灰色のエッセイ

板倉恭司

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キャバクラ好きな犯罪者の話

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 以前より感じていたのですが、犯罪者もしくは犯罪者傾向のある人は、キャバクラ好きが本当に多いですね。もっとも、私はキャバクラには行ったことがないので、何が楽しいのかはよくわかりませんが。



 かつて、千葉県松戸市のマンション二階で火災が発生し、焼け跡から女子大生が遺体で見つかりました。遺体を調べた結果、刃物による傷があったため、殺人事件として警察は捜査します。その結果、事件後に現金自動預け払い機の防犯カメラから彼女のカードで現金を引き出す男の姿が映っていました。やがてTという男が強盗殺人並びに現住建造物放火などの容疑で逮捕されました。
 このT、住所不定無職という状況にもかかわらず、キャバクラに通い続けていたのです。この事件以外にも、あちこちで窃盗や強盗を繰り返し、警察に追われているにもかかわらず……ちなみに、住んでいるのはネットカフェのような簡易宿泊施設です。
 こんな明日をも知れぬ身であるにもかかわらず、Tはちょくちょくキャバクラに通っていました。ひどい時には、一晩で十万以上遣ったこともあったとか。
 彼の神経、私には全く理解できませんね。Tの立場は、ホームレスと大差ないんですよ。仕事はもちろん、住む場所もない。にもかかわらず、強盗や窃盗で得た金をキャバクラで散財する……しかも、最終的には人ひとりを殺した挙げ句に放火しているのですよ。
 他にも個人的な知り合いですが、「まいった。先月はキャバクラで五十万遣ったよ」などとボヤいている自称フリーの闇金業者(ウシジマくんのようなレベルの業者ではありません)がいました。この人は紆余曲折あった後、覚醒剤の所持使用で逮捕されました。その後、何をしているかは不明です。連絡がつかなくなってしまったので……。

 こういう人たちは、なぜキャバクラに行くのでしょうか。キャバクラに行ったことのない私には理解できない話ですし、正解を導き出すのも困難です。
 ですので、これはあくまで友人から聞いた話、そして私の独断と偏見から導き出された結論ですが……彼らは、自分の話を誰かに聞いて欲しいのではないでしょうか。
 犯罪者もしくは犯罪者傾向のある人間は、基本的に自己承認欲求の高い者が多いです。ただし、彼らには他人に誇れるような何物も持っていません。常人よりも高い自己承認欲求を持ちながらも、そのために努力したりはしない人種なのです。
 唯一、彼らが他人に誇れるものは……かつて自分がしでかした悪さや犯罪などです。いや、これも本来なら誇れるようなものではないのですが、こういう人たちには一般常識がありません。
 しかも、この人たちには自分のやったことを誇張する癖があります。昔のちょっとした悪さを、どんどん大きな話にして語るわけです。
 さらには、有りもしないような武勇伝をでっち上げ、キャバ嬢の前で延々と語る者も少なくありません。これに関しては他の章などにも書かれていますが……端で聞いていると、本当に唖然となりますね。
 こんな人たちの話、まともな人間なら聞く耳を持ちません。初めのうちは、面白がって聞いているかもしれませんが……彼らの話の最終的な結論は全て「俺って凄いでしょ」であり、「さすが○○さん」という称賛の言葉を期待しているわけです。はっきり言って、相手にすると疲れるだけですよね。
 そのため、周囲からはどんどん人が離れていきます。必然的に、彼らの話を聞いてくれるのはキャバ嬢くらいしかいない、ということになるわけですね。
 しかもキャバ嬢は、客の話に「嘘つけ」などと突っ込んだりしません。むしろ「○○さん、すっごーい!」などと言ってくれます。若く綺麗な女性が自分の話を聞いてくれた上、称賛の声を上げてくれる……まあ、男なら誰しも嬉しいシチュエーションではありますが、犯罪者の場合は嬉しさも常人を上回っているわけですね。
 まあ、キャバクラに行きたいという想いは悪いことではありません。そのために仕事に励むなら、いっこうに構わないでしょう。ただ、彼らの仕事は犯罪ですので……。
 もちろん、犯罪者もしくは犯罪者傾向のある者がキャバクラ好きだからと言って、逆もまた真なり……などという主張をここでするつもりはありません。言うまでもなく、キャバクラ好きな人たちの大半は、ごく普通の社会人です。ただ、犯罪者はキャバクラ好きが多いという事実も、知っておいて損はないかと思います。







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