8 / 14
逃がさない
しおりを挟む瑞季は、朋が逆らわない限りあの動画を流出させたりはしないと言っていたが、正直信用できない。仮に流出することがなかったとしても、精神的なダメージは十分大きかった。
それからは家の中では少しでも瑞季と顔を合わせないように警戒して過ごした。正和は初めに言っていた通り、家にはまったくと言って良いほど帰ってこない。学校では警戒するまでもなく、それぞれいつも通りに過ごしていた。
「お前さぁ、何俺のこと避けてんの」
「っ...」
あんなに気を付けていたのに、タイミング悪く、帰り道で瑞季と会ってしまった。明らかに苛ついている瑞季に身を竦める。
「そういう態度、すげぇ腹立つんだけど」
「避けてた訳じゃ......」
「...嘘つくとか論外だな」
やばい、さらに怒らせてしまった...
「ごめっ......」
「来いっ」
腕を折れるんじゃないかと思うほど、強く握られて早足で家へ帰ると、そのまま瑞季の部屋の横にある部屋に連れ込まれる。
「ここって...」
「あ?...ヤリ部屋」
「は...?」
ふざけているのかと思ったが、瑞季は一ミリも笑っていなかった。
ドアに鍵をかけ、瑞季は部屋の真ん中にぽつんと置かれたベッドに腰かける。
「脱げ」
一瞬躊躇ったが、抵抗するだけ無駄なのは前回で学習していた。大人しくベルトに手をかける。
「下だけ...?」
「好きにしろ」
そもそも脱ぎたくないのだから、好きにするも何もないのだが、前回同様下をすべて脱いだところで、ジャケットにしっかりとネクタイまで締めて、下半身丸出しという格好の不恰好さに気がついて、ジャケットとネクタイも床に脱ぎ捨てる。ワイシャツ一枚になったところで、全裸になることへの抵抗感から躊躇っていると、もういいと瑞季が苛立った声で言った。
「こっち来い」
無駄な努力なのはわかっているが、羞恥に耐えられずにワイシャツの裾を強く引っ張って隠すようにしてベッドに近づく。
「ぅわっ!」
腕を引っ張られてバランスを崩し、ベッドに倒れこむ朋の上に瑞季が跨がる。腹部にもろに瑞季の体重がかかって、呻き声が漏れた。
「なんで俺のこと避けてた」
「っごめ、ん」
「謝れっつってねぇだろ!理由言えって言ってんだよ」
さらに腹部に体重がかけられ、息が苦しくなる。
「ぅっ...会うの、怖...かっ...」
「怖いから逃げようと思ったわけだ?」
「.....ごめん...」
「お前、自分の立場わかってるか?」
瑞季の冷たい視線が痛い。恐怖で身体の奥が冷えていくのを感じた。
「俺は、お前のこと助けてやってんだろ?それがなに、会うのが怖いだよ。その上、問いただされてあからさまな嘘つきやがって。ったく、良いご身分だな」
謝らなきゃ、と思うのに、喉が乾いて音にならない空気だけが抜けていく。突然、瑞季の右手が朋の顔を挟むように掴んだ。
「ほら、言うべきことは?」
「...っごめ...なさ......」
瑞季の手に力がこもり、その痛みに涙の滲んだ目を歪ませる。
「聞こえねぇよ」
「......ごめんなさいっ」
「反省したわけ?」
「し、たっ...!もうしない、からっ」
「...あっそ」
身体の色んなところに掛かっていた圧力がなくなり、スッと楽になる。許されたのだとおもって安心したのも束の間、朋から降りた瑞季は引き出しを開けて、そこから取り出したチューブを投げて寄越してきた。
「なに...これ?」
「お前、思ったよりバカだったみたいだから、ちゃんと逃げないように躾なきゃダメだなと思って」
「え......」
「やっぱ初日にやっとくべきだったわ」
瑞季の口から出てくる不穏な言葉に身震いする。次の瞬間、これから何が起こるのかを一瞬で理解した。
「組伏せられて、犯されりゃ、嫌でも自分の立ち位置理解すんだろ?」
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる