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第12話 ギルド加入!そしてまた森へ。

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 「ここで合ってるかな?」
 「聞いた情報と合ってますしここがホーレスのブラッド・アライアンス支部だと思われます主様。」

 六人が見上げる先には他の建物より大き目な目立つ建物があった。
 中は外からでも分かるほど賑やかで看板にもハッキリ書いてあるためここで間違いないのであろうと与人も思っているが中々一歩が出ないでいた。

 「ご主人?…どうしたの?」
 「い、いや。いきなり厳つい男たちに囲まれたりしたらどうしようとか考えたら足が。」
 「否定。その可能性は限りなく薄いと思われますが。」
 「セラ、分かってる。それは分かってるけど…。」
 「はぁ、主。分かっているならサッサっと行け。」
 「ちょっ!リント!?押さないで!」

 リントに押され与人はグイグイとギルドの入り口に迫っていく。
 後に引ける訳もなく与人は意を決してその扉を開ける。
 そこは正にゲームで見たようなギルド、あるいは昔の酒場のような雰囲気の室内で与人が中に入っても誰も気にしてはいなかった。
 と言うのも。

 「で、ですから!一度上に確かめるので少し待って下さいって言っているんですコルトさん!」
 「取る必要なんかねぇて言ってるだろうが!確かに俺がやったんだ!」
 「だから証拠を持って来ていない以上は確認が必要なんですって!」
 「俺が信用ならないのかよ!」

 と一つしか無い受付と思われる場所で係の人と大男が揉めているからである。
 中にいる誰もが迷惑そうにしているが止めようとする者は誰もいなかった。
 そうこうしている間に全員がギルド内に入って来て耳打ちで相談する。

 「どうしたんだろうな。」
 「不明。現在の情報では判断が出来ません。」
 「…聞く?」
 「そうですね。ユニさんなら警戒感を与えず聞き出せると思います。」
 「分かりました。ではあの方に聞いてみます。」

 と言うとユニは一人で酒を飲んでいた中年の戦士の声を掛ける。

 「すいません。少しよろしいですか?」
 「…仕事なら受付に言ってくれ。直接依頼を受けるのはご法度だからな。まあしばらく時間が掛かるだろうが。」
 「その事なんですが何かあったのですか?かなり揉めていますが…。」
 「お嬢さん。憶えておきなあの位のやり取りは揉めてるの内に入らなえよ。まあ受付のミイも大変だとは思うがな。」

 というと中年の戦士はつまみを豪快に口に入れながら酒を飲む。

 「できれば早くギルドの人と話したいんです。…どうにかなりませんか?」
 「無理だな。コルトは自分の意見を曲げねぇからな。…まあ今回の件は奴の自業自得だが。」
 「と言いますと?」
 「あいつ討伐対象のモンスターを倒したと言っているんだが証拠になるモンスターの一部を取ってないと言っているんだ。」
 「なのに報酬を要求しているのですか?」
 「そう言うことだ。ホントか嘘かは知らなぇが証拠を持ってこなかった時点でコルトの自業自得だ。」
 「…ありがとうございます。」

 ユニは戦士に頭を下げると与人たちの下に戻り聞いたことを説明する。

 「つまりあの大男が駄々を捏ねているせいで私たちは足止めを受けている訳か。」
 「…潰す?」
 「否定。無暗に揉め事を起こすのはこれからを考えれば推奨できません。」
 「ですがこれ以上時間を喰うのも…。」
 「…とりあえず平和に説得してみよう。」

 そう言って与人が恐る恐るコルトと呼ばれる大男に近づき声を掛ける。

 「あの~。すみません。」
 「ああ!?今大切な話をしてるんだ!?ガキは引っ込んでな!!」
 「い、いえ。邪魔する気は無いんですけど何やら揉めているご様子ですしこっちも急ぎですので出来れば先にさせてもらえると…。」
 「チィ!うるせぇんだよ!!」

 コルトが大きな腕を与人に振るおうとするがパシッと音が響きその腕はリントにより片手で受け止められる。

 「流石にそれは見逃せんな。」
 「邪魔すんじゃ!痛って!痛てててててて!!」

 リントが腕を掴んでいる手に徐々に力を込め始めたのかコルトが苦悶の表情と悲鳴を上げる。
 更に力を込めそうなリントを与人は急いで止める。

 「り、リント。冷静に冷静に。」
 「…フン。」

 リントが手を離すとコルトは腕を擦りながら後退していく。

 「て、テメェら!こんな事をしてタダで済むと!?」
 「ほう?どう済まないのか教えて貰いたいものだな。」
 「うっ!?」

 リントが睨みつけるとコルトは怖気着いたように思わず目を逸らす。
 助けを求めるように周囲のギルドメンバーを見渡すが誰も動こうとはしなかった。
 その上リントの後ろから殺気にも似た気配を醸し出す四人がいるためコルトはついに。

