灰色のエッセイ

偶々タマの話

　予め言っておきますが、今回の話は下ネタ……とまではいかないですが、下にまつわる話です。そういうのが苦手な人は、ここから先は読まない方が無難です。



　二十年近く前、私は友人宅にて数人の友人知人らと他愛もない話をしていました（言うまでもなく全員男）。その時、こんなことを言った奴がいたのです。

「聞いたんだけどよ、タマって売れるらしいぞ」

「タマって、これか？」

　別のひとりが、股間を指差し尋ねます。つまり睾丸です。

「そうだよ。俺の友だちの先輩が、ヤクザに片方のタマを売ったらしいんだ。一個百万円くらいで売れたらしいぞ」

「マジかよ。百万なら、一個売ってもいいかもな」

　そんな感じで、その場は盛り上がったのですが……ただ、私は信用していませんでした。臓器売買の話は、当時からあちこちで聞いていましたが……全てが、あやふやな話なんですよね。具体的に、どこそこの誰がやっているという話は聞いたことがありません。第一、男の睾丸など何の役に立つのだろう……とも思っていました。
　なので、私はこの話を嘘だと決めつけていたのです。



　さて、それから時は経ち……ある日、私はこんなネット記事を目にしました。

「二〇一五年、ロシアのバーで男が若い金髪美女に逆ナンパされた。酒を飲んでウトウト目覚めたらバス停でズボンが血まみれになっていた。病院に行ったら「睾丸がふたつともナヌくなっている。医師による切除に間違いない」と診断された。奥さんには「急病で睾丸を切除した」と説明したとか。ちなみに臓器市場で、睾丸四一六万円と言われている」

　私は驚きました。では、あの時に聞いた話は本当だったのか。それにしても、昔は睾丸ひとつで百万などという話だったが、今は四一六万で取り引きされているとは……昔の業者がボッタクリだったのか。それとも値上がりしたのか。いずれにしても、なんか凄いな……くらいにしか思っていなかったです。



　そして、つい最近のことです。性犯罪を犯した男の睾丸を切除し去勢する……という法案が韓国で可決された、なる噂を聞きました。
　もちろん、本当かどうかは知りません。法案可決されたからといって、果たして正式な法律になるかどうかは、バカな私にはわかりません。また、このやり方が正しいか間違っているかについても、意見を言うつもりはありません。
　ただ、ひとつ思うことはあります。この法律が正式に施行されたら……韓国政府は、摘出した性犯罪者の睾丸をどうするのでしょうか。捨てるのももったいないので、やはり業者に売るのでしょうか。ならば、せめて犯罪被害者に還元してほしいなあ……などと思います。