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番外編 エリックside⑤
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負傷していたはずの殿下の傷が癒えている事。
父の中にずっといたという初代ドイル国国王のランバード。
幼児退化したマリーナ……
全てを受け入れるまで時間が掛かった。
でも、それ以上にアエリアが話してくれたドイル国の真実やランバードが語ったドイル国の知られざる内容に驚きを隠せなかった。
アエリアが今までこんな重い真実と1人向き合ってきたのかと思うと心が痛かった。
そして、メイル陛下からのアエリアへの告白……
部屋にいる私はただ、その行く末を見守ることしか出来なかった。
正直、私はアエリアと殿下の2人が穏やかな幸せの中この国を治めていく未来を描いていた。
殿下がアエリアの事を心の底から愛しているのは見てわかっていた。ただ、それはアエリアには伝わっていなかったようだ。
こんなにもアエリアを愛している殿下の元を本当に去ってしまうのか?
私の中でモヤモヤとした気持ちが生まれる。
……でも、アエリアと殿下とメイル陛下。3人には私の知りえぬ葛藤や苦境があったのは見ていて十分に分かった。他人がどう思おうと当人達には関係ない。
アエリアを失ったら殿下は以前の人形のような殿下に戻ってしまうのではないか……不安がよぎった。
でも、殿下は前を向いていた。
アエリアの幸せを願い、自分のすべき事を見据えていた。
アエリアとメイル陛下。2人の姿を見て微笑んでる殿下の姿を見て私は自然と涙が溢れてきた。
アエリアを手放した殿下。
殿下のアエリアを思う気持ちを知っているからこそ、殿下の判断は人として尊敬する。
……今度こそ私は殿下に寄り添えるだろうか?
あの時は逃げてしまったけど、私はもう何からも逃げずに殿下の力になりたいと強く思った。
「んんっ……」
全てが終わり皆が退室しようとしたちょうどその時、部屋の奥で寝ていたマリーナが目を覚ました。
マリーナは部屋を見渡して私を見つけると一目散に私に飛びつく。
「おにぃさま。おにぃさまでしょ。おっきくなってもわたしにはわかるわ」
そう言って幸せそうに私に抱きついてすりすり頬を寄せるマリーナを見て私の胸がズキリと大きく痛む。
私は自身からマリーナをソッと引き離すとその場にいる皆に頭を下げる。
マリーナがハリスに魂を乗っ取られたと聞いた時から心の奥底にずっとあった罪悪感が私を襲う。
「すみません。マリーナがハリスに魂を乗っ取られる原因を作ったのは私かもしれません」
部屋にいる皆の視線が一斉に私に向く。
緊張感がはしる。
足が震える……
「どういう事だ?」
父が頭を下げた私の前に立ち、私の次の言葉を待つようにじっと見つめる。
私はその視線に耐えられず父から視線をそらすと、軽く深呼吸をして覚悟を決める。
「……マリーナは幼い頃から私に懐いていました。最初は可愛い妹として見ていましたが、マリーナの私を見る目がなんというか……幼いながらも熱を帯びていて私自身マリーナとは極力顔を合わせず距離を取るようにしていました。マリーナがレイと婚約を結んでからは通常通りの兄妹に戻れたと思っていたのですが、私はマリーナの想いからずっと逃げ続けていました。私の行動全てに置いてマリーナは……心を壊してハリスに魂を……」
「それは原因の一端にあるかもしれないが、それだけが原因ではない」
私の懺悔に対していち早く答えてくれたのはメイル陛下だった。
「人に憎しみの感情を持ちハリスに魂を乗っ取られたのはマリーナ自身だ。人に恨みを持つといずれそれは自身に戻ってくる。マリーナもハリスもそれが分かっていなかった。己の利だけを求め周りを見れていなかったそれは誰のせいでもなくマリーナ自身のせいだといえる」
「自分自身で首を絞めた……といったとこか……」
メイル陛下の言葉に殿下が残念そうに呟いた。
ただ、誰が何と言ってくれてもマリーナをこのようにしてしまったきっかけを作ったのは間違いなく私のせい。
私がもっと上手く立ち回れていたらマリーナはハリスという魔女に魂を同期させられる事なんてなかったかもしれない。
そんな私を誰も責めたりしないが、私には後悔ばかりが残る。
私の腕に擦り寄るマリーナを見て思う。
マリーナの想いに答えることは今もできない。
でも、マリーナは私にとって大切な妹である事は変わりない。
見た目は20歳の女性。中身は私が距離を置き始めた3歳頃のマリーナ。
幼児退行したマリーナに私は何が出来るだろうか……
私がマリーナの頭をソッと撫でるとマリーナは満面の笑みで私に笑いかける。
私が知る昔のマリーナだ。
その純粋な笑顔に胸が苦しくなり、私はその場に座りこんで声を殺して泣いた。
マリーナとレイの婚約は解消されるだろう。
レイにはまた直接謝りに行こうと思う。
あいつの事だからまたアエリアを紹介しろといわれるかな?
