遠くて近くて愛おしい

Nora

文字の大きさ
上 下
9 / 30
第1章

理解されない

しおりを挟む


「だぁぁー、また負けた」


「タク弱すぎー」


日曜日、佐々井と佐倉の部屋でゲームをしていた。元々テレビゲームはしないため、さっきからずっと負け通しだ。


「しかも一向に上手くならねぇ」


「佐倉うるさい。こういう指先細かく動かす系のダメなんだってー」


「あはは、ちょっと休憩しよっか」


佐々井の提案に、憎たらしく見えてきていたコントローラーをベッドに投げる。


「そういえばタクって放課後何してるの?」


「あー、それ俺も気になってた。こないだ部活終わって部屋行ったらまだいなかったから。なんも部活やってないよな?」


二人にはまだ真生のことは話していなかった。というより誰にも話していない。


話して良いのかな...


『お願い...このこと誰にも言わないで...』


今にも泣きそうな真生の声が脳裏をよぎる。


「あー...なんか適当に時間潰してるよ」


二人が訝しげな顔をした。


言い訳ヘタクソすぎだろ、俺...


「なにそれ、怪しーー」


まぁ、そうなるよな


「言えないようなことしてんのか?」


「いやっ、、そういう訳じゃないんだけど...」


後ろからそろーっと手が伸びてきたことに気がつかなかった。


「うわっ、あっ...ちょ、やめっ...」 


「白状しろーっ」


佐々井に脇腹を擽られる。そこは弱いのだ。つりそうになり、すぐに降参した。


「わかっ...言う!言うからっストップッ!!」


息を整える拓斗を見ながら呆れた声で佐倉が言う。


「お前ら、小学生かよ...」


「俺は関係ないだろっ」


「ほら、早く言わないとまた擽り攻撃いくぞ」


佐々井からジリジリと離れながら、言った。


「細かいこと言えないんだけど、真生先輩と話してる」


「.........は?」


ポカンとする佐々井の横で佐倉が顔をしかめる。


「えっ、どういうこと?なんで知り合ったの?」


「たまたま見つけて声かけたらそれから話すようになったって感じ」


色々と省略してはいるが嘘ではない。これくらいなら話しても大丈夫だろう。


「タク...あの...」


佐々井が口ごもる。不思議に思って首をかしげると佐倉が口を開いた。


「先輩とヤった?」


「...ヤってないよ。そういうつもりで会いに行ってるわけじゃない」


「真生先輩と二人でいて、話してるだけ?あり得ないだろ」


「先輩って理久先輩以外とまともに話してるとこ見たことないよ。男と寝てる時以外は理久先輩にべったりって感じだし」


...そうなのか?


あの人、割りとよく喋るし、放課後はずっと一人でピアノ弾いてるよな


「...たぶん真生先輩って二人が思ってるような人じゃないと思う」


「はっ、ヤらせてもらってほだされたのか?」


「っだから、違っ...」


「あんな見境いなく誰にでも手出すクズと仲良くしてるとか信じらんねぇ」


「ちょっ...佐倉っ、言い過ぎ......」


焦ったように佐々井が佐倉を止めるが、遅かった。


「...っふざけんなよ。あの人が佐倉にそこまで言われなきゃなんないようなことしたわけじゃないだろ」


「でも事実だろうが。俺は目の前であの人の淫乱さ見てんだよ」


「佐倉はそれでトラウマになったのを、真生先輩に八つ当たりしてるだけだろ!部活の先輩たちのせいにできないもんな」


「二人とももういいから!落ち着いてよっ!」


間に挟まれてオロオロしていた佐々井の声に二人とも黙る。そのまま、なにも言わずに部屋を出た。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

ひとりぼっちの180日

あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。 何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。 篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。 二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。 いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。 ▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。 ▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。 ▷ 攻めはスポーツマン。 ▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。 ▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

処理中です...