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マルク様に腕を掴まれたまま、入学式の会場まで足速に向かう。
これは…エスコートではないですね。
連行?
掴まれた腕が少し痛い…
周りの方がこんな姿を見られたら順調な婚約者同士だと思う方はいないでしょう?
マルク様は一体何を考えているのやら…
そんな私達の後ろをエリーさんとローラン様が付いてくる。
エリーさんはマルク様を睨みつける様に見つめ、ローラン様は呆れ顔をしている。
…助けてよっっ
会場の前まで来るとマルク様はピタリと止まり、掴んでいた私の手を解放すると、サッと私の前に手を差し出す。
私は一瞬躊躇いながらも仕方なしにその手の上にソッとてを添える。
その手首には、先程までマルク様に掴まれていた手の跡がくっきりと残っている。
こんなになるまで強く掴むなんて…
呆れ返って私は軽く溜息をついてしまう。
「ちょっと待ってください」
そのまま会場に入ろうとするマルク様をエリーさんが止める。
エリーさんは足速に私に近づくと、マルク様の手の跡が付いた手首にサッとハンカチを巻いてニッコリと安定の可愛らしさで私に微笑む。
「とりあえず、今はこれで…」
そう言ってエリーさんはマルク様の方に視線を移してからマルク様に対してもニコリと笑みを見せる。
マルク様はそんなエリーさんに対してチッと軽く舌打ちをした。
本当にこの人は…
マルク様にエスコートされながら入学式の会場に入ると、既に大半の新入生が入っていた。
今回の新入生はおおよそ40人くらいと聞いている。
その中で貴族が8割。残り2割が平民。
男女比率は男性が6割。女性が4割。
例年より今年の新入生は人数は少ないらしい。
席には既にそれぞれ名前が振られていて、ローラン様がマルク様に席の場所を伝える。
マルク様の席と私の席は離れているようで内心ホッとする。
私はマルク様のエスコートに対して感謝の礼をすると、手をサッと離してエリーさんに促されて自身の席に進む。
席についた時点で、チラリとマルク様の方を確認するとマルク様はジッと睨む様にサムル王太子殿下の方を見ていた。
『仲睦まじくしてる姿を見せる』
“誰に?”と思ったけど…サムル王太子殿下にだったのかしら。
何故、サムル王太子殿下に私とマルク様の仲睦まじい姿を見せる必要が?
良くわからない。
マサラ王妃の陰謀と関係が?
いや。私と仲がいい姿をサムル王太子殿下が見たところで陰謀に何のプラスもないでしょう。
2年間、マルク様と共に過ごしているけど、本当に分からない人だわ。
私が席についてしばらくすると、入学式が始まった。
新入生が手前。案内役の生徒は担当する新入生のすぐ後ろに座り、任意参加の在学生がその後ろの席にランダムに座る。
ステージの上には先程、学園に着いた際に話をした理事長のトーマス・ウィストン様と学園長のマッド・トルニア様をはじめ12人の講師人が立っている。
そして、ステージを降りたすぐ脇にはサムル王太子殿下やアロンなどエリーさんとローライ様2人を除いたハイセレクトの7人の先輩方がこちらを見るように立っている。
そんな中で案の定、私の視線は自然とアロンの方に向いてしまう。
これは…エスコートではないですね。
連行?
掴まれた腕が少し痛い…
周りの方がこんな姿を見られたら順調な婚約者同士だと思う方はいないでしょう?
マルク様は一体何を考えているのやら…
そんな私達の後ろをエリーさんとローラン様が付いてくる。
エリーさんはマルク様を睨みつける様に見つめ、ローラン様は呆れ顔をしている。
…助けてよっっ
会場の前まで来るとマルク様はピタリと止まり、掴んでいた私の手を解放すると、サッと私の前に手を差し出す。
私は一瞬躊躇いながらも仕方なしにその手の上にソッとてを添える。
その手首には、先程までマルク様に掴まれていた手の跡がくっきりと残っている。
こんなになるまで強く掴むなんて…
呆れ返って私は軽く溜息をついてしまう。
「ちょっと待ってください」
そのまま会場に入ろうとするマルク様をエリーさんが止める。
エリーさんは足速に私に近づくと、マルク様の手の跡が付いた手首にサッとハンカチを巻いてニッコリと安定の可愛らしさで私に微笑む。
「とりあえず、今はこれで…」
そう言ってエリーさんはマルク様の方に視線を移してからマルク様に対してもニコリと笑みを見せる。
マルク様はそんなエリーさんに対してチッと軽く舌打ちをした。
本当にこの人は…
マルク様にエスコートされながら入学式の会場に入ると、既に大半の新入生が入っていた。
今回の新入生はおおよそ40人くらいと聞いている。
その中で貴族が8割。残り2割が平民。
男女比率は男性が6割。女性が4割。
例年より今年の新入生は人数は少ないらしい。
席には既にそれぞれ名前が振られていて、ローラン様がマルク様に席の場所を伝える。
マルク様の席と私の席は離れているようで内心ホッとする。
私はマルク様のエスコートに対して感謝の礼をすると、手をサッと離してエリーさんに促されて自身の席に進む。
席についた時点で、チラリとマルク様の方を確認するとマルク様はジッと睨む様にサムル王太子殿下の方を見ていた。
『仲睦まじくしてる姿を見せる』
“誰に?”と思ったけど…サムル王太子殿下にだったのかしら。
何故、サムル王太子殿下に私とマルク様の仲睦まじい姿を見せる必要が?
良くわからない。
マサラ王妃の陰謀と関係が?
いや。私と仲がいい姿をサムル王太子殿下が見たところで陰謀に何のプラスもないでしょう。
2年間、マルク様と共に過ごしているけど、本当に分からない人だわ。
私が席についてしばらくすると、入学式が始まった。
新入生が手前。案内役の生徒は担当する新入生のすぐ後ろに座り、任意参加の在学生がその後ろの席にランダムに座る。
ステージの上には先程、学園に着いた際に話をした理事長のトーマス・ウィストン様と学園長のマッド・トルニア様をはじめ12人の講師人が立っている。
そして、ステージを降りたすぐ脇にはサムル王太子殿下やアロンなどエリーさんとローライ様2人を除いたハイセレクトの7人の先輩方がこちらを見るように立っている。
そんな中で案の定、私の視線は自然とアロンの方に向いてしまう。
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