残念だけど、アエリアは紹介できない。
アエリアは運命の出会いを果たして幸せを掴んだから。
父の中にずっといたという初代ドイル国国王のランバード。
幼児退化したマリーナ……
全てを受け入れるまで時間が掛かった。
でも、それ以上にアエリアが話してくれたドイル国の真実やランバードが語ったドイル国の知られざる内容に驚きを隠せなかった。
アエリアが今までこんな重い真実と1人向き合ってきたのかと思うと心が痛かった。
そして、メイル陛下からのアエリアへの告白……
部屋にいる私はただ、その行く末を見守ることしか出来なかった。
正直、私はアエリアと殿下の2人が穏やかな幸せの中この国を治めていく未来を描いていた。
殿下がアエリアの事を心の底から愛しているのは見てわかっていた。ただ、それはアエリアには伝わっていなかったようだ。
こんなにもアエリアを愛している殿下の元を本当に去ってしまうのか?
私の中でモヤモヤとした気持ちが生まれる。
……でも、アエリアと殿下とメイル陛下。3人には私の知りえぬ葛藤や苦境があったのは見ていて十分に分かった。他人がどう思おうと当人達には関係ない。
アエリアを失ったら殿下は以前の人形のような殿下に戻ってしまうのではないか……不安がよぎった。
でも、殿下は前を向いていた。
アエリアの幸せを願い、自分のすべき事を見据えていた。
アエリアとメイル陛下。2人の姿を見て微笑んでる殿下の姿を見て私は自然と涙が溢れてきた。
アエリアを手放した殿下。
殿下のアエリアを思う気持ちを知っているからこそ、殿下の判断は人として尊敬する。
……今度こそ私は殿下に寄り添えるだろうか?
あの時は逃げてしまったけど、私はもう何からも逃げずに殿下の力になりたいと強く思った。
「んんっ……」
全てが終わり皆が退室しようとしたちょうどその時、部屋の奥で寝ていたマリーナが目を覚ました。
マリーナは部屋を見渡して私を見つけると一目散に私に飛びつく。
「おにぃさま。おにぃさまでしょ。おっきくなってもわたしにはわかるわ」
そう言って幸せそうに私に抱きついてすりすり頬を寄せるマリーナを見て私の胸がズキリと大きく痛む。
私は自身からマリーナをソッと引き離すとその場にいる皆に頭を下げる。
マリーナがハリスに魂を乗っ取られたと聞いた時から心の奥底にずっとあった罪悪感が私を襲う。
「すみません。マリーナがハリスに魂を乗っ取られる原因を作ったのは私かもしれません」
部屋にいる皆の視線が一斉に私に向く。
緊張感がはしる。
足が震える……
「どういう事だ?」
父が頭を下げた私の前に立ち、私の次の言葉を待つようにじっと見つめる。
私はその視線に耐えられず父から視線をそらすと、軽く深呼吸をして覚悟を決める。
「……マリーナは幼い頃から私に懐いていました。最初は可愛い妹として見ていましたが、マリーナの私を見る目がなんというか……幼いながらも熱を帯びていて私自身マリーナとは極力顔を合わせず距離を取るようにしていました。マリーナがレイと婚約を結んでからは通常通りの兄妹に戻れたと思っていたのですが、私はマリーナの想いからずっと逃げ続けていました。私の行動全てに置いてマリーナは……心を壊してハリスに魂を……」
「それは原因の一端にあるかもしれないが、それだけが原因ではない」
私の懺悔に対していち早く答えてくれたのはメイル陛下だった。
「人に憎しみの感情を持ちハリスに魂を乗っ取られたのはマリーナ自身だ。人に恨みを持つといずれそれは自身に戻ってくる。マリーナもハリスもそれが分かっていなかった。己の利だけを求め周りを見れていなかったそれは誰のせいでもなくマリーナ自身のせいだといえる」
「自分自身で首を絞めた……といったとこか……」
メイル陛下の言葉に殿下が残念そうに呟いた。
ただ、誰が何と言ってくれてもマリーナをこのようにしてしまったきっかけを作ったのは間違いなく私のせい。
私がもっと上手く立ち回れていたらマリーナはハリスという魔女に魂を同期させられる事なんてなかったかもしれない。
そんな私を誰も責めたりしないが、私には後悔ばかりが残る。
私の腕に擦り寄るマリーナを見て思う。
マリーナの想いに答えることは今もできない。
でも、マリーナは私にとって大切な妹である事は変わりない。
見た目は20歳の女性。中身は私が距離を置き始めた3歳頃のマリーナ。
幼児退行したマリーナに私は何が出来るだろうか……
私がマリーナの頭をソッと撫でるとマリーナは満面の笑みで私に笑いかける。
私が知る昔のマリーナだ。
その純粋な笑顔に胸が苦しくなり、私はその場に座りこんで声を殺して泣いた。
マリーナとレイの婚約は解消されるだろう。
レイにはまた直接謝りに行こうと思う。
あいつの事だからまたアエリアを紹介しろといわれるかな?
残念だけど、アエリアは紹介できない。
アエリアは運命の出会いを果たして幸せを掴んだから。
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