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4話

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 一人残された俺は何も出来ずその場に立ち尽くしていた。
 ヤクザの男達は俺が逃げていないことに気づいたのか周りに群がってきた。

 「ひぃっ……」

 「何、怖いの?」

 俺は無言でゆっくりと頷いた。

 「当たり前だよな。怯えちゃって……可愛い」

 俺に話しかけてきた男性は俺の背中に手を回してそう囁いた。

 「へっ……」

 「高校生くらい?」

 「は、はい……」

 俺が答えると彼は舌舐めずりをした。

 「俺、山野陸兎っつぅんだけど君は名前なんていうの?」

 「葉村、奏です……」 

 「奏君ね、了解」

 彼は笑顔で俺に微笑みかけた。

 「あの……俺どうしたら……」

 「あぁ、ちょっと来て貰うだけで大丈夫だよ」

 俺はそれを聞いて不安になった。
 行先は、と聞こうとしたが怖くて聞けなかった。

 「奏君、こっち来て」

 と、手招きされたが俺は焦った。

 「あの俺、今腰が抜けてて歩けないんです……」

 「え、大丈夫なの?そんなに怖かった?じゃあこうするよ」

 彼はいきなり俺を抱きかかえて歩き出した。

 「おいお前ら、車こっちに寄せてこい!」

 陸兎さんが、声を上げると周りにいた他の男たちが走り出した。

 「あの、こんなことしてもらわなくても……」

 「いいのいいの。あ、来た来た、ほらどうぞ……」 

 俺を車の中に下ろした。
 高そうな車内に少し恐縮してしまう。
 それ以前に今からヤクザに連れて行かれると思うとさっきよりも怖くなってきた。
 変に抵抗しない方がいいと思い何もしなかったが、今となると少し後悔してしまうことだ。
 それをできる限り隠しながら俺は走り出す車で体を震わせた。
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