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「ロン商会に?」
「ええ。」
ローライ様はアロンの言葉に部屋の中にいるみんなを見渡す。
「でも…君の商会には既に有能な人材が沢山いる。俺の様な人間が入る必要性はないだろう?」
ローライ様は自信なさげに言う。
「ローライさん。貴方は自身の価値を分かっていない。頭がいいだけの奴なら沢山いる。でも、今回の様に自身の損得を考えず行動出来る人はそうそういない。
貴方を引き入れたいと思っている人は僕以外にも沢山いるはずだよ。
そして、僕も貴方に協力をしてもらい貴方の芯の通った人間性を間近で見させてもらってぜひ、商会に来て欲しいと思ったんだ。
それに、何故だかこの商会には変わり者が多いのでね。貴方のようなまともな人が1人でもいると助かる。ぜひ考えてほしい。」
アロンがそう言ってローライ様に手を差し出す。
ローライ様は少し戸惑い、ジッとアロンの差し出した手を見て何かを考える。
そして、ローライ様がアロンのその手を取ろうとしたその瞬間、部屋のドアがバンっと開く。
「有能な人材を我先にと勝手に勧誘するのはやめてほしいな。アローン」
そこにはサムル様が不機嫌な顔をして立っていた。
「ローライが久々に学園に来たという話を聞いて、公務から急いで学園に来てみれば早々に囲い込んでいるとは…油断も隙もあったもんじゃないな。」
チッ…
アロンは表情を変えないまま小さく舌打ちをする。
サムル様はあの日以降忙しい日々を送っている。
サムル様は特例に学園内の寮を退去し、即位の為の引き継ぎを含めた公務を行う為に王城から学園に通っている。
学園に来る日もまちまちの中、学園に来た際には毎回この部屋を訪れてアロンの勧誘にも手を抜かない。
「ローライ。アローンと共に私の元に来ないか?君の有能さは誰もが知る所だ。私が国を治める際の片腕となってほしい」
「僕と共に…ってなんですか?何度も言っていますが、私は貴方に着くつもりはありません。勝手に話を進めないでください。」
サムル様とアロンがいつもの様に言い合う中、ローライ様は複雑な表情をする。
「サムル…サムル殿下…ありがたいお話ですが、それはお断りします。私はもう平民ですし、いくら殿下がいいと言われても私の両親が犯した罪をなかった事にはできません。その辺りは弁えてます。」
ローライ様の言葉にサムル様は眉を寄せる。
「真面目だなぁ…」
そう言ってサムル様は大きく息を吐くと近くのソファーにどかっと腰掛ける。
「アローンもローライも能力があるのだからもっと高みを目指してもいいと思うんだけどねぇ…ねっ。カロリーナさん」
「えっ?」
急に私に振られて私は戸惑う。
「サムル様っ。カロンを巻き込むのは辞めてください」
アロンが咄嗟に私をサムル様の視界から遮るように抱きしめる。
前もこんな事あったな…
「巻き込むなんて…あぁ。そうそう。カロリーナさんにはずっと感謝しなきゃなって思っていたんだ」
サムル様はニッコリと笑うとパチンと手を叩く。
「感謝?…ですか?」
「ああ。思い返したら今回の件がうまくいったのは全てカロリーナさんのお陰だ」
私のお陰?
サムル様は何を…
「わ…私は何も…ただ眺めていただけで…」
私はアロンの腕に包まれながらも必死に頭を振って否定する。
「いや。カロリーナさんのおかげだよ。
カロリーナさんがいて、カロリーナさんがマルクと婚約をした事でアロンが本気になって色々と詮索してくれたお陰で我が国の膿を全て排除することができた…」
そう言ってサムル様はアロンの方を見る。
「それに、そもそもカロリーナさんがいなければアロンは僕の前に現れることもなかっただろうしね。カロリーナさんは私と優秀な人材を会わせてくれた。だから感謝しかないよ」
優しく微笑んでいるサムル様だけど、その表情が一瞬自身の身体に絡みつくようなヘビの様にみえた。
アロンがサムル様に…王族に目をつけられたのは私のせい?
