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第5話 目を開ければSF空間でした…なんで?

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 眩い光に包まれて思わず与人は目をつぶる。
 しばらくして目を開けて入って来た光景に与人は思わず愕然とする。

 「…は?」

 初めて『ルーンベル』に来た時も意味不明であったが受け入れずらさは変わらないかもしれないと与人は愕然とする中でそう思っていた。

 「何でいきなりSFぽい場所に?」

 そうそこはファンタジーとは程遠いような、まるで宇宙船のように周りが金属や謎の機械によって埋め尽くされていた風景であった。
 人の気配は無くただ機械が静かに動いてる音のみが部屋中に響いている。

 「…は!?三人はどこに!?」

 しばらく惚けていた与人であるが三人の姿が見当たらない事に気付き大声で呼ぶ。

 「リント~!!リル~!!ユニ~!!聞こえたら返事してくれ~!!」

 出来る限り大声で呼ぶが部屋に虚しく響くばかりで誰の返事も帰ってこない。

 「…まずい。」

 与人は今になって今の状況を理解し冷や汗が止まらなくなる。
 はっきり言ってあの三人がいなければ与人自身の戦闘力など雀の涙にも匹敵しないだろう事は彼自身がよく分かっていた。

 「と、とにかく何とかして戻らないと!こんな所をモンスターにでも襲われでもしたら…。」

 と与人が呟いていると突如サイレンのような音が鳴り響く。
 それと同時に与人にとっては不吉な機械音声が聞こえ始める。

 《侵入者発見。侵入者発見。戦闘用ゴーレムは直ちに目標を排除せよ。繰り返す。》
 「…侵入者か~。大変だなここも。」

 思考を停止させ現実から目を逸らす与人。
 だが現実は変えられず目の前の扉から大きな鉄の巨体が現れる。

 「侵入者確認。これより武力による排除を実行します。」
 「…これゴーレムというか完全にロボットじゃね?」

 ある意味最もなツッコミではあったがゴーレムがそれに反応する訳も無くその鉄で出来た右腕を大きく振り上げる。

 「…はい?」

 与人の頭では対処しきれず棒立ちのままであったがゴーレムの腕が振り下ろされる段階になってようやく頭が回り出す。

 (あ、これヤバい。)

 ゴーレムの右腕が大きく振り下ろされ奇跡的に与人は間一髪の所で避ける。
 振り下ろされた右腕が床に当たり金属の床が大きくへこむ。

 (あ!ぶっね~!!)

 あの攻撃が直撃したらと思うと与人は止まっていた冷や汗が再び湧き出るのを感じる。
 ゴーレムはギギギと音を立てながら再び与人を正面に捕らえる。

 「ま、待って!待って!待って!待っててば!!話を聞いてくれ!!」
 「回答。問答無用。」

 与人の必死の懇願も意味なくゴーレムは今度は両腕を前に出しそれを飛ばして来る。

 「ぎゃぁぁぁぁ!何あれ!?本当にゴーレムじゃなくてロボットじゃんか!誰だこんなの作ったの!!」

 アニメに親しんだ身とすればゴーレムの武装に興味を引かない訳ではなかったが狙われる身では恨み言の一つや二つ言いたくもあった与人は悲鳴を上げつつもギリギリ回避する。
 その後も悲鳴を上げつつギリギリのところでゴーレムの攻撃を回避する与人。
 火事場の馬鹿力というのもあったが与人にとっては幸運な事にこの場所がまあまあの広さがあった事とゴーレムの動きが鈍かったのである。
 だが徐々に追い込まれついに与人は部屋の端に追い詰められたのである。

 「ゼェ…ゼェ…。」

 もはや意味ある言葉を話す事も出来ず荒い息を吐く与人にゴーレムは無情にもその腕を振り上げる。

 「…覚悟。」
 (ああ、死んだ。…巻き込んどいてごめんなリント、リル、ユニ。せめて俺が死んだら自由に生きてくれ。)

 そう思いつつ腕が振り下ろされるのを目を閉じ身構える与人であったがいつまで経っても攻撃がこない。

 (?どうなって?)

