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破章の弐 We're Wrong about the World
40ターン目/龍王姫の目的
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「お待ちしておりました、魔王様。
―――そして、勇者よ」
凛とした佇まいで、龍王姫シャロンが対峙する。
勇者と魔王は、龍王寺最上階へ辿り着く。
四精霊撃破後も尚、
様々な魔物たちが相対したものの、
最早この二人に太刀打ちできる者などいるハズもなく、怒涛のスピードで現在に至る。
「タロー!!」
【解放戦線】代表/エルザ姫が叫ぶ。
その表情は安堵により、緩やかに綻んでいく。
「エルザ姫、ご無事で!!?」
タローもまた焦燥の中であれ、思わず笑顔が溢れる。
二人が最後に逢ったのは、
魔王軍との最終決戦。魔王城の戦い。
実に3年ぶりの再会だった。
そんな二人の間に割って入るように、
龍王姫がエルザ姫の前に出る。
「アンタが、龍王姫―――」
勇者の言葉に、しかし龍王姫は答えない。
返答の換わりに、憎悪を込めた視線が向けられる。
「久しいな、龍王姫シャロン」
彼女の名を、魔王が呼ぶ。
「【解放戦線】代表/エリザベス=ペンドラゴンを返してもらうぞ」
「それはできません」
しっとりとした声色が、その要求を拒む。
「彼女にはここに居てもらいます」
「何故だ?」
魔王は質問する。
「エリザベス代表を匿うことに、正直貴様にメリットがあるとは思わん。
だが此度の騒動。まるで意図が詠めん。
【株式会社ダークネス】に寝返ったわけでもなく、かといって【同盟軍】に何か要求するワケでもない。
龍王姫。貴様の目的は一体なんだ?」
その言葉に龍王姫は、静かに答える。
「………妾が欲しいのは、安寧」
「安寧?」
勇者が不思議そうに問いかける。
「そう、心のね……」
龍王姫の言葉に、勇者と魔王は不可解そうに顔を合わせる。
話の落とし処がまるで見えない。
「妾は、【龍王信仰】における生ける伝説。故に、欲しいものはすべて簡単に手に入れることができた」
【龍王信仰】は、
この世界の3大宗教のひとつである。
無論、それだけの規模であるからにはここエリア・ウパニシャットだけでなく、元神州大和、元方天画戟などでも信仰されており、信者数は4億人程度と推測されている。
宗教とは、いわば超国家。
ひとつの思想に基づいた民族や旧国家を越えたコミュニティネットワーク。
龍王の孫娘とは、
すなわち龍王信仰という超国家の元首に値する。
「それ故に、妾はいつも孤独だった」
というよりも、孤高と表現するべきだろうか。
信者からの羨望の眼差し。
そこまで神格化されれば当然外部の人間も無下にはできず、必然的に誰しもが等身大の彼女を決して見ようとはしない。
人は誰しもがつまらない実態ではなく、
華やかな建前に目を向ける。
大衆が抱く龍王姫という偶像は、シャロンという一人の女の存在証明を精神衛生上、曇らせていた。
それも運命。
龍王姫シャロンは己が運命を悲嘆しながらも、諦めていた。
「けれども、彼女と出逢って変わったわ」
龍王姫は、その瞳にエルザ姫を写す。
エリザベス=ペンドラゴン。
元ペンドラゴン王国の姫君にして、現在は【解放戦線】の代表。
かつては【救国の聖女】と呼ばれ、
現在は異世界転生者ブラックと共に社会規範を構築した手腕から【創世の女神】と謳われる伝説的存在。
彼女もまた、精神的あるいは文化的規範に基づいた超国家の元首といえよう。
故に、
何かと共有できる部分が多く、
二人はいつしか互いの理解者となり、
対等な関係へと発展していった。
はじめは政治上の付き合いであり、龍王姫も暇つぶし程度にしか考えていなかった。
しかし、時間の経過と共に彼女の中でエリザベス=ペンドラゴンという存在は日に日に大きくなっていき、やがてかけがえのないものへと変容していった。
「妾は、彼女を愛している」
龍王姫、断言!
