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破章の壱 How to Stop Worrying and Start Living
30ターン目/我輩は我輩なり
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「おいおい、どないなっとんねんこりゃ……」
合流したハッカイが戦慄する。
元騎士団長たちを処刑して、エルザ姫たちのもとへ駆けつけてみれば、部隊が全滅しているではないか。
漂う戦闘の残滓。
破壊されたスノーバイクの残骸と散らばる金属片。破砕された針葉樹の数々。抉られて露となった地表。雪の大地に転がされた狼人間をはじめ、スノーゴブリンたちの亡骸。
その中心に立つ、青い髪の男。
「おまえ、何者や?」
怪訝そうにハッカイが問い掛ける。
「魔王……イスカリオテ!」
臆すことなく堂々と応える魔王は、謎にドヤ顔。
その応答に、グリフィンとエルザ姫はさらなる驚愕の表情を露にする。
「魔王だって!?」
かつての敵の総大将。事実はどうあれ、突如現れた助っ人がその名を口にしたことで、グリフィンはさらなる困惑を募らせる。
「然様。貴様のことは把握しているぞ、グリフィン=ゴドリック。
忌々しき勇者パーティーの一翼よ。
そして貴様もな、【死腐喰獣】の劉八戎」
嘲笑う魔王イスカリオテ。
そんな彼の態度に、ハッカイは眉を顰めた。
「ハッカイ!団長は………【解放戦線】はいったいどうしたのですか!?」
エルザ姫が叫ぶ。
その胸中ではすでに答えを得てはいるものの、しかしそれを信じたくないという愁いの心が彼女をそう突き動かした。
「ド阿保。………わいがここに居ることが、もう答えになっとるんちゃうんかいな。姫さん」
そんな彼女に、苛立ちを募らせて返答するハッカイ。彼の胸中もまた、複雑な感情が入り乱れる。
「で、なんや自分。魔王やて?」
その苛立ちを。
半ば八つ当たり気味に魔王を名乗る男へと向ける。
「然様。我輩が魔王である」
「他人様をバカにすんのも大概にせェよ」
「バカになどしておらん。我輩は我輩である」
「どう見ても人間やろがい」
「どんな姿であれ、我輩は我輩なり」
魔王、仁王立ち。
その態度は不遜であり、ハッカイが苛立てば苛立つほどに、嘲笑いを一層濃くしていく。
それを理解したハッカイは、ため息をひとつ。
「まぁええわ。どのみち敵には違いないんや」
「如何にも。我輩は貴様と相対する者。故あってエルザ姫の身柄は我輩が戴いてゆく」
「………それをわいが許すとでも思うてんのか? 」
ハッカイは今、精神を磨耗していた。
かつての仲間たちを手に掛けた感触と罪悪感が脳を蝕み、フラッシュバックする。
彼等の死を無意味なものにしないため、今日ここですべてを終わらせる。
そのために、
エルザ姫をここで殺さなくてはならない。
強迫観念が、ハッカイを駆り立てる。
「当然。我輩は魔王。すべての万物は、我輩の所有物。何を為すにも、我輩の許諾があれば万事解決」
「なら、吠え面かくなよ……」
刹那、ハッカイが動く。
「チンピラァァーーーーッッ!」
魔力の全身流動により、身体能力ならびに強度が爆発的に活性化。
その伸び代は、かつて魔剣公ヴァシレウス戦で勇者パーティーが使用した【全強化魔法集約】並みに上昇する。
その上、ハッカイは発勁の使い手。
つまり、一撃一撃の威力を十全に発揮させる達人だということだ。
文字通り、一撃必殺。
通常の生命体ならば立ち所に粉砕されてしまうだろう。
その拳が今、魔王を穿つ。
合流したハッカイが戦慄する。
元騎士団長たちを処刑して、エルザ姫たちのもとへ駆けつけてみれば、部隊が全滅しているではないか。
漂う戦闘の残滓。
破壊されたスノーバイクの残骸と散らばる金属片。破砕された針葉樹の数々。抉られて露となった地表。雪の大地に転がされた狼人間をはじめ、スノーゴブリンたちの亡骸。
その中心に立つ、青い髪の男。
「おまえ、何者や?」
怪訝そうにハッカイが問い掛ける。
「魔王……イスカリオテ!」
臆すことなく堂々と応える魔王は、謎にドヤ顔。
その応答に、グリフィンとエルザ姫はさらなる驚愕の表情を露にする。
「魔王だって!?」
かつての敵の総大将。事実はどうあれ、突如現れた助っ人がその名を口にしたことで、グリフィンはさらなる困惑を募らせる。
「然様。貴様のことは把握しているぞ、グリフィン=ゴドリック。
忌々しき勇者パーティーの一翼よ。
そして貴様もな、【死腐喰獣】の劉八戎」
嘲笑う魔王イスカリオテ。
そんな彼の態度に、ハッカイは眉を顰めた。
「ハッカイ!団長は………【解放戦線】はいったいどうしたのですか!?」
エルザ姫が叫ぶ。
その胸中ではすでに答えを得てはいるものの、しかしそれを信じたくないという愁いの心が彼女をそう突き動かした。
「ド阿保。………わいがここに居ることが、もう答えになっとるんちゃうんかいな。姫さん」
そんな彼女に、苛立ちを募らせて返答するハッカイ。彼の胸中もまた、複雑な感情が入り乱れる。
「で、なんや自分。魔王やて?」
その苛立ちを。
半ば八つ当たり気味に魔王を名乗る男へと向ける。
「然様。我輩が魔王である」
「他人様をバカにすんのも大概にせェよ」
「バカになどしておらん。我輩は我輩である」
「どう見ても人間やろがい」
「どんな姿であれ、我輩は我輩なり」
魔王、仁王立ち。
その態度は不遜であり、ハッカイが苛立てば苛立つほどに、嘲笑いを一層濃くしていく。
それを理解したハッカイは、ため息をひとつ。
「まぁええわ。どのみち敵には違いないんや」
「如何にも。我輩は貴様と相対する者。故あってエルザ姫の身柄は我輩が戴いてゆく」
「………それをわいが許すとでも思うてんのか? 」
ハッカイは今、精神を磨耗していた。
かつての仲間たちを手に掛けた感触と罪悪感が脳を蝕み、フラッシュバックする。
彼等の死を無意味なものにしないため、今日ここですべてを終わらせる。
そのために、
エルザ姫をここで殺さなくてはならない。
強迫観念が、ハッカイを駆り立てる。
「当然。我輩は魔王。すべての万物は、我輩の所有物。何を為すにも、我輩の許諾があれば万事解決」
「なら、吠え面かくなよ……」
刹那、ハッカイが動く。
「チンピラァァーーーーッッ!」
魔力の全身流動により、身体能力ならびに強度が爆発的に活性化。
その伸び代は、かつて魔剣公ヴァシレウス戦で勇者パーティーが使用した【全強化魔法集約】並みに上昇する。
その上、ハッカイは発勁の使い手。
つまり、一撃一撃の威力を十全に発揮させる達人だということだ。
文字通り、一撃必殺。
通常の生命体ならば立ち所に粉砕されてしまうだろう。
その拳が今、魔王を穿つ。
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