 与人が勇気を奮い起こし目を開けてみればゴーレムは腕を振り上げた状態で停止している。
 何が起こっているかは不明だがとにかく逃げようとする与人であったが。

 「提示。その場を動くな。動けば敵対行為とみなし攻撃を再開する。」
 「はい!!」

 逃げ出そうとした格好のままのため何とも締まらない恰好のまま硬直する与人。
 それから少ししてようやくゴーレムから言葉が出る。

 「解析完了。侵入者が手にしているのはマスターのスマートフォンであると判明。」
 「え?…あ!これ!?」

 このドタバタですっかり忘れていたがここに来る元凶ともなったスマホを握りしめたままである事を思い出す与人。

 「…侵入者に告ぐ。そのスマートフォンを持っている理由、このラボに侵入した訳、そして身の上を事細かに説明せよ。でなければ…。」
 「こ、攻撃再開ですか?」
 「否定。…このラボが持てる全てを使い侵入者を拷問する。」
 「多分だけど死ぬより辛い目に!?」
 「肯定。…返答は如何に。」
 「喋ります!何から何まで喋ります!!」

 こうして与人はこの『ルーンベル』にクラスごと召喚された事、『グリムガル』から追放され『神獣の森』に飛ばされた事、そこで『ぎじんか』の『スキル』を使い三人の仲間が出来た事、そして水浴びへ向かう途中にスマホを見つけ弄ってる途中でここに飛ばされた事など全て話した。

 「心拍計測…緊張をしているものの虚偽を述べている形跡は見られず。事実を述べていると推測。」
 「し、信じてくれますか?」
 「…最後の問い。このスマートフォンを見つけた際に他の人間を目撃等は。」
 「ち、直接取りにいった訳じゃないけどいたら仲間が気づいたと思うから…いなかったと思う。」
 「…虚偽の兆候なし。これよりこの人間を侵入者ではなく客人として扱います。こちらへ。」
 「は、はあ。」

 そう言ってゴーレムが歩いていくのに付いて行く与人であった。


 「なるほど。つまりはあなたを造ったマスターも異世界からこの『ルーンベル』に飛ばされた人間という訳だと。」
 「肯定。そして万が一マスターと同じく異世界から飛ばされた人物が来た場合丁重にもてなすようにプログラミングされています。…実行したのは本日が初めてですが。」

 与人は差し出されたお茶(恐らく家事用のゴーレムが出してきた)を飲みつつ先ほどの戦闘ゴーレムから事情を聞いていた。
 何でも彼女プログラミング上は性別は男性に当たるらしい)を造ったマスターは『スキル』『工業系』の持ち主で与人と同じように追放された身であるらしい事が語られた。
 だがそれにもめげずその人物は『ルーンベル』中を旅して秘密裏にこのラボを造り上げたと聞き与人は驚いていた。
 形も『スキル』も違えどゴーレムのマスターは間違いなく彼、もしくは彼女なりの楽園を造った事には間違いなくあらゆる意味において先輩と呼べる存在だと思ったからだ。

 「…で、このスマホはあなたのマスターの物でそのアプリにはこのラボに直接飛ぶためのものもあったと。」
 「肯定。そしてマスターが無くしたのであればこのラボに長年に渡り戻らないのも納得です。人間的に言えば方向音痴でしたので。」
 「な、なるほど。…探しに行こうとは思わなかったの?」

 与人は気になってそう問いかけていた。
 自分がその立場ならここでずっとは待たず探しに出てしまうだろうと思ったからだ。

 (そう言えば三人は俺を探してくれてるかな?…見放すにしても少しは探してて欲しいな~。)

 ふと思い出したように三人の事を考える与人であるがゴーレムは首を横に振る。

 「…否定。当機にそのようなプログラムはされておりませんので。」
 「…そうか。」
 「追記。例えプログラムされていたとしても当機はここから離れないでしょう。」
 「え?なんで?」

