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破章の弐 We're Wrong about the World
34ターン目/龍王寺
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龍王姫。
かつての龍王ザハーカの孫娘。
彼女は、強大な魔族の一人でありながら【魔王軍】には所属せず、かといって【株式会社ダークネス】の傘下にも入らず、独自の勢力圏をここエリア・ウパニシャットに構築していた。
いわばここは、中立地区であり治外法権。
故に、エルザ姫もといエリザベス代表を隠すには絶好のシチュエーションである。
【同盟軍】は、というよりも魔王イスカリオテが、かつての縁故を頼りに龍王姫と謁見。
交渉を行うことで、エルザ姫をしばらく匿って貰えることに成功した。
しかし数週間前から、
突如として、そのエルザ姫は勿論、龍王姫とも連絡が取れなくなっていた。
「【解放戦線】の情報筋じゃあ、ここウパニシャットの【強制解決】等【株式会社ダークネス】傘下の組織に主だった動きはないようだ。
つまり、龍王姫側でなにかアクションを起こしている可能性が高い」
魔王は神妙な面持ちで見解を述べる。
「裏切りの可能性があるってこと?」
勇者もまた一抹の不安を問う。
「然様。ぶっちゃけ、エリザベス代表を匿うことに龍王姫になんらメリットはないからな。
無論、たまたま何かしらのアクシデントに見回れている可能性もあらずだが、ヤツのキャラクター的に考えづらい」
魔王は思案しながら、話を続ける。
「龍王姫は何事もそつなくこなす傑物だからな。ヤツにその気があれば、何かしら連絡手段を講じるはずだ」
「その真意を確かめるため、僕たちが派遣されたってワケだけど」
タローはここに出立するまでのことを思い出す。
魔王と勇者。二人での任務。
【同盟軍】内部、【魔王軍】ならびに【解放戦線】。双方から反対意見が殺到する中、しかし魔王はそれらを一蹴。
タローもまた、魔王の意見に賛同し、最後まで皆が引き留める中、現在に至る。
周囲の意見は至極当然のものであり、理解はできる。
しかし、集団で動けば【株式会社ダークネス】側に察知される恐れがある他、龍王姫側をも刺激しかねない。
ましてや龍王姫は、【同盟軍】にしてみればVIPの一人である。
単騎でそれなりの戦力を保有し、かつ相手の位階に礼節を合わせるのであれば、やはり旗印である魔王や勇者となるだろう。
無論、それならば魔王ひとりでも事足りるのだが、それをタローが許すはずもなかった。
勇者はいまだにお姫様のことを、
病的なまでに愛しているのだ。
「事は政治も絡む。少数精鋭。必要最低限の戦力として、これほど強度の高い部隊編成も中々あるまい」
ふと魔王は楽しそうに笑った。
「フハハハ、まさか勇者とバディを組むことになろうとは。人生わからんもんだな―――」
◆◆◆
塔の名は、龍王寺。
かつての龍王ザハーカの根城にして、聖域。
龍王信仰が根強いウパニシャットにとって、龍王姫はまさに現人神そのもの。
かつ龍王姫自身、その逆鱗に触れることさえなければ性格的にはおとなしく、人畜無害であるため、現地住民たちは彼女に対しての信仰をより一層厚くしており、結果として彼女に様々な恩恵を与えることとなった。
「信者たちは、龍王姫に様々な貢ぎ物を捧げた。食料や金品、土地に従者。無論、国の有力者たちにもフォロワーは多い」
先導する魔王が丁寧に説明する。
「その結果が増改築を繰り返したこの“違法建築の塔”と、こいつら“死霊系モンスター”ってワケね」
一方、呆れた様子で勇者は前方にジト目を向ける。
勇者と魔王は、
渓谷を降り、湖を渡って、
龍王寺の麓にある、いわば廃墟となった城下町に訪れていた。
待ち構えているのは、【木乃伊】となった僧兵たち。
様々な近接武器。弓やクロスボウ。
そして、仏具のような形状をした魔法道具。
その干からびた昏い眼差しが、侵入者である魔王と勇者に向けられる。
かつての龍王ザハーカの孫娘。
彼女は、強大な魔族の一人でありながら【魔王軍】には所属せず、かといって【株式会社ダークネス】の傘下にも入らず、独自の勢力圏をここエリア・ウパニシャットに構築していた。
いわばここは、中立地区であり治外法権。
故に、エルザ姫もといエリザベス代表を隠すには絶好のシチュエーションである。
【同盟軍】は、というよりも魔王イスカリオテが、かつての縁故を頼りに龍王姫と謁見。
交渉を行うことで、エルザ姫をしばらく匿って貰えることに成功した。
しかし数週間前から、
突如として、そのエルザ姫は勿論、龍王姫とも連絡が取れなくなっていた。
「【解放戦線】の情報筋じゃあ、ここウパニシャットの【強制解決】等【株式会社ダークネス】傘下の組織に主だった動きはないようだ。
つまり、龍王姫側でなにかアクションを起こしている可能性が高い」
魔王は神妙な面持ちで見解を述べる。
「裏切りの可能性があるってこと?」
勇者もまた一抹の不安を問う。
「然様。ぶっちゃけ、エリザベス代表を匿うことに龍王姫になんらメリットはないからな。
無論、たまたま何かしらのアクシデントに見回れている可能性もあらずだが、ヤツのキャラクター的に考えづらい」
魔王は思案しながら、話を続ける。
「龍王姫は何事もそつなくこなす傑物だからな。ヤツにその気があれば、何かしら連絡手段を講じるはずだ」
「その真意を確かめるため、僕たちが派遣されたってワケだけど」
タローはここに出立するまでのことを思い出す。
魔王と勇者。二人での任務。
【同盟軍】内部、【魔王軍】ならびに【解放戦線】。双方から反対意見が殺到する中、しかし魔王はそれらを一蹴。
タローもまた、魔王の意見に賛同し、最後まで皆が引き留める中、現在に至る。
周囲の意見は至極当然のものであり、理解はできる。
しかし、集団で動けば【株式会社ダークネス】側に察知される恐れがある他、龍王姫側をも刺激しかねない。
ましてや龍王姫は、【同盟軍】にしてみればVIPの一人である。
単騎でそれなりの戦力を保有し、かつ相手の位階に礼節を合わせるのであれば、やはり旗印である魔王や勇者となるだろう。
無論、それならば魔王ひとりでも事足りるのだが、それをタローが許すはずもなかった。
勇者はいまだにお姫様のことを、
病的なまでに愛しているのだ。
「事は政治も絡む。少数精鋭。必要最低限の戦力として、これほど強度の高い部隊編成も中々あるまい」
ふと魔王は楽しそうに笑った。
「フハハハ、まさか勇者とバディを組むことになろうとは。人生わからんもんだな―――」
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かつての龍王ザハーカの根城にして、聖域。
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かつ龍王姫自身、その逆鱗に触れることさえなければ性格的にはおとなしく、人畜無害であるため、現地住民たちは彼女に対しての信仰をより一層厚くしており、結果として彼女に様々な恩恵を与えることとなった。
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