サムル様の言葉に私の心が騒つく。
「ええ。」
ローライ様はアロンの言葉に部屋の中にいるみんなを見渡す。
「でも…君の商会には既に有能な人材が沢山いる。俺の様な人間が入る必要性はないだろう?」
ローライ様は自信なさげに言う。
「ローライさん。貴方は自身の価値を分かっていない。頭がいいだけの奴なら沢山いる。でも、今回の様に自身の損得を考えず行動出来る人はそうそういない。
貴方を引き入れたいと思っている人は僕以外にも沢山いるはずだよ。
そして、僕も貴方に協力をしてもらい貴方の芯の通った人間性を間近で見させてもらってぜひ、商会に来て欲しいと思ったんだ。
それに、何故だかこの商会には変わり者が多いのでね。貴方のようなまともな人が1人でもいると助かる。ぜひ考えてほしい。」
アロンがそう言ってローライ様に手を差し出す。
ローライ様は少し戸惑い、ジッとアロンの差し出した手を見て何かを考える。
そして、ローライ様がアロンのその手を取ろうとしたその瞬間、部屋のドアがバンっと開く。
「有能な人材を我先にと勝手に勧誘するのはやめてほしいな。アローン」
そこにはサムル様が不機嫌な顔をして立っていた。
「ローライが久々に学園に来たという話を聞いて、公務から急いで学園に来てみれば早々に囲い込んでいるとは…油断も隙もあったもんじゃないな。」
チッ…
アロンは表情を変えないまま小さく舌打ちをする。
サムル様はあの日以降忙しい日々を送っている。
サムル様は特例に学園内の寮を退去し、即位の為の引き継ぎを含めた公務を行う為に王城から学園に通っている。
学園に来る日もまちまちの中、学園に来た際には毎回この部屋を訪れてアロンの勧誘にも手を抜かない。
「ローライ。アローンと共に私の元に来ないか?君の有能さは誰もが知る所だ。私が国を治める際の片腕となってほしい」
「僕と共に…ってなんですか?何度も言っていますが、私は貴方に着くつもりはありません。勝手に話を進めないでください。」
サムル様とアロンがいつもの様に言い合う中、ローライ様は複雑な表情をする。
「サムル…サムル殿下…ありがたいお話ですが、それはお断りします。私はもう平民ですし、いくら殿下がいいと言われても私の両親が犯した罪をなかった事にはできません。その辺りは弁えてます。」
ローライ様の言葉にサムル様は眉を寄せる。
「真面目だなぁ…」
そう言ってサムル様は大きく息を吐くと近くのソファーにどかっと腰掛ける。
「アローンもローライも能力があるのだからもっと高みを目指してもいいと思うんだけどねぇ…ねっ。カロリーナさん」
「えっ?」
急に私に振られて私は戸惑う。
「サムル様っ。カロンを巻き込むのは辞めてください」
アロンが咄嗟に私をサムル様の視界から遮るように抱きしめる。
前もこんな事あったな…
「巻き込むなんて…あぁ。そうそう。カロリーナさんにはずっと感謝しなきゃなって思っていたんだ」
サムル様はニッコリと笑うとパチンと手を叩く。
「感謝?…ですか?」
「ああ。思い返したら今回の件がうまくいったのは全てカロリーナさんのお陰だ」
私のお陰?
サムル様は何を…
「わ…私は何も…ただ眺めていただけで…」
私はアロンの腕に包まれながらも必死に頭を振って否定する。
「いや。カロリーナさんのおかげだよ。
カロリーナさんがいて、カロリーナさんがマルクと婚約をした事でアロンが本気になって色々と詮索してくれたお陰で我が国の膿を全て排除することができた…」
そう言ってサムル様はアロンの方を見る。
「それに、そもそもカロリーナさんがいなければアロンは僕の前に現れることもなかっただろうしね。カロリーナさんは私と優秀な人材を会わせてくれた。だから感謝しかないよ」
優しく微笑んでいるサムル様だけど、その表情が一瞬自身の身体に絡みつくようなヘビの様にみえた。
アロンがサムル様に…王族に目をつけられたのは私のせい?
サムル様の言葉に私の心が騒つく。
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