいたんですよね。


 
 私の町には、何の面識もないのに「十円ちょうだい」と言ってくるオッサンがいました。
 小学生の頃、下校途中にいきなり近づいてきて「十円ちょうだい」などと言って来るのです。まあ厳密にいうなら、これは「金貸してくれ」とは違うのですよね。ちょうだい、と言っているわけですから……一歩間違うと恐喝もしくは強盗にもなりかねません。
 ただ、このオッサンは放っておくとすぐに退散してしまいました。したがって、害はなかったです。確か私が中学生になるくらいまで、町のあちこちをうろうろしていた記憶があります。誰かが十円をあげているのも、何度か見た記憶があります。ただ、オッサンがその十円を何に使っているのかはわからなかったですね。

 ちなみに、最近知ったのですが……昭和の時代には、この「十円ちょうだい」と通行人に言ってくる人があちこちの町にいたらしいのです。町によっては、オジサンでなくオバサンだったところもあったとか。中には、都市伝説の妖怪のごとき扱いを受けているパターンもあるようです。




 
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