68 / 68
第六章 これからの私たち
エピローグ
しおりを挟む
「俺も飲むーー!!」
「俺も俺もーーーー!!」
シドとタッグも名乗りを上げ、さっそく皿に盛りつけた。
「うめぇ、うめぇよ、最高だ」
「ああ、これぞ、女神の味」
感動しながらもスープを飲み干してくれた。クロード船長がスッと近寄る。
「お前ら、勝手に始めてるんじゃねぇ!! まずはグレンの話を聞け!!」
軽く怒られていたので笑ってしまった。
グレンはグラスを手に取り周囲を見回すと、声を張り上げた。
「今回の航海が無事に終わり、とても嬉しく思う。皆、よく無事に戻ってきてくれた」
大きな歓声が上がる。
グレンが口を開くと場が引きしまる。持って生まれた彼の魅力の一つだろう。
「加えて、俺の妻ルシナが世話になった。その礼と、皆をねぎらうためもあり、この場をもうけた」
グレンの挨拶を皮切りに、ビールの樽が運ばれてきた。
「酒もたっぷり用意した。妻のルシナも料理をふるまう。皆、今日は好きに楽しんでくれ!!」
手を叩き、一気に盛り上がる船員たち。
やっぱりお酒が一番嬉しいのかしら。
皆の喜ぶ顔を見て微笑んでいると、クロード船長がボソッとつぶやく。
「俺の妻、俺の妻って連呼しすぎだろう」
クロード船長の突っ込みに思わず笑ってしまった。クロード船長は私の顔を見てニヤッと笑う。
「どうやら、俺のアドバイスは効いたみたいだな」
「はい、おかげさまでありがとうございます」
クロード船長が素直になって話をすることが大事だと気づかせてくれた。
「良かったな」
浅黒い肌にフッと見せた微笑みは、大人の余裕を感じさせる。
私もつられて微笑んでいると、グレンが近づいてきた。
「おっ、きたな」
クロード船長が楽しそうに片眉を上げた。グレンはクロード船長をジロリとにらむ。
「そんな顔するなって」
両手をヒラヒラさせ、グレンをからかって楽しんでいるのだろう。
二人は昔からの知り合いみたいだけど、いつか二人が仲良くなったいきさつを聞いてみたいな。
「じゃあ、俺はあいつらと飲むか!」
クロード船長はグラスを片手に盛り上がっている場へ向かう。グレンは隣にきて、そっと私の肩を抱いた。
「楽しんでいるか?」
「ええ、とっても!!」
皆が楽しんでいる雰囲気を肌で感じることができて、とても嬉しい。
「スープも好評みたいで、皆が喜んでくれたし、良かったわ」
「そうか。ルシナが嬉しいなら、俺も嬉しい」
微笑むグレンの笑顔がまぶしくて、ドキッとしてしまう。
「今日で感じたのだけど、このお店、今はスイーツがメインだけど、船員の人たちも気軽に寄れるお店にしたいな、って思ったの」
私の申し出にグレンは片眉を上げた。
「陸に戻ってきた彼らに、美味しい食べ物を提供したいと思って。それでね、スープを定番メニューにしたいかも!」
アルベール家にいた頃、父の事業が失敗し、賃金が払えずに料理人を解雇せざる得なくなった時がある。その少しの期間、料理をしていた。その経験が役立っているなんて、不思議な気持ちだ。
でも人生に無駄なことはないのだと、身をもって感じている。そう、私の経験は無駄ではなかったのだ。
すべてグレンと出会ってからいいように導かれている。
「本当は経営を学ぶために任せたのだが、ここはルシナの店だ。好きにするがいい」
「本当?」
嬉しくなり、微笑んだ。
「私もたまに店に出るし、メニューも考案するわ」
グレンはカウンターによりかかり、少し考え込む表情を見せる。渋っているのかしら?
「店もいいけど、俺のことも忘れないでくれよ」
少しすねた表情を見せたグレンに驚くも、笑いがこみあげた。
「忘れるわけがないじゃない。あなたは私のーー」
恥ずかしくてちょっと戸惑うが、勇気を出して口にする。
「大事な旦那さまなんだから」
グレンはあっけに取られるも声を出して笑う。
「かなわないな、ルシナには」
そっと手を取られ、ギュッと握りしめられた。
「ありがとう、グレン」
「礼を言うのはこっちのほうだ」
改めて礼を言うのはくすぐったいけれど、素直になって口にするのはいいことだ。今回の経験を通して学んだことだ。
「ほら、お前ら。二人の世界に入ってないで!! こっちにこいよ!!」
クロード船長が振り返り、手招きする。
グレンは呆れたようにため息をつくと、私の手を引っ張った。
「行くか」
「ええ」
この先もずっとそばにいてね、グレン。
繋がれた手に願いを込めて、強く握りしめた。
****** Happy End ******
「俺も俺もーーーー!!」
シドとタッグも名乗りを上げ、さっそく皿に盛りつけた。
「うめぇ、うめぇよ、最高だ」
「ああ、これぞ、女神の味」
感動しながらもスープを飲み干してくれた。クロード船長がスッと近寄る。
「お前ら、勝手に始めてるんじゃねぇ!! まずはグレンの話を聞け!!」
軽く怒られていたので笑ってしまった。
グレンはグラスを手に取り周囲を見回すと、声を張り上げた。
「今回の航海が無事に終わり、とても嬉しく思う。皆、よく無事に戻ってきてくれた」
大きな歓声が上がる。
グレンが口を開くと場が引きしまる。持って生まれた彼の魅力の一つだろう。
「加えて、俺の妻ルシナが世話になった。その礼と、皆をねぎらうためもあり、この場をもうけた」
グレンの挨拶を皮切りに、ビールの樽が運ばれてきた。
「酒もたっぷり用意した。妻のルシナも料理をふるまう。皆、今日は好きに楽しんでくれ!!」
手を叩き、一気に盛り上がる船員たち。
やっぱりお酒が一番嬉しいのかしら。
皆の喜ぶ顔を見て微笑んでいると、クロード船長がボソッとつぶやく。
「俺の妻、俺の妻って連呼しすぎだろう」
クロード船長の突っ込みに思わず笑ってしまった。クロード船長は私の顔を見てニヤッと笑う。
「どうやら、俺のアドバイスは効いたみたいだな」