 「と、とにかく!俺は倒したしたんだから報酬を用意しておけ!分かったな!」

 そう言ってギルドを出て行ったのであった。
 とりあえず大きな揉め事は避けれてホッとした与人はそのまま受付に向かう。

 「先ほどはありがとうございました。私はブラッド・アライアンスのホーレス支部受付、ミイと言います。依頼の受付ですか?」
 「ま、まずはコレをどこで売ればいいか聞きたいんですがいいですか?」
 「もちろん。お金にならない依頼も受け入れる。それがブラッド・アライアンスの信条ですから。…それでその物とは。」

 ミイに質問されるとリントがしまってあったユニの角を取り出しミイに渡す。

 「ああ、ユニコーンの角ですか…。」
 「え、何かまずい事でも?」
 「そういう訳じゃ無いんですけど残念ながら偽物も多いですからね。これだけ大きいものだと多分これも…ん?」

 偽物と決めつけていたミイであったが触った瞬間に何かを感じたのかユニの角をあらゆる方向から見渡している。

 「だ、誰か!鑑定の『スキル』を持っている人は居ませんか!?」

 ミイがそう叫ぶと一人の盗賊みたいな恰好をした女性が現れユニの角を触る。

 「ど、どうですか?」
 「信じられないわ。これは間違いなく本物のユニコーンの角よ。」

 そう女性が言うとワッと場が騒然となりユニの角を一目見ようと殺到する。
 リントは揉みくちゃにされている与人を引っ張り出すと一旦皆のところに戻る。

 「お、大騒ぎになったな。」
 「ええ。まさか私たちの角がここまで人間たちの間で貴重だなんて思っても見ませんでした。」
 「…ユニ。人気者。」
 「肯定。ですがこのままでは時間を余分に使ってしまいます事態の収拾を進言します。」
 「だな。私が一度取り戻して来る。」
 「そ、それだと余計な揉め事に…。」

 とにかくこの状況を収めようと考えていた時であった。
 奥の部屋から誰かが出てくると周りにいたものを一喝する。

 「騒ぐなアホども!!貴様らそれでもブラッド・アライアンスの一員か!!」

 すると皆ピタっと動きを止める。
 その誰かはユニの角を掴むとミイに渡し与人たちに近づいて来る。
 その人物は大柄の男であったが先ほどのコルトとは違い威厳のようなモノを纏っていた。

 「お前らか?ユニコーンの角を持ってきたのは?」
 「は、はい。そ、そのたまたま見つけて…。」
 「入手手段などどうでもいい。ただここに持ってきたのは正解だったと言おうとしただけだ。他の軟弱なギルドだと足元見られただろう。」

 男はそう言うとミイに振り返る。

 「ミイ、そいつを信頼できるとこに売ってこい。そして手数料抜いてこいつらに渡してやれ。」
 「わ、分かりました!!」

 そう言うとミイは急いでギルドを出て行った。
 再び男は与人たちの方に向くと与人をジロジロと見て来る。

 「な、何でしょうか?」
 「…フン。『グリムガル』の王も愚かな事をしたものだ。こいつが一番使えそうじゃないか。」

 男の言葉に皆が警戒を強める。
 この男が何者であれ事情を知られるとまずいことは皆の共通認識であった。

 「安心しろ突き出す気はない。寧ろ俺は『アーニス教』を嫌っているからな。」
 「あの済みませんあなたは?」
 「まあ知らなくても当然か。俺はウォーロック、このブラッド・アライアンスの三代目のギルド長。つまりはトップだ。」
 「!?」

 まさかの発言に与人が驚く中ウォーロックは与人が持っていた紹介状をスルッと奪い読む。

 「あ、それは!?」
 「はぁ~ん。ホセのおっさんのお気に入りか。ますます気に入ったぜ。」
 「ホセさんを知っているのですか?」

 ユニが質問するとウォーロックは少し驚いたように逆に質問してくる。

 「お前らホセのおっさんが何者か知らずに紹介状を貰ったのか?一体何したんだよ?」
 「情報を売っただけですけど…一体何者なんです?ホセさんって?」
 「ホセのおっさんは『ルーンベル』全体の行商を牛耳る商売ギルド、ゴールドラッシュのトップだ。まあ見た目は冴えないおっさんだがな。」

 ホセの思わぬ正体に与人はもちろん他のメンバーも程度はあれ驚きを隠せないでいた。

 「細かい事はいい。結局お前は主の情報をどこまで知っている。そしてお前は敵か味方かどっちだ。」
 「り、リント。」

 リントの直球な言い方に与人は頭を抱えるが当のウォーロックは笑っている。

 「ハハ!生きのいい女は好きだぜ。いいぜ答えてやるから全員こっち来い。」

 そう言ってウォーロックは奥の部屋に入っていく。
 与人も全員と顔を見合わせると意を決して奥の部屋に入っていく。
 部屋はどうやら応接室のようで広々としたものであった。
 ウォーロックは一番奥に座ると皆に座るように促す。

