灰色のエッセイ

板倉恭司

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とある宗教団体とかかわった話 2

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 前回の続きとなります。
 私は、郷愁学園に深くかかわるようになりました。まあ深くといっても、ちょっとした手伝いをする程度です。もちろん、報酬などはもらっていません。たまに、とあるマイナーなメーカーの缶ジュースを一箱もらったりした程度です。
 ちなみに、この時点で学園のバックにいる宗教団体が何なのか、わかった人もいるかもしれませんね。このジュースの名前はあえて書きませんが、一部では有名らしいです。
 それはともかく、私は学園の手伝いをするようになりました。ライノさんの引っ越しにも、手伝いに行きました。
 この当時の私は、純粋にライノさんの生き方に敬意を抱いていたのです。さらに、宗教に対する思想の違いはあれど、そういった部分を抜きにして友人として付き合えるのではないか……そう思っていました。
 しかし、それは間違いでした。


 しばらくすると、ライノさんは私にビラを渡すようになりました。言うまでもなく、宗教団体のものです。何月何日の何時にどこそこで集会を開く、という内容のものでした。
 私は困惑しつつも、はっきりと言いました。

「すみませんが、僕は宗教関係のイベントには参加しません。ライノさんのことは尊敬していますが、それとこれとは別です」

 その言葉に、ライノさんは機嫌を損ねた様子もなく笑っていました。それは残念だ、みたいなことを言っていた記憶があります。
 ところが、それでは済みませんでした。

 それから学園では、何かにつけ宗教のことを話すようになりました。他の生徒がいない時など、ライノさんは私に様々なニュースの話題を振って来ては「ウチの宗派では……」というような話をするのです。一方的に、教儀の素晴らしさを述べ立てくるようになりました。
 私は「そうですか。凄いですね」などと返してはいましたが、内心では閉口しておりました。勘弁してくれよ、という気分でしたね。たまに「いや、僕そういうの興味ないですね」と返してもいました。
 しかし、ライノさんに収まる気配はありません。しつこく宗教について語り、さらに「宗教や教儀はどうでもいいから、一度だけ参加してみたらどうだい? 必ず得られるものがあるよ」などと言いつつ宗教関係のイベントに誘われる……やがて私は嫌になり、その学園との縁を断ちました。とはいっても、何もいわぬままプッツリと顔を出さなくなっただけの話です。
 それから、たまに月一くらいの割合で実家にライノさんから電話が来ていたようです。が、私は全て無視しました。
 よくよく考えてみれば、そもそも私は宗教団体へ潜入するつもりで学園に入ったはずでした。しかし、いざ勧誘されると頑なに断る……この時の心理の変化について詳しくは書きません。



 当時の私は、ライノさんのことを人として尊敬しておりました。宗教のことを抜きにして、友人として付き合える……本気で、そう思っていたのです。
 ところが、ライノさんはそう思っていなかったようでした。イノケンのことは勧誘しなかったのに、私のことは熱心に勧誘した……私なら、簡単に洗脳できると思ったのでしょうか。あるいは、単純に歪んだ善意から勧誘していたのかもしれません。
 いずれにしろ、宗教に関係している人と深く付き合うと、必ずこういう瞬間が訪れるような気がします。宗教観を抜きにしても、わかりあえる……これは、結局のところこちら側の幻想なんですよね。宗教関係者との付き合いは、ほどほどに距離を置いたものにするのが無難でしょう。





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