46 / 78
破章の弐 We're Wrong about the World
46ターン目/神鳥撃剣
しおりを挟む
◆◆◆
それはまるで天災のようだった。
白き蛇龍となった龍王姫シャロンの暴れっぷりは大地を震撼させる。
幾多もの属性魔法攻撃。地上に降り注ぐ自然エネルギー。それはさながら戦艦による大規模爆撃のようだった。
対して、勇者タローは莫大な魔力を常時出力。ロケットエンジンを連想させるような推進力で高速飛行を行い、空爆を受ける龍王寺の城下町を縦横無尽に駆け回る。
(不思議だ―――)
タローは随想する。
(世界が物凄く鮮明に感じる―――)
勇者は今、過剰集中に突入していた。
限界突破。これまでの魔力出力の上限を大幅に超過した現在の状態はタローの精神に並々ならぬ静寂と沈着を与えていた。
(万物が手に取るように理解る……!)
思考の超加速。【全数値化】による拡張された視覚情報。五感で感じる戦場の空気。これら二つの要因により研ぎ澄まされた第六感。
それらが統合された結果、未来予知と言っても過言ではない戦闘演算がタローの視覚内で瞬時に仮想される。
分泌される脳内麻薬は万能感と高揚感を刺激。
その快感のままに、これまで研鑽してきた経験則と天性の超運動神経をフル稼動。
戦闘演算に沿う形で、勇者は龍王姫の攻撃を悉く回避。あるいは迎撃を行っていく。
(………魔法による大規模爆撃。まるで“灰色の大賢者”のようだ)
高速戦闘。
勇者は【魔力無効化】を纏った剣撃で爆撃を破砕していく一方、その合間を縫って先程同様、杜撰で無骨で出鱈目な魔力量を、巨大な魔法剣として無理矢理出力。
それを振り回して攻撃を仕掛けようと企むが、飛行戦に慣れた龍王姫がやはり有利。上手く斬撃の軌道を優雅に躱し、接近してくる。
タローは再び、出力した魔法剣の魔力を防御壁として自身の周囲へと移動させ、属性変換。
今度は大質量の水へと変容させる。
それが重力に負け、焼けた龍王寺に滝のような大雨が降り注ぐ。
「!!?」
水の防壁を突破しようとそのまま飛び込んだ龍王姫だったが、爆心地は水の量があまりにも多く、過密。
いわば宙に舞う小さな湖だった。
龍王姫は、一瞬だけ視界と速度を奪われる。
その隙を、勇者は見逃す筈もなかった。
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
【虹色の剣】発動!
勇者、急速接近。
空の湖諸共、龍王姫を叩き斬る。
「ーーーーーーーーッッ」
声にならない悲鳴。しかし、勇者に容赦はなかった。
初撃を皮切りに彼女の肉体をなぞるようにひたすら連続攻撃を振り回しながら、疾駆する。
多様な属性、多彩な色彩が鮮やかに飛沫しながら、澄み渡る青空と白い蛇龍を塗り潰していく。
やがて、彼女の頭部まで突き抜けた勇者は剣を鞘に収め、両手を構える。
●【専用魔法】×【必殺技】×【敵単体】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
「神鳥撃!」
刹那、黄金の鳳凰が放たれる。
勇者最大火力を真正面から諸に受け、龍王姫の体感と意識は数秒間、弾き飛ばされる。
しかし、すぐさま帰還。
目覚めと共に全身の激痛と倦怠感に苦悶の吐息と少しでも気を紛らわせようと身を捩らせるも、ここが戦場だという認識をすぐさま取り戻し、周囲を警戒する。
現在地は、地上。
どうやら撃ち落とされたようだ。
そして戦闘中の敵影/勇者タローは、
今、真正面に立っている。
●【専用魔法】×【必殺技】×【敵単体】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
「神鳥………」
逆手に握られた長剣で構えを取るタロー。
それは魔法剣。属性付与するのは必殺の【神鳥撃】。
黄金の奔流が勇者の全身から発露。
そして、タローは走り出す。
眼前の敵へと向かっていく。
不味い。龍王姫の本能が叫ぶ。
勇者の次の攻撃は絶対に止めなくてはならない。
最早反射神経だけで、彼女は無我夢中に思念言語を唱える。
▼【炎魔法】竜の息吹き 成功!
●龍王姫は 呪文を唱えた!
「…………撃剣ッッ!!!」
勇者、咆哮。
黄金の輝きを伴った斬撃を一閃。
鳳凰を纏った剣は、まるで飛翔するかのように紅蓮の炎を穿つ。
道は切り開かれ、そしてその刃が白い蛇龍へ到達する。
「……………あっ」
龍王姫は、すべてを悟る。
敗北。これまで積み上げてきた何かが崩れ落ちる音がした。
それは地位や名誉などの生来の虚飾ではなく、彼女自身が欲した心の安寧。
エルザ姫とのこれまでの日々と、そして必定としていたこれからの日々。
それらが奪われ、喪失していく音である。
一筋の涙と共に、龍の少女シャロンは光に飲まれた。
それはまるで天災のようだった。
白き蛇龍となった龍王姫シャロンの暴れっぷりは大地を震撼させる。
幾多もの属性魔法攻撃。地上に降り注ぐ自然エネルギー。それはさながら戦艦による大規模爆撃のようだった。
対して、勇者タローは莫大な魔力を常時出力。ロケットエンジンを連想させるような推進力で高速飛行を行い、空爆を受ける龍王寺の城下町を縦横無尽に駆け回る。
(不思議だ―――)
タローは随想する。
(世界が物凄く鮮明に感じる―――)
勇者は今、過剰集中に突入していた。
限界突破。これまでの魔力出力の上限を大幅に超過した現在の状態はタローの精神に並々ならぬ静寂と沈着を与えていた。
(万物が手に取るように理解る……!)
