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第1章
理解されない
しおりを挟む「だぁぁー、また負けた」
「タク弱すぎー」
日曜日、佐々井と佐倉の部屋でゲームをしていた。元々テレビゲームはしないため、さっきからずっと負け通しだ。
「しかも一向に上手くならねぇ」
「佐倉うるさい。こういう指先細かく動かす系のダメなんだってー」
「あはは、ちょっと休憩しよっか」
佐々井の提案に、憎たらしく見えてきていたコントローラーをベッドに投げる。
「そういえばタクって放課後何してるの?」
「あー、それ俺も気になってた。こないだ部活終わって部屋行ったらまだいなかったから。なんも部活やってないよな?」
二人にはまだ真生のことは話していなかった。というより誰にも話していない。
話して良いのかな...
『お願い...このこと誰にも言わないで...』
今にも泣きそうな真生の声が脳裏をよぎる。
「あー...なんか適当に時間潰してるよ」
二人が訝しげな顔をした。
言い訳ヘタクソすぎだろ、俺...
「なにそれ、怪しーー」
まぁ、そうなるよな
「言えないようなことしてんのか?」
「いやっ、、そういう訳じゃないんだけど...」
後ろからそろーっと手が伸びてきたことに気がつかなかった。
「うわっ、あっ...ちょ、やめっ...」
「白状しろーっ」
佐々井に脇腹を擽られる。そこは弱いのだ。つりそうになり、すぐに降参した。
「わかっ...言う!言うからっストップッ!!」
息を整える拓斗を見ながら呆れた声で佐倉が言う。
「お前ら、小学生かよ...」
「俺は関係ないだろっ」
「ほら、早く言わないとまた擽り攻撃いくぞ」
佐々井からジリジリと離れながら、言った。
「細かいこと言えないんだけど、真生先輩と話してる」
「.........は?」
ポカンとする佐々井の横で佐倉が顔をしかめる。
「えっ、どういうこと?なんで知り合ったの?」
「たまたま見つけて声かけたらそれから話すようになったって感じ」
色々と省略してはいるが嘘ではない。これくらいなら話しても大丈夫だろう。
「タク...あの...」
佐々井が口ごもる。不思議に思って首をかしげると佐倉が口を開いた。
「先輩とヤった?」
「...ヤってないよ。そういうつもりで会いに行ってるわけじゃない」
「真生先輩と二人でいて、話してるだけ?あり得ないだろ」
「先輩って理久先輩以外とまともに話してるとこ見たことないよ。男と寝てる時以外は理久先輩にべったりって感じだし」
...そうなのか?
あの人、割りとよく喋るし、放課後はずっと一人でピアノ弾いてるよな
「...たぶん真生先輩って二人が思ってるような人じゃないと思う」
「はっ、ヤらせてもらってほだされたのか?」
「っだから、違っ...」
「あんな見境いなく誰にでも手出すクズと仲良くしてるとか信じらんねぇ」
「ちょっ...佐倉っ、言い過ぎ......」
焦ったように佐々井が佐倉を止めるが、遅かった。
「...っふざけんなよ。あの人が佐倉にそこまで言われなきゃなんないようなことしたわけじゃないだろ」
「でも事実だろうが。俺は目の前であの人の淫乱さ見てんだよ」
「佐倉はそれでトラウマになったのを、真生先輩に八つ当たりしてるだけだろ!部活の先輩たちのせいにできないもんな」
「二人とももういいから!落ち着いてよっ!」
間に挟まれてオロオロしていた佐々井の声に二人とも黙る。そのまま、なにも言わずに部屋を出た。
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