「故に、これより妾はエリザベス=ペンドラゴンと巣籠もりに入り、子作りに励む」
「――――へっ?」
勇者タローは思わず、マヌケな声を漏らした。
超展開。話の方向が何やら思わぬ方向に舵を切り出した。作者もビックリである。
―――そして、勇者よ」
凛とした佇まいで、龍王姫シャロンが対峙する。
勇者と魔王は、龍王寺最上階へ辿り着く。
四精霊撃破後も尚、
様々な魔物たちが相対したものの、
最早この二人に太刀打ちできる者などいるハズもなく、怒涛のスピードで現在に至る。
「タロー!!」
【解放戦線】代表/エルザ姫が叫ぶ。
その表情は安堵により、緩やかに綻んでいく。
「エルザ姫、ご無事で!!?」
タローもまた焦燥の中であれ、思わず笑顔が溢れる。
二人が最後に逢ったのは、
魔王軍との最終決戦。魔王城の戦い。
実に3年ぶりの再会だった。
そんな二人の間に割って入るように、
龍王姫がエルザ姫の前に出る。
「アンタが、龍王姫―――」
勇者の言葉に、しかし龍王姫は答えない。
返答の換わりに、憎悪を込めた視線が向けられる。
「久しいな、龍王姫シャロン」
彼女の名を、魔王が呼ぶ。
「【解放戦線】代表/エリザベス=ペンドラゴンを返してもらうぞ」
「それはできません」
しっとりとした声色が、その要求を拒む。
「彼女にはここに居てもらいます」
「何故だ?」
魔王は質問する。
「エリザベス代表を匿うことに、正直貴様にメリットがあるとは思わん。
だが此度の騒動。まるで意図が詠めん。
【株式会社ダークネス】に寝返ったわけでもなく、かといって【同盟軍】に何か要求するワケでもない。
龍王姫。貴様の目的は一体なんだ?」
その言葉に龍王姫は、静かに答える。
「………妾が欲しいのは、安寧」
「安寧?」
勇者が不思議そうに問いかける。
「そう、心のね……」
龍王姫の言葉に、勇者と魔王は不可解そうに顔を合わせる。
話の落とし処がまるで見えない。
「妾は、【龍王信仰】における生ける伝説。故に、欲しいものはすべて簡単に手に入れることができた」
【龍王信仰】は、
この世界の3大宗教のひとつである。
無論、それだけの規模であるからにはここエリア・ウパニシャットだけでなく、元神州大和、元方天画戟などでも信仰されており、信者数は4億人程度と推測されている。
宗教とは、いわば超国家。
ひとつの思想に基づいた民族や旧国家を越えたコミュニティネットワーク。
龍王の孫娘とは、
すなわち龍王信仰という超国家の元首に値する。
「それ故に、妾はいつも孤独だった」
というよりも、孤高と表現するべきだろうか。
信者からの羨望の眼差し。
そこまで神格化されれば当然外部の人間も無下にはできず、必然的に誰しもが等身大の彼女を決して見ようとはしない。
人は誰しもがつまらない実態ではなく、
華やかな建前に目を向ける。
大衆が抱く龍王姫という偶像は、シャロンという一人の女の存在証明を精神衛生上、曇らせていた。
それも運命。
龍王姫シャロンは己が運命を悲嘆しながらも、諦めていた。
「けれども、彼女と出逢って変わったわ」
龍王姫は、その瞳にエルザ姫を写す。
エリザベス=ペンドラゴン。
元ペンドラゴン王国の姫君にして、現在は【解放戦線】の代表。
かつては【救国の聖女】と呼ばれ、
現在は異世界転生者ブラックと共に社会規範を構築した手腕から【創世の女神】と謳われる伝説的存在。
彼女もまた、精神的あるいは文化的規範に基づいた超国家の元首といえよう。
故に、
何かと共有できる部分が多く、
二人はいつしか互いの理解者となり、
対等な関係へと発展していった。
はじめは政治上の付き合いであり、龍王姫も暇つぶし程度にしか考えていなかった。
しかし、時間の経過と共に彼女の中でエリザベス=ペンドラゴンという存在は日に日に大きくなっていき、やがてかけがえのないものへと変容していった。
「妾は、彼女を愛している」
龍王姫、断言!
「故に、これより妾はエリザベス=ペンドラゴンと巣籠もりに入り、子作りに励む」
「――――へっ?」
勇者タローは思わず、マヌケな声を漏らした。
超展開。話の方向が何やら思わぬ方向に舵を切り出した。作者もビックリである。
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