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第1章 異世界転移編
第6話 推理
しおりを挟むとりあえず、分かっていることを整理するとしよう。
第2王女は、最初に自分が第一発見者だと言ったが、俺が質問をすると女がその場にいたと言い換えた。
しかし、月光は悲鳴を聞いて駆けつけたのは二条院であり、それを確認してその場を離れた為に第2王女の姿を見ていないと言っている。
両者の話を聞く限り、二条院の後に別の女が俺の元に駆けつけたとなると両者の話は成立はするが、二条院の性格から俺をそのまま放置しようとは思わないだろう。
なら、どちらかが嘘をついていることになる。
だがまあ、普通に考えて月光の言っていることが真実であり、第2王女が言った事が嘘になるだろう。月光は生まれてきてから1度も俺に、嘘をついた事がないからな。
そしたら何故第2王女はそんな嘘をついたんだ?
別に誰に会ってようが俺に話す事になんの問題もないだろう。
「お兄ちゃん?」
「何だ?」
「何か考えているみたいだけど、私にも教えてくれないかな? 協力したいんだけど」
……第2王女程の身分の者が何か考えているとなるとトラブルの匂いがする。
それを話すことによって月光の身にまで危険が及ぶこともありえるだろう。
ゆっくりと顔を上げ、月光の顔を見た。
ああ……これは言うまで帰らないだろうな。
正直に話す事にしよう。
「実は――」
それから俺は月光に、俺が隆雅達に虐められた時から俺が見て聞いた全ての事を伝えた。意識を失った後の事については詳しく知らないが、それ以外の情報で漏れている箇所はないだろう。
「そんなことがあったんだ……こんな事になるなら、私がどこかの部屋に連れて行って看病するべきだった……」
月光は俯き、落ち込んだ顔をした。今にも泣きそうだ。
「それは違う。仮に、月光が俺を助けている所を誰かに見られれば、それこそ大変な事になるだろう。月光の判断は間違いじゃなかった」
俺がそう言っても月光の顔が明るくはならなかった。
しかし、こんな事が起きたのは今回だけじゃない。
情けない話ではあるが、俺が虐められて帰ってくる度に、月光は悲しい顔をする。
月光には悪いが、話を続けさせてもらおう。
「それで、月光はどう思った? 第2王女が二条院と会った事を隠す理由。俺は恐らく、第2王女が何か碌でもないような事を考えていると思うんだが……」
俺がそう言うと、月光は黙り込んだ。
そして、暫く経つと顔を上げ、口を開いた。
「そうだね。私も第2王女が何か企んでいるんだと思うよ。でなきゃ、そんな嘘をつく意味が無いからね。だとすると、考えられるのは誰かに知られるとまずい事が第2王女にあったとか?」
確かにそれは考えられる。
俺が第2王女の立場になって考えると、自分が知られてまずい事を助けた俺に知られないようにする為に、自分がその現場に訪れた所を見た……つまり、この場合なら二条院の事をあやふやに説明するだろう。そこから自分のやった事が漏れる可能性があるからだ。
しかし、それならさらに分からない部分が出てくる。
「もしかしたら……」
月光が何か思いついたようだ。
「お兄ちゃんに、その第2王女が何かしたのかも知れない……」
ん?ああ……何となく理解は出来るが、いやしかし……
「普通、二条院に都合が悪い所を見られたかも知れないのに、のこのことお兄ちゃんを助けたりせずに、さっさとその場から離れると思うけど、それをしなかった。ってことは、都合が悪い所を見られた訳ではなくて、お兄ちゃんと会ったのを知られること自体が都合の悪い事なんだと思う」
確かに分かる。
しかし、俺に何かしようと接触して来た所を見られたとすれば、口封じ程度で済むだろうか? 俺なら情報が漏れないように二条院の奴を殺すだろう。
後で確認すれば済むことだが、二条院の奴が死んでいる可能性はまあない。
となると、第2王女の目的が俺を殺す事で、二条院に見られた事で俺を殺すのを諦めたという可能性はどうだ?
いや。それもないな。それなら第2王女は二条院に見られた所で何の問題もない。
なら俺を殺す為に何かを持っていて、それを二条院に見られたかも知れないが、逆に見られていないかも知れず、第2王女自身が分からない場合ならどうだ?
これならまだありえるな。
「 それなら、第2王女が俺に何かをしようと近づいたが、二条院が先にそこにいた。第2王女は何かを持っており、二条院がそれを見たかどうか分からない状況。第2王女はとりあえず、俺に何かをするという目的の為に二条院から俺を預かると、目的を達成する為に治療という形でその場から移動させた。これならどうだ?」
色々と当て付けのような所もあるが、自分でも妙にこれまでのモヤモヤが解消されたような気がする。
研究者の天職のせいか?
「確かに。それなら一つ以外は矛盾がないと思うよ」
確かに。だが、その一つがどうも分からない。
「結局、第2王女は俺に何をしたのかということだろ?」
月光は小さく頷いた。
そうだ。今、俺は何の問題もなく生きている。だから、何かしようとしたというのは結果的にありえない話となる。
だが、やはりこの考えに妙に納得してしまう。
「これ位が私には限界……もっと、お兄ちゃんの力になりたいんだけど。でも、お兄ちゃんの考えが正しければ、今は体の変化に気づいてないだけっていうのもありえるよ……もうあの子にお願いするしかないかも……」
確かに俺が自分の体の変化に気づいていないだけというのもありえるが――あの子?
「あの子って誰だ?」
月光が頼りにするような者が身の回りにいたか?
「私の友達の真起ちゃん」
真起?……あぁ、一宮 真起の事か。
「確か加護は【真実】……なるほど、そういう事か」
「聞いてみないと分からないけど協力して貰えば、解決に繋がると思うよ?」
基本的に月光以外に相談したくないが、月光の友達で、月光が信用しているやつなら信頼してもいいだろう。
「分かった。しかし――」
「分かってるよ。詳しくは言わないし、加護の事は詳しくは知らないけど上手く動くから安心して!」
そこまで分かっているなら問題ないだろう。
「ああ、頼んだ」
そこで、扉をノックする音が聞こえた。
「ご飯の時間かな?」
「そうだろうな。多分メイドだろうし、一緒に出ても問題ないだろうが、部屋から出たら――」
「分かってるって!」
月光は頬を膨らませながら、扉を強く開けた。そこには、やはりメイドがいた。
月光は俺に手を振ると、食事の部屋の方へ走っていった。
その後、メイドに連れられて食事の部屋へ行った。既に部屋には俺以外の全員が集まっていた。
隆雅とは目が合ったが、舌打ちを鳴らされた。
二条院の奴とは目さえ合わなかった。
そして、食事の時間が始まった。
流石に4食抜きはキツイので、とりあえず水を飲む事にした。
既に入れてあった水は間違えてこぼしてしまったという事で、真ん中に置いてある新しい水を入れ替えて飲んだ。
食べ物も、自分の所に置いてある物ではなく、真ん中に置いてある全員共有の食べ物に手を出して、いくつか摘んだ。
1日経ったことから、全員毒殺などという事はないだろうからな。
その後、食事の時間を終えるとその場は解散となった。
月光には目で合図を送った。
さて、俺はこれから時間もあるし、図書室にでも行くとするか……
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