思考の超加速。【全数値化】による拡張された視覚情報。五感で感じる戦場の空気。これら二つの要因により研ぎ澄まされた第六感。
それらが統合された結果、未来予知と言っても過言ではない戦闘演算がタローの視覚内で瞬時に仮想される。
分泌される脳内麻薬は万能感と高揚感を刺激。
その快感のままに、これまで研鑽してきた経験則と天性の超運動神経をフル稼動。
戦闘演算に沿う形で、勇者は龍王姫の攻撃を悉く回避。あるいは迎撃を行っていく。
(………魔法による大規模爆撃。まるで“灰色の大賢者”のようだ)
高速戦闘。
勇者は【魔力無効化】を纏った剣撃で爆撃を破砕していく一方、その合間を縫って先程同様、杜撰で無骨で出鱈目な魔力量を、巨大な魔法剣として無理矢理出力。
それを振り回して攻撃を仕掛けようと企むが、飛行戦に慣れた龍王姫がやはり有利。上手く斬撃の軌道を優雅に躱し、接近してくる。
タローは再び、出力した魔法剣の魔力を防御壁として自身の周囲へと移動させ、属性変換。
今度は大質量の水へと変容させる。
それが重力に負け、焼けた龍王寺に滝のような大雨が降り注ぐ。
「!!?」
水の防壁を突破しようとそのまま飛び込んだ龍王姫だったが、爆心地は水の量があまりにも多く、過密。
いわば宙に舞う小さな湖だった。
龍王姫は、一瞬だけ視界と速度を奪われる。
その隙を、勇者は見逃す筈もなかった。
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
【虹色の剣】発動!
勇者、急速接近。
空の湖諸共、龍王姫を叩き斬る。
「ーーーーーーーーッッ」
声にならない悲鳴。しかし、勇者に容赦はなかった。
初撃を皮切りに彼女の肉体をなぞるようにひたすら連続攻撃を振り回しながら、疾駆する。
多様な属性、多彩な色彩が鮮やかに飛沫しながら、澄み渡る青空と白い蛇龍を塗り潰していく。
やがて、彼女の頭部まで突き抜けた勇者は剣を鞘に収め、両手を構える。
●【専用魔法】×【必殺技】×【敵単体】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
「神鳥撃!」
刹那、黄金の鳳凰が放たれる。
勇者最大火力を真正面から諸に受け、龍王姫の体感と意識は数秒間、弾き飛ばされる。
しかし、すぐさま帰還。
目覚めと共に全身の激痛と倦怠感に苦悶の吐息と少しでも気を紛らわせようと身を捩らせるも、ここが戦場だという認識をすぐさま取り戻し、周囲を警戒する。
現在地は、地上。
どうやら撃ち落とされたようだ。
そして戦闘中の敵影/勇者タローは、
今、真正面に立っている。
●【専用魔法】×【必殺技】×【敵単体】
▼勇者は 呪文を唱えた!【成功】
「神鳥………」
逆手に握られた長剣で構えを取るタロー。
それは魔法剣。属性付与するのは必殺の【神鳥撃】。
黄金の奔流が勇者の全身から発露。
そして、タローは走り出す。
眼前の敵へと向かっていく。
不味い。龍王姫の本能が叫ぶ。
勇者の次の攻撃は絶対に止めなくてはならない。
最早反射神経だけで、彼女は無我夢中に思念言語を唱える。
▼【炎魔法】竜の息吹き 成功!
●龍王姫は 呪文を唱えた!
「…………撃剣ッッ!!!」
勇者、咆哮。
黄金の輝きを伴った斬撃を一閃。
鳳凰を纏った剣は、まるで飛翔するかのように紅蓮の炎を穿つ。
道は切り開かれ、そしてその刃が白い蛇龍へ到達する。
「……………あっ」
龍王姫は、すべてを悟る。
敗北。これまで積み上げてきた何かが崩れ落ちる音がした。
それは地位や名誉などの生来の虚飾ではなく、彼女自身が欲した心の安寧。
エルザ姫とのこれまでの日々と、そして必定としていたこれからの日々。
それらが奪われ、喪失していく音である。
一筋の涙と共に、龍の少女シャロンは光に飲まれた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
最強執事の恩返し~大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。恩返しのため復興させます~
榊与一
ファンタジー
異世界転生した日本人、大和猛(やまとたける)。
彼は異世界エデンで、コーガス侯爵家によって拾われタケル・コーガスとして育てられる。
それまでの孤独な人生で何も持つ事の出来なかった彼にとって、コーガス家は生まれて初めて手に入れた家であり家族だった。
その家を守るために転生時のチート能力で魔王を退け。
そしてその裏にいる大魔王を倒すため、タケルは魔界に乗り込んだ。
――それから100年。
遂にタケルは大魔王を討伐する事に成功する。
そして彼はエデンへと帰還した。
「さあ、帰ろう」
だが余りに時間が立ちすぎていた為に、タケルの事を覚えている者はいない。
それでも彼は満足していた。
何故なら、コーガス家を守れたからだ。
そう思っていたのだが……
「コーガス家が没落!?そんな馬鹿な!?」
これは世界を救った勇者が、かつて自分を拾い温かく育ててくれた没落した侯爵家をチートな能力で再興させる物語である。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう
サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」
万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。
地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。
これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。
彼女なしの独身に平凡な年収。
これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。
2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。
「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」
誕生日を迎えた夜。
突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。
「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」
女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。
しかし、降り立って彼はすぐに気づく。
女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。
これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる