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第四章 全ての想いの行く末
13話 決着?
しおりを挟む「BOSS!!」
「ぐえっ!!」
突進してくるロノスを見たフレデリカは、イノチを突き飛ばして拳を構えた。
転がるイノチをよそに、フレデリカは真上から振り下ろされた剣に対して体を斜めに向けて半身でかわす。
その瞬間、流れる髪の毛先を切られるが、構うことなく左の拳でジャブを放つ。
…が、ロノスは剣を振り下ろした体勢のまま、首を傾けてそれをかわした。
同時に、剣の刃先の角度を変えてフレデリカへと斬撃を向ける。
対するフレデリカは体を大きく反ってそれをかわし、そのまま後転して間合いをとった。
空気を切り裂く透き通った音が鳴る中で、二人は再び睨み合う。
静けさが漂う中で、未だ突き飛ばされて転がっていたイノチが噴水の縁に頭をぶつけてうめき声を上げた。
その瞬間、それを合図にしたかのようにフレデリカとロノスの姿が消える。
「イテテテ…あ…あんなごつい鎧を着てるくせに、フレデリカのスピードについていくのかよ…そろそろ頃合いかな。」
いくつもの衝撃音が何度も何度も響き渡っている様子を眺め、イノチは頭をさすりながらそうつぶやいた。
そして、すぐにハンドコントローラーを起動させてキーボードを打ち始めたのだった。
・
「何なんだよ…あいつらは…」
ケンタウロスとアカニシは互いに交えていた刃の力を緩め、フレデリカとロノスの戦いに魅入っていた。
巨大な爆発と粉塵が舞い上がったかと思えば、その中心からロノスが姿を現し、今度はフレデリカと息を呑むようなバトルを繰り広げているのだ。
唖然と見つめる二人をよそに、フレデリカとロノスは幾度となくぶつかり合っている。
「あいつ…フレデリカ姉さんと互角に渡り合ってやがる。」
「あの女…団長と互角だと…」
二人とも目の前の光景に驚きを隠せずに小さくこぼすが、互いの言葉に我に返ると再び睨み合いを始めた。
「あいにく…団長の方が強えからな!はぁぁぁぁ!!」
「何言ってやがんだ!フレデリカ姉さんの方が絶対に強いね!!おらぁぁぁぁぁ!」
そう言い合いながら、再び刃に力を込めて押し合うケンタウロスとアカニシ。
そして、フレデリカたちの戦いに呼応するように、何度も剣を撃ち合い続けるのであった。
一方、ミノタウロスの猛攻を凌ぎつつ、機をうかがっているセイドもまた、フレデリカとロノスの戦いが気になっていた。
「団長がここまで激しく戦うのは初めてみたぜ…なんちゅう戦いなんだ。しかし、フレデリカの姐さんも姐さんだぜ…団長のあの動きについていけるとは…」
「よそ見するなミノォォォォ!!!」
「…っと!!こいつは相変わらず作戦を理解してるのかわからんが…さて、どのタイミングで仕掛けるか…」
目の前で鼻息を大きく吐き、巨大な斧を振り回すミノタウロスを見ながらセイドはそうこぼす。
噴水の方へチラリと視線を向ければ、キーボードを打っているイノチが自分に視線を向けているのが見えた。
(マジで器用な奴だな。まぁいいが、そろそろ作戦を進めるってことだな…しかし、あいつのあの表情…やっぱりフレデリカの姐さんが不利ってことか。)
そう考えてセイドは持っていた三叉槍を構え直し、ミノタウロスの斧をかわすと同時にスキルを発動した。
「『ウォーター・ストレンジ』!!」
その瞬間、セイドは吸い込まれるように地面の中へと潜り込む。
それはまるで、その地面の一部だけが水となってしまったかのようにトプンッと小さく波紋だけを残して。
「あ…あれ…!?どこ行ったミノかぁ!?あれれれ!?」
突然のセイドが消えたことに気づいたミノタウロスは、キョロキョロとその姿を探すのであった。
・
「おらぁぁぁ!!ですわ!!」
「アハハハハ!いいねいいね!!こんなに楽しい戦いは初めてかもしれないなぁ!!」
フレデリカが放った拳をかわしつつ、ロノスはそう笑った。
そして、その体勢のまま剣を振り抜く。
「いちいちうるさいのですわ!!くっ…!」
「だって本当のことなんだ!しかたないさ!!」
先ほどと変わり、ロノスの斬撃は一撃にとどまらない。
2度3度と、毎回斬りつける回数が増えていることにフレデリカ自身も気づいていた。
(こいつ…わざと…わざと力を抑えて楽しんでいるですわ!)
剣戟を避けるたびに空気を裂く音が聞こえる。
一撃でも浴びれば、体の一部が飛ぶか真っ二つになることは誰にでもわかる。
(だけど、このままではジリ貧…ですわ。)
最後の一撃をかわしたフレデリカは距離を取るため、バックステップとともにゴッドイーターによる魔法弾を数発放つが、ロノスはそれらを簡単に剣で斬り落として素早く距離を詰めてくる。
「アハッ!つれないじゃないか!もっともっとダンスをしよう!!」
「お生憎ですが、わたくしはキザな男は趣味ではありませんですわ!」
「いいねぇ!強気な女性は嫌いじゃない!」
空中で剣戟を数回放つロノス。
それをギリギリでかわすフレデリカ。
避けきれずに髪の毛先や服の端が切られていく。
「く…!ちょ…調子に…乗るなぁぁぁ!!」
「おっと…!」
怒りに任せて襲いくるフレデリカの回し蹴りがロノスを捉えた。
片腕でガードするもその勢いは殺せずに、彼は数メートルほどふき飛ばされて着地する。
その隙を逃さず、フレデリカは再び詠唱を開始。
着地と同時にゴッドイーターを構えた。
「轟雷を操りし天の主よ、その力、一条の光となりて、彼の者に降り注がん!!」
その様子を見ながら、ロノスは堂々と剣を構えている。
「炎がだめなら…雷はどうです?!ライトニングボルトォォォォォォォォ!!!」
その直後、黄色く輝く閃光がロノスへと襲いかかった。
その雷撃は不規則に動きながら、竜の姿を型取っていく。
「フフ…今度は雷かい。」
だが、対するロノスは剣を構えるだけ。
そして…
バチバチバチバチッ!
激しい雷撃がロノスに直撃し、大きな衝撃波と共にあたりに閃光が走った。
「ハァハァ…やりました…です?」
先の『アンファール・バースト』より階位の低い魔法ではあったが、それでもゴッドイーターを使用した時の魔力の消費量は凄まじい。
肩で息をしながら、フレデリカはロノスの状況を注視する。
しかし、未だ光り輝くロノスを見て驚愕した。
電撃がバチチチチッとまるで鳥が鳴くような音を奏でる中、平然とその場に立つロノスがいたのだから。
(こ…こいつ…いったいなんなんですの!?!)
言葉を失うフレデリカに対して、雷撃をまといながらロノスはつぶやいた。
「う~ん…さっきの炎魔法の方がよかったな。これはちょっと刺激が少ない…」
「お前は…いったい…」
「俺かい?至って普通のプレイヤーさ!君のBOSSと同じね。」
「なっ!なぜそれを…!?」
さらに驚いたフレデリカの目の前に、一瞬でロノスが現れる。
(……っ!?やはり力を隠して…!)
一瞬のことに体が硬直してしまうフレデリカ。
ロノスはその前で、体にまとった電撃を剣へ移動させてこう告げた。
「気になるかい?ククク…言ったろ?今は教えないって。」
青ざめるフレデリカを眺め、ロノスは剣を構える。
そして、剣先をフレデリカと向けると、電撃をまとった突きを放ったのだった。
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