55 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
55.サラの心配
しおりを挟む
「あら?」
休み時間にリーリウムとローラと共に教室でおしゃべりをしていたサラが、窓越しに校門から学園へ入ってきたアンドレアスの姿を見つけた。
「どうしましたの?」
「今朝、ヴィオラ様に会うために学園を休んだはずのお兄様が、そこを歩いていらっしゃったので……。」
「お姉さまに?」
「リーリウム様はご存知ありませんでしたの?
朝一番に公爵家から使いの方がいらっしゃって、ヴィオラ様からの手紙が届いたのです。
それで、お兄様はうきうきしながら準備なさっていたのよ。
だけど、さっきのお兄様は元気がないようでしたわ……。」
「何かあったのでしょうか?」
心配するリーリウムと、その言葉にうなずくローラ。
「少し心配なので、様子を見てきます!」
サラは、嫌な予感がしてアンドレアスの元へ向かった。
上の階にあるアンドレアスの教室に付き、兄を呼び出してもらおうと知り合いの令息を呼び止める。
「アンドレアスなら、あそこで女の子と話しているよ。」
教室を覗くと、そこにはアイリと談笑するアンドレアスの姿があった。
(さきほど歩いていた時は確かに元気がなかったのに……。
なぜアイリ嬢と?)
アイリと話す兄は、朗らかな笑顔を浮かべていた。
しばらくすると、アイリがアンドレアスとの話をやめて、教室の扉へ近づいてくる。
とっさに姿を隠して、アイリが去っていくのを確認してから、サラはアンドレアスの元へ行った。
「どういうことですの?」
サラは、怒りの感情をこめて兄に話しかける。
「ヴィオラとの用事が思ったよりも早く終わったから、学園に来たんだよ。」
笑顔で返すアンドレアス。
「そうではなく、何故アイリ嬢といっしょにいるのです?
彼女がリーリウム様たちにした仕打ちは、お兄様もご存じでしょう?」
「ああ、彼女の行動には事情があるみたいだよ。」
急にアイリの肩をもつアンドレアスに、サラは不信感をぬぐえない。
「事情があったとしても、アイリ嬢の行為は許されないことです。
それに、リーリウム様はお兄様にとって将来の義妹ではないですか。」
「うん。そうなんだけど、もしかするとその話もなくなるかもしれない。」
「え? ヴィオラ様と何があったんですか?」
「何も。すまないけど、サラ、兄の好きにさせてくれないかい?」
もうこれ以上は話したくないと、笑顔でサラを突き放すアンドレアス。
確かに、これ以上は教室で話す内容ではなさそうだった。
「お父様や大兄様に、報告しますから!」
サラはそう言い放つと、泣きそうな顔でアンドレアスの教室を後にした。
(お兄様とヴィオラ様の婚約がなくなってしまったら……。
リーリウム様との関係も終わってしまうかもしれない。
それに、お兄様がウェスペル公爵家を継ぐということで与えられていた恩恵もなくなってしまって、我が家は大丈夫なのかしら?
いくら大兄様が有能でも、まったく影響がないということはないのではないかしら?)
サラの頭の中は不安でいっぱいになっていく。
自分の教室に入ると、リーリウムとローラが出迎えてくれた。
「アンドレアス様は大丈夫でしたか?」
リーリウムが声をかける。
「それより、サラ様も顔色が悪いわ。」
ローラも心配して、顔を覗き込んでくれている。
(まだ、二人には言えないわ……。)
「大丈夫でした。ご心配いただいて、ありがとうございます。」
サラは友だちにすべてを話してしまいたいのを飲み込んで、精一杯笑顔を作った。
休み時間にリーリウムとローラと共に教室でおしゃべりをしていたサラが、窓越しに校門から学園へ入ってきたアンドレアスの姿を見つけた。
「どうしましたの?」
「今朝、ヴィオラ様に会うために学園を休んだはずのお兄様が、そこを歩いていらっしゃったので……。」
「お姉さまに?」
「リーリウム様はご存知ありませんでしたの?
朝一番に公爵家から使いの方がいらっしゃって、ヴィオラ様からの手紙が届いたのです。
それで、お兄様はうきうきしながら準備なさっていたのよ。
だけど、さっきのお兄様は元気がないようでしたわ……。」
「何かあったのでしょうか?」
心配するリーリウムと、その言葉にうなずくローラ。
「少し心配なので、様子を見てきます!」
サラは、嫌な予感がしてアンドレアスの元へ向かった。
上の階にあるアンドレアスの教室に付き、兄を呼び出してもらおうと知り合いの令息を呼び止める。
「アンドレアスなら、あそこで女の子と話しているよ。」
教室を覗くと、そこにはアイリと談笑するアンドレアスの姿があった。
(さきほど歩いていた時は確かに元気がなかったのに……。
なぜアイリ嬢と?)
アイリと話す兄は、朗らかな笑顔を浮かべていた。
しばらくすると、アイリがアンドレアスとの話をやめて、教室の扉へ近づいてくる。
とっさに姿を隠して、アイリが去っていくのを確認してから、サラはアンドレアスの元へ行った。
「どういうことですの?」
サラは、怒りの感情をこめて兄に話しかける。
「ヴィオラとの用事が思ったよりも早く終わったから、学園に来たんだよ。」
笑顔で返すアンドレアス。
「そうではなく、何故アイリ嬢といっしょにいるのです?
彼女がリーリウム様たちにした仕打ちは、お兄様もご存じでしょう?」
「ああ、彼女の行動には事情があるみたいだよ。」
急にアイリの肩をもつアンドレアスに、サラは不信感をぬぐえない。
「事情があったとしても、アイリ嬢の行為は許されないことです。
それに、リーリウム様はお兄様にとって将来の義妹ではないですか。」
「うん。そうなんだけど、もしかするとその話もなくなるかもしれない。」
「え? ヴィオラ様と何があったんですか?」
「何も。すまないけど、サラ、兄の好きにさせてくれないかい?」
もうこれ以上は話したくないと、笑顔でサラを突き放すアンドレアス。
確かに、これ以上は教室で話す内容ではなさそうだった。
「お父様や大兄様に、報告しますから!」
サラはそう言い放つと、泣きそうな顔でアンドレアスの教室を後にした。
(お兄様とヴィオラ様の婚約がなくなってしまったら……。
リーリウム様との関係も終わってしまうかもしれない。
それに、お兄様がウェスペル公爵家を継ぐということで与えられていた恩恵もなくなってしまって、我が家は大丈夫なのかしら?
いくら大