かつて、魔女だった君へ~異形の怪人と殺戮の乙女~

RYU

文字の大きさ
上 下
6 / 22

天使のような悪魔

しおりを挟む
    その夜、マコトは吐き気がする位重苦しい夢にうなされていた。

 彼は古びた洋間の中でぼんやり立っていた。洋間は12畳位の広さであり、家具にはうっすら埃ほこりがのっていた。暗がりの部屋の一部の壁には、分不相応な広大な鏡が一面に広がっていた。鏡には、自分の姿ではなく、うっすらと少女の姿がある。歳は10歳から12歳位だろうかー?ツバの傷んだとんがり帽子に、古びたスカーフ、ダブダブのローブを身に纏って《まとって》いる。目元はツバで殆ど見えないー。マコト頭に鋭い針が突き刺さる様なキーンとしたものを感じた。

マコトの心臓の鼓動は昂り、感情の潮が迸った。鏡の中の少女は、にっこり微笑む。


ーコイツは、昔、ダチを殺した奴だー!ー

昔の、森の中での思い出が、フラッシュバックの様に鮮やかに蘇った。

『こんにちは。天野マコト君。』
蜜のように甘ったるくねっとりした感じの声である。
『お前、あの時の殺人鬼だな!!!』
『あらぁ、それは言いがかりよ。私、何もしてないわ。あの子達が勝手に死んでいったのよ。』
少女は、天使のように無垢な顔でキョトンと首を傾げた。
『嘘だろ!!!お前が殺したんだろ!!!』
マコトは歯軋りをして、鏡をドンドン叩いた。
『叩いたって、私に攻撃なんか効かないわ。』
少女は小馬鹿にした様な口調で微笑んでいる。
『彼等は弱いから、自滅していったのよ。そして、食べられたー。』
『俺は、友達に約束したんだ。仇を打つってな。そして、微塵に切り刻んでやるってー。』
『フフ・・・。昔の貴方みたいね。『微塵に切り刻んでやる』ってー。』
少女は、無邪気に笑う。
『これが、本当のあなたよー。思いださせてあげるわ。』
すると、鏡の中に映っているものは、少女は暗闇に包まれ、徐々に姿を消していき、それから、大太刀を担いだ長身の男に切り替わった。
『誰だ、こいつは?・・・ー』
『あら、何言ってるの?あなたよ。沢山食い殺?美味しそうに、ムシャムシャとー』
少女はほくそ笑むー。
『誰なんだお前は!?ー』
『あたし?昔からいるじゃない?忘れたの?ー』
『この男は誰だ?俺の父か?』
『これは、本来のあなたの姿よ。あなたは無様に処刑されたけどー、まあ、凄くそそられたわ。』
少女は両頬にてを当ててうっとりしている。
『俺の足元の髑髏は、骨の山は何なんだー?』
『あなたの食い殺してきた人達よ。』


ー!?ー


『あなたのしてきた事は、恥ずかしい事じゃないわ。だって、人間だって動物殺して食べてるでしょ?それと、同じー。何も変わらないわー。』
少女は、天使の様な優しさで、宥めるように話した。
『それ、屁理屈だろ!だから、コイツは誰なんだ!?』
すると、たちまちドクンと心臓が再び脈打つー。雷に打たれ方の様な衝撃を感じたー。
『あら、汗かいてるわよ。思い出した?』
少女は、見透かしたかの様にほくそ笑む。天使の様な顔で悪魔の様な表情をしていた。
 鏡に映っている人を見ると忌々しい戦慄を覚えると共に、デジャブの様な感覚を覚えたのだ。
    空は黒に近い鉛色で、大雨が滝のように降り注いでいた。所々に、雷でピカピカ光っていた。その空の元、廃墟の広場で大太刀を担いで得意気に仁王立ちしている自分がそこにいた。自分の足下には人骨の山が、冷たく無残に積み重なっているのが見えるー。この髑髏は自分とはどのような間柄なのかは分からないー。ただ、自分より弱かったというのは直感で分かった。コイツラは自分に狩り取られる立場だかから、食われたのだ。自分等が食物連鎖の頂点なのだ。少し食べ過ぎたと、思うことがある。しかし、自分らよりも弱者だから、仕方ないのである。コイツらは弱い人間だから、仕方ないのである。自分は、一体何者だろうかー?何か、悪い事をした様な感じがするが、今の自分とは関係のない事じゃないのかー?
『今は、まだいいのよ。天野マコト。あとは、ゆっくり覚えていきましょう。』
少女の甘く柔らかい声が木霊し、部屋中を反響していたー。
マコトはクラクラ立ちくらみを覚え、辺りがフィルターのかかったかのように曇っていったー。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

処理中です...