 「で、ウォーロック殿。あなたは主様をどこまで知っているのですか?」

 アイナが皆が座ると同時に聖剣らしく切り込む。

 「好かれてるな少年。どこでこんないい女たちを引っ掛けたんだ?」
 「ま、まあ色々あって。」
 「は~ん。まあ人生いろいろだわな。で、俺がお前についてどこまで知っているかだったな。っと言っても俺も詳しい事は全然知らん。知っているのはここの王が異世界から召喚した奴を一人放りだした事。そいつの『スキル』が『アーニス教』とそぐわないから殺そうとしているぐらいだな。」

 王が自分を殺そうとしていると事実を聞き与人は震える。
 想像していた事ではあるがそれでも体の震えが止まらない与人の手を隣に座っているリルが握る。

 「それを与人さんと断定した理由は?」
 「一度召喚された奴らを見にいったからさ。で、こいつも同じ服を着てたからすぐ分かったという訳だ。」
 「そうか、だったら最後の質問だ…お前は私たちを、主を受け入れる気はあるのか?」
 「…。」

 リントの質問にウォーロックはしばらく無言になるが口を開く。

 「お前らはどうなんだ?」
 「何?」
 「俺はお前らを受け入れる気はある。だがお前らは俺を信用する気があるのか?」
 「…。」
 「あるんであれば俺は『グリムガル』が何て言おうとお前らを守る。だが俺らの一員である限りは俺の掟は守って貰わないと困る。お前の『スキル』を俺に教える気はあるのか?」
 「そ、それは…。」
 「残念だが『スキル』も教えられないような奴を一員にする訳にはいかねぇ。…でどうする少年。」
 「…分かりました。」
 「主様。少し話が。」
 「おい、あんたが何者かは知らねえが人が決めた決断に口を挟むんじゃねぇ。」

 アイナが与人を止めようとするがウォーロックが静かにそう一喝すると気迫に負けアイナは下がる。
 そして与人は『ぎじんか』について分かるところまで全てウォーロックに話した。

 「なるほどな『アーニス教』である王が嫌がる訳だ。」
 「質問。マスターはマスターなりの覚悟を提示しました。ウォーロック氏、あなたはそれにどう対応しますか?」

 セラの問いかけにウォーロックは何度か頷くと立ち上がり宣言する。

 「もちろん覚悟にはそれ相応の対応をしてやるさ。お前らをこの俺のブラッド・アライアンスの一員として認めてやる。」
 「…はぁ~。」
 「ご主人…溶けた。」

 与人は緊張の糸が溶けたのかソファーからずり落ちてしまう。
 リルが与人をツンツンしながら遊ぶのを見てウォーロックは笑う。

 「ハハ!まだまだだな少年!ああ後、『スキル』持ちは本来表記が必要だが誤魔化しといてやるよ。」
 「ありがとうございますウォーロックさん。」
 「いいさ、仲間に優しくするのは当然だろ?」
 「そうかだったら私たちは『マキナス』に行きたいんだが検問をどうにかならんか?」

 リントがそう聞くとウォーロックはごそごそと懐から何かを取り出す。

 「こういった通行許可書があれば簡単に通れるはずだ。だが申請が通るまで時間がかかるぞ。」
 「…仕方ないでしょうね。揉め事を起こすよりは安全に行くべきです。」
 「それにしても『マキナス』か…。あそこは空気は悪いがそれ以外はいい所だ国王も俺と気が合うからな!」
 「う、ウォーロックさんは『マキナス』の王様と知り合いで?」
 「あ~。まあそんなところだ。」

 ウォーロックにしては曖昧な返事に皆が不思議に思っているとコンコンと扉がノックされる。

 「入れ。」

 そう言われ入って来たのはミイであった。
 ミイは大きな袋をテーブルに置くと何も言わず部屋を出て行った。

 「こ、これ全部お金?」
 「やったな少年。一気に大金持ちだな。」
 「ちなみにこれってどのくらいになるんですか?」
 「え~と大体一億ルーンだからな…まあ一生楽して暮らせるぐらいはあるんじゃないか?」
 「…。」
 「ご主人…凍った。」

 余りの金額に与人が固まったまま話は続く。

 「で、細かい書類なんかは明日するとして…お前らを見込んである依頼をこなして欲しいんだが。」
 「疑問。依頼ですか?」
 「ああ、情けない事にここにいる連中じゃ歯が立ちそうにねえ討伐対象だからな。」
 「場所は?」
 「ここから近い森だ。」
 「…最終結論は主が決める。それでもいいか?」
 「もちろん明日に聞かせてくれ。」
 「それでその討伐対象というのは?」

 ユニの質問にウォーロックは真剣な顔で答える。

 「その森の主にして最強の暗殺者、ギガントマンティス。」
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