25 / 30
第1章
制裁
しおりを挟む結局あの日、真生は早朝に目を覚ますと散々謝ってから慌てて自分の部屋にもどって行った。それから十日ほどたつが、一度も真生に会えていない。放課後、別館に来なくなったのだ。今日こそは、と思い、通い続けているが一人の時間を過ごすことになるだけだった。
気まずさのせいだろうか
それとも何かあったのか...
考えているうちに一睡もしないまま、朝になってしまう。サボりの誘惑になんとか打ち勝ち、教室へ入ると一瞬静まり返った。
......なんだ?
すぐにいつものうるさい教室に戻ったが、その様子にどこか違和感を感じながら、席につく。
「なぁ、石川」
普段ほとんど話すことのない男子だ。教室にいる全員の視線が自分に集まっているような気がして、居心地が悪い。
「おまえ、これマジ?」
「つか、映像までついてんだから間違いないだろ」
嫌な予感がした。
「...なんのこと」
差し出された携帯の画面に映っていたのは、真っ最中の男女。男の方は制服を着ているようだった。
「......ッ」
やられた......
「レイプして退学になったって書いてあるけど」
「レイプとか気持ち悪ぃ......」
「いやでも相手かなり美人だぞ。ちょっと羨ましくね?」
「はは、お前サイテー」
「石川、顔いいのに意外ー」
「顔いいやつほど、みたいな?」
「見た目よくてもさすがにねーわ」
「ねぇ、どんな感じだった?」
「お前ムリヤリがいいとか、そういう変態?」
「おい、言い過ぎるとお前もヤられんぞ」
「おわっ、マジで?狙われてんのか、こえーー」
次々に向けられる言葉に対して怒りよりも、ダルさだけが身体の内側で膨らんでいく。言い返す気にもならず、思考を止めて、目をつぶってしまおうと思ったところで、強い力で肩を掴まれた。
「タク。ちょっと来い」
佐倉が険しい顔をして立っていた。あの場所から逃げられるなら、と大人しくついていった先には佐々井も待っていた。
「タク......!」
佐々井は泣きそうな顔をしていた。
「なんでこんなもの...っ」
ネット上の生徒掲示板に動画を上げたのは恐らく理久だろう。それを誰かに言うつもりはなかった。話したところで不利なのは拓斗のほうだ。
「なんでこんなことしたのかって質問じゃないんだ...?」
「お前がんなことするわけないだろ」
「そうだよっ...こんなのウソにきまってるから」
「でもその動画に映ってんのは俺だし、退学になったのもほんと」
「......なにがあった。これどう見たってムリヤリじゃないだろ」
どうしてこの二人はなにも疑わないのだろうか。無条件に信じられていることが不思議で仕方がない。
「......二人とも、少しは疑いなよ。だまされるよ?」
「なにそれ。じゃあ立場が逆だったら、タクは俺と優のこと疑うの?」
佐倉も佐々井もそんなことするハズがない。首を横に振ると、佐々井が頷いた。
「でしょ?だから、無理強いはしないけど、なにがあったか話してほしい。味方するから」
そうは言っても話せば二人はきっと拓斗に失望する。こんな風に信じてくれたことをムダにしてしまうかもしれない。
それでもこのままなにも話さずに今まで通り、なにもなかったように過ごせば、迷いなく信用してくれた二人に対して罪悪感を感じ続けることになるだろう。
大きくため息をつき、覚悟を決めた。
「.........中学のとき、担任と付き合ってたんだ」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる