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9話

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 「おいおい、男が何泣いてんだよ」

 そんなことを言い、笑いながら部屋に入って来たのは寿人さんだった。
 彼は手にトレイを持っている。

 「寿人さん……あなたがこれを?」

 「そうだよ。縛っとかないと抵抗しようとするだろ?」

 「そんなのしませんから!これ、解いてください……」

 「それはできねぇ、終わるまではな」

 彼はトレイをベッドの隣の小さなテーブルに置いて俺の隣に座った。
 
 「それよりさ奏君、いや奏。お前体綺麗だな」
 
 首や脇の筋をつぅと指でなぞられ、俺は目を閉じた。
  
 「んっ……」

 「あれ、今ので感じたのか?」

 「違います……くすぐったくって……」

 「そうか?まぁこれから感じるようにしてやるんだけどな」

 「え、感じるって……」

 「聞いてただろ?調教してやるって」

 彼は俺の首にキスをして、耳元で囁いた。
 熱い息が耳に直接かかってきて、なんか変な感じがさした。

 「あの、俺殺されたりはしないんですよね……」

 「殺す?なんで」

 「俺、ヤクザって気に入らない人を殺すようなイメージがあって……」

 俺は寿人さんから目を逸らすようにして呟いた。

 「誰が気に入らないなんて言ったか?」

 「それは、ないですけど……」

 「大丈夫だ。今んところは殺してやろうなんて思ってもねぇよ」

 『今んところ』って言うのは少し引っかかってしまうが、少し安心できた。
 どこで気に入られたかなんて心当たり微塵もないが、抱えていた不安が消えていった気がした。

 「さ、他愛もない話はここまでだ。そろそろ始めるぞ」

 彼は俺のペニスをゆっくりと撫でた。
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