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10、同盟式典

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メイル兄様の衝撃的な婚約者宣言から2ヶ月。

本日、グランドールメイル帝国とドイル国の同盟式典が行われます。

開催場所はグランドールメイル帝国王城。
ここ最近、王城内外は騒がしい状態でした。

メイル兄様も今まで以上に忙しそうで、あの朝食以来顔を見ていません。


同盟式典にはドイル国や帝国の重鎮達と他国の要人達が参加する予定です。

私は、帝国から出た事は無いので他国の人と関わる機会は数える程度なので、私も朝から色々と緊張してしまいます。



今回のこの同盟式典。
メイル兄様はドイル国での開催を提案したそうですが、メイル兄様の婚約者がこの式典後にドイル国から帝国に来ると言う事でドイル国の国王陛下が是非最後まで見送りたいと帝国での開催を希望されたそうです。


言い方は悪いですがメイル兄様の婚約者は自国の王太子…国王陛下の息子の元婚約者で、自国を息子を裏切った形になるのに国王陛下にそんなに大切にされているなんて…

不思議でありません。


婚約破棄ではなくて婚約解消と言う事なので両者合理の上での物だとは思いますが、婚約が無くなった事に関しては何かしらのわだかまりはつきものです。


同盟を組む代わりにメイル兄様が奪った…と言うわけでも無さそうですし…


ドイル国とメイル兄様の婚約者の不思議な関係を聞いてからというものメイル兄様の婚約者がどんな方なのかとにかく気になって仕方ありません。

何よりもメイル兄様をデレさせる強者の女性。

早くお会いしてみたいものです。





式典の時刻に近くなり、私はサリーに仕上げの髪飾りをつけてもらい、迎えにきた従者と共に式典会場に向かう。



会場には既に皇族席にゲイル兄様とノイルが座っています。

ゲイル兄様はいつもの騎士服ではなく皇族の正装。
中々見ることができない格好ですが、やっぱりカッコいいです。
ノイルも正装をしていつもより大人っぽく見えてウチの兄弟はやっぱ最高ですね。

メイル兄様もいつ見ても安定のカッコよさですし、こんな兄弟を見ていると目が肥えてしまって中々他の男性は目に入りません。

私が新しい婚約者に前向きになれない理由の一つは私にこんな素敵な兄弟がいるからです。きっと。絶対。



そんな風に考えていると式典が始まりました。


厳かな空気の中、メイル兄様とお母様。そしてドイル国の国王陛下が入って来ます。

それぞれが宣言を交わし、書類に署名をする。

一通りの作業が終わると仲介人が書類の確認と同盟に関する規約を述べる。


その間、メイル兄様がドイル国側にいた1人の令嬢をこちら側にエスコートしてくる。


赤茶髪の軽くウェーブのかかった長い髪。
大きく開かれた赤茶の瞳に白い肌。
細い身体なのに動作に無駄はなく淑やかで美しい女性。

その女性は嬉しそうに優しくメイル兄様を見て、メイル兄様も今まで私が見たことがない様な優しい笑みをその女性に向けている。


ああ…この人がメイル兄様の婚約者なんだ。


妙に納得してしまった。


帝国貴族にも美しく上品な令嬢は沢山いる。
でもその女性がもつ雰囲気は全く別ものだった。

メイル兄様は神の愛子だし帝国の皇帝として持っている力も歴代稀にみる最強で纏うオーラも別物です。

でもその女性はメイル兄様にまったく引けを取らない。
不思議な感覚を感じる女性です。


式典は厳正に慎ましく何の問題もなく終わりを迎えました。

その後、祝賀会パーティーが開催されてそれぞれの国の情報や今後の関わりを話をして両国の親交を深めています。

メイル兄様はドイル国の国王陛下の元に婚約者と共に行き何かを話しています。


メイル兄様も国王陛下も笑みを浮かべて話しているので関係は良好であることが分かります。


「兄上のあんな笑顔見た事ないよな…」
ゲイル兄様が珍しい物を見るかの様に遠くにいるメイル兄様を見て言う。

「婚約者の人…綺麗…」
ノイルが珍しく反応してます。
ノイルが言葉に出すなんてよっぽどの事です。

「流石メイル兄様って感じですよね。」
私はため息混じりにメイル兄様と婚約者の女性をガン見してしまう。


正直、メイル兄様の普段じゃ見れない顔と隣に並ぶ婚約者の女性が気になりすぎてそれ以外が見えていません。



「ドイル国の王太子も噂に違わぬ美形だがよく兄上はあの王太子から婚約者を奪えたもんだな…」

ゲイル兄様がドイル国の王族席を眺めてため息混じりに呟く。


「メイル兄様はカッコいいだけでなく最強ですからね。女性ならメイル兄様に甘い声の一つでも掛けられたら靡いてしまうんじゃない?」

メイル兄様のカッコ良さは帝国内外誰もが認めるものだし、そこにプラスして大国の皇帝であり不思議な力もあるとなれば、政治的にも個人的にも誰もが憧れて恋焦がれてしまうのは仕方のない事です。

メイル兄様に今まで浮ついた話しがなかったのが不思議なくらいなんですから。だから男色だと噂も立つわけです。


「あの人がそんな軽い感じの人には見えないけど…」
ノイルはジッとメイル兄様の婚約者を見定める様にみてポツリ呟く。


「ドイル国のバルメルク家令嬢はドイル国の厳しい教育を受けて来た淑女として各国で有名な令嬢よ。自分の立ち位置をきちんと弁えてる。自身の惚れた腫れたで行動する様な方ではないわ。」

兄弟でメイル兄様の婚約者について話しているとお母様が静かな口調で話す。


「だからよくメイルは手に入れたと思うわよ。帝国にとっては喜ばしい事だわ。ティナ…貴方はきっと見習うべき事が沢山あるわ。折角だからしっかり学ばせてもらいなさい。」


耳が痛いです。


でも、遠目から見ただけで素敵な方だと言うのは分かります。
なんだか仲良く出来そうな気がしてきました。


姉妹には憧れがあったので是非“お義姉様”と呼ばせて頂きたいですね。

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