灰色のエッセイ

板倉恭司

文字の大きさ
上 下
65 / 151

幼い頃に体験した怖い話

しおりを挟む
 これは、私が幼い頃に体験した話です。



 その日、私は母と一緒に近所の家にお邪魔しておりました。何の用事かは覚えていませんが、母とその家の人とは友人でして、特に用がなくとも会っていた記憶があります。大人たちは何やら話が盛り上がっているようでしたが、幼い私は退屈でした。そんな状態で、時間が経過していったのです。
 やがて、午後九時を過ぎました。母は私に、ひとりで先に帰るように言いました。私はウンと答え、そのお宅を出ました。
 外に出れば、辺りは既に暗くなっております。私は、ひとりでとことこ歩き始めました。友人宅から私の自宅まではさほど遠くありません。五分から十分程度で着く距離でして、さほど不安はありませんでした。
 ところが、その日は予定外のことが起きました。

 歩いていくうち、細い路地裏に通じる裏道の交差する十字路を通りました。ちなみに私の住んでいた場所は東京の下町でして、木造の家がゴチャゴチャと建てられており、細い道や行き止まりの袋小路なども多かったのです。
 そこで、私は何気なく裏道の方を見ました。すると、そこには数人の男女が座り込んでいたのです。ぐったりしたような感じでした。今にして思えば、おそらくは十代後半の少年少女だったのでしょう。全員、Tシャツを着ていたような記憶も残っています。
 もっとも、十代後半とはいえ、幼い私から見れば大人の人たちにしか見えません。なんだか見てはいけない雰囲気を感じ、私はそっと通り過ぎようとしました。
 その時です。いきなり、ひとりの男が立ち上がりました。何やら奇怪な笑い声をあげながら、私に近づいて来たのです。
 私は怖くなり、走って逃げようとしました。その時、後ろから声が聞こえて来たのです。

「ヒャハハハハ!」

 振り返ると、男は奇声を発しつつ、ゾンビのように両手をあげながら、私を追いかけて来ていました。
 当然ながら、私は必死で逃げました。どうにか家に逃げ帰り、ドアを閉め布団を被ったことははっきり覚えています。



 今にして思えば、あの少年たちは酒を飲み酔っぱらっていたか、あるいはヤバい薬でもキメて酩酊状態だったのでしょう。そんな時に幼い子供が通りかかったため、ちょっとからかってやるか……みたいなノリだったのではないかと。
 ただ、当時の私にとっては映画などで観る幽霊やモンスターよりも、その少年の方が怖かったです。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

好きなモノのハナシ

根上真気
エッセイ・ノンフィクション
映画、アニメ、漫画、小説、ゲーム、その他諸々 著者自身が好きなモノのハナシをしていく予定です。 時には思い出バナシ的なものもしようかとも考えております。 途中から読んでいただいても全く問題ございませんので、ちょっとした一日の箸休めにご覧いただければ幸いです。

水族園・植物園・昆虫園・動物園・博物園・文学館・歴史館・産業科学館・天文科学館・美術館・音楽館・食文化館・図書館 etc.

淀川 乱歩
エッセイ・ノンフィクション
https://www.irasutoya.com いらすとやは季節のイベント・動物・子供などのかわいいイラストが沢山見つかるフリー素材サイトです。 ガラスの地球を救え―二十一世紀の君たちへ (知恵の森文庫) 文庫 – 1996/9/1 手塚 治虫 (著) 文庫 ¥638 Amazon

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

北欧フィンランド オーロラの下で

Peony
エッセイ・ノンフィクション
実体験を元に、北欧フィンランドの日常を綴ります。

1976年生まれ、氷河期世代の愚痴

相田 彩太
エッセイ・ノンフィクション
氷河期世代って何? 氷河期世代だけど、過去を振り返ってみたい! どうしてこうなった!? 1976年生まれの作者が人生を振り返りながら、そんなあなたの疑問に答える挑戦作! トーク形式で送る、氷河期愚痴エッセイ! 設定は横読み推奨というか一択。 エッセイとは「試み」という意味も持っているのである。 オチはいつも同じです。

手芸好きの趣味日記

五色ひわ
エッセイ・ノンフィクション
 小さいドール作りを始めました。初心者の奮闘について書かせてもらっています。写真なども組み込んでいて、製作途中の人形の写真もあるので、閲覧には注意して下さい。ドール服の型紙も公開しています。  ✾……画像が含まれるページ  ⚠……製作中のドール写真が含まれるページ ※無断転載は禁止です ※初心者の日記ですので、参考にされる場合は自己責任でお願いします

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

処理中です...