 そう不思議そうに聞くとゴーレムは少し間を開けてから話始める。

 「…ここにはマスターの宝物が保存してあるからです。」
 「宝物?それって?」
 「申し訳ありませんがその問いには答えられません。」
 「…まあそうだよな。」

 寧ろ見知らぬ相手に宝物があると教えただけでも敵意がないと認識してもらえたようで与人は安心していた。

 「ですのでこの二百年間、当機はこのラボから動いた事はありません。」
 「二百!?そ、それって…。」

 与人は言えなかった。
 その年数は人間にとってあまりにも長く、既に彼のマスターは恐らくもうこの世には居ない事を。

 「…知っています。この日数がマスターを始めとした人間にとってどれほど長いかを。」
 「!!」
 「ですがそれでも何らかの魔法によって生きながらえてる可能性もあります。可能性が低くともゼロでない限りマスターの命令は生きています。よって当機はこのラボを守る使命があります。」
 「…そうか。」

 きっとこのゴーレムはどのようにしても、それこそ動く限りもう百年だろうと二百年であろうとこの場所を守り続けるのであろうと与人は思った。
 そして同時に少しでいいから力になりたい、そうも思った。

 「なあ、いつもメンテナンスとかはどうしてるんだ?」
 「…回答。質問の意図がよく分かりませんが簡易的なメンテナンスでこの二百年はもたせていますが。」
 「それって俺でも出来るか?」
 「疑問。何故でしょうか。あなたにメリットがあるとは思えませんが。」
 「いや何と言うか。頑張っているのを見たら応援したくなるんだよ。例えそれがプログラミングで動いているゴーレムでもさ。」
 「…驚愕。」
 「え?な、何が?」
 「かつてマスターも類似の言葉を言いました。『頑張っているのに人間もゴーレムも関係ないよ。』と。」

 平面的な言葉であるにも関わらずそう言うゴーレムの声にはどこか懐かしむような声のような気がした与人。
 案外そのマスターと出会っていたら気の合う友人として過ごせたかも知れないとまで思っていた。

 「…疑問。客人とマスターではあらゆる要素が違います。…ですがどこかマスターと会話していると錯覚してしまいます。…認識機能のバグでしょうか?」
 「…一つ聞くけどゴーレムさん。あなたに心ってあるの?」
 「肯定。当機はマスターが初めて魔法と『スキル』を使って造り上げた心を持つゴーレム。識別認証ゴーレム01です。…二百年前は五機いましたが他の機体はやって来るモンスターによって破壊。もしくはメンテナス不十分による故障によって機能停止しました。」
 「そうか…だったらそれはバグじゃなくて『懐かしい』という感情だよ。」
 「…なるほど。これが『懐かしい』。…なるほど。」

 ゴーレムはそう何度も連呼し噛みしめてるようであった。

 「…指摘感謝します。ですが残念ながらメンテナンスを任せる事は出来ません。」
 「そうか…まあそりゃそうだよな。」
 「…忠告。これは信用できる等の問題ではありません。先ほども言った通り当機は魔法と『工業系』の『スキル』による機体です。そのどちらも持ち合わせていない客人ではメンテナンスは不可能であると思われます。」
 「…ごもっともで。」
 ゴーレムの回答にそれ以外に何も言えない与人であった。


 「時間的に既に外は夜間になっています。ですのでこのラボを出るのはもう少し後がよろしいかと。客間がありますのでそこで休憩するのを当機は勧めます。」

 とベットしかない真っ白な部屋に通されしばらくの時間が経った。
 あまりに暇なので与人は例のスマホを取り出して改めて観察してみる。
 これも恐らく魔法と例の『スキル』の組み合わせであろうが見た目は与人の知っているスマホと違いは無い。

 「二百年以上も前に俺のような奴がいるとはな…。」

 リントとの会話で知ってはいたがそれでもこうして残された物を見てみると実感が湧いて来る与人。
 スマホを起動してアプリを見ていくと気になる表示があった。

 「…ん~?」

 一瞬迷ったが見る限り危険なものでは無いし興味の方が勝ったので取り敢えず起動する。

 「…。」
 「…。」
 「…。」
 「…はぁ。」

 与人はスマホを持ったまま部屋を出ようとする。
 先ほど知った事実をゴーレム01に伝えなければいけない。
 その結果あのゴーレムがどのような選択をするかは不明であるがそれでも知る権利が彼にはあると思ったからである。
 …だがそれと同時にサイレンが鳴り始め機械音声が流れる。

 《モンスター侵入。モンスター侵入。戦闘用ゴーレムは直ちに目標を駆逐せよ。繰り返す…。》
 「!!」
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