「はい、おかげさまでありがとうございます」
クロード船長が素直になって話をすることが大事だと気づかせてくれた。
「良かったな」
浅黒い肌にフッと見せた微笑みは、大人の余裕を感じさせる。
私もつられて微笑んでいると、グレンが近づいてきた。
「おっ、きたな」
クロード船長が楽しそうに片眉を上げた。グレンはクロード船長をジロリとにらむ。
「そんな顔するなって」
両手をヒラヒラさせ、グレンをからかって楽しんでいるのだろう。
二人は昔からの知り合いみたいだけど、いつか二人が仲良くなったいきさつを聞いてみたいな。
「じゃあ、俺はあいつらと飲むか!」
クロード船長はグラスを片手に盛り上がっている場へ向かう。グレンは隣にきて、そっと私の肩を抱いた。
「楽しんでいるか?」
「ええ、とっても!!」
皆が楽しんでいる雰囲気を肌で感じることができて、とても嬉しい。
「スープも好評みたいで、皆が喜んでくれたし、良かったわ」
「そうか。ルシナが嬉しいなら、俺も嬉しい」
微笑むグレンの笑顔がまぶしくて、ドキッとしてしまう。
「今日で感じたのだけど、このお店、今はスイーツがメインだけど、船員の人たちも気軽に寄れるお店にしたいな、って思ったの」
私の申し出にグレンは片眉を上げた。
「陸に戻ってきた彼らに、美味しい食べ物を提供したいと思って。それでね、スープを定番メニューにしたいかも!」
アルベール家にいた頃、父の事業が失敗し、賃金が払えずに料理人を解雇せざる得なくなった時がある。その少しの期間、料理をしていた。その経験が役立っているなんて、不思議な気持ちだ。
でも人生に無駄なことはないのだと、身をもって感じている。そう、私の経験は無駄ではなかったのだ。
すべてグレンと出会ってからいいように導かれている。
「本当は経営を学ぶために任せたのだが、ここはルシナの店だ。好きにするがいい」
「本当?」
嬉しくなり、微笑んだ。
「私もたまに店に出るし、メニューも考案するわ」
グレンはカウンターによりかかり、少し考え込む表情を見せる。渋っているのかしら?
「店もいいけど、俺のことも忘れないでくれよ」
少しすねた表情を見せたグレンに驚くも、笑いがこみあげた。
「忘れるわけがないじゃない。あなたは私のーー」
恥ずかしくてちょっと戸惑うが、勇気を出して口にする。
「大事な旦那さまなんだから」
グレンはあっけに取られるも声を出して笑う。
「かなわないな、ルシナには」
そっと手を取られ、ギュッと握りしめられた。
「ありがとう、グレン」
「礼を言うのはこっちのほうだ」
改めて礼を言うのはくすぐったいけれど、素直になって口にするのはいいことだ。今回の経験を通して学んだことだ。
「ほら、お前ら。二人の世界に入ってないで!! こっちにこいよ!!」
クロード船長が振り返り、手招きする。
グレンは呆れたようにため息をつくと、私の手を引っ張った。
「行くか」
「ええ」
この先もずっとそばにいてね、グレン。
繋がれた手に願いを込めて、強く握りしめた。
****** Happy End ******
2,180
お気に入りに追加
4,821
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(17件)
あなたにおすすめの小説
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
婚約破棄が流行しているようなので便乗して殿下に申し上げてみましたがなぜか却下されました
SORA
恋愛
公爵令嬢のフレア・カートリはマルクス王国の王太子であるマルク・レオナドルフとの婚約が決まっていた。
最近国内ではとある演劇が上演された後から婚約破棄が流行している。今まで泣き寝入りして婚約していた若者たちが次々と婚約破棄し始めていた。そんな話を聞いたフレアは、自分もこの流れに沿って婚約破棄しようとマルクに婚約破棄を申し出たのだけれど……
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
冷遇された王妃は自由を望む
空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。
流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。
異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。
夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。
そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。
自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。
[もう、彼に私は必要ないんだ]と
数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。
貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結おめでとうございます。㊗️💐🎊
グレンの過去がすごかった。😱
本編完結おめでとう御座います
そしてお疲れ様でした
グレンが報われて、ラブラブできるようになって良かったです
妹と元婚約者が本当にかなり気持ち悪かったので、番外編があるならしっかりくっきりギャフンとなってるとこみたいです
素敵な話をありがとうございました
完結おめでとうございます!
途中ハラハラ致しましたが、熱愛夫婦の出来上がりで、ホッとしました。
グレンのストレートな愛情にグッと来ましたわ♪
面白い物語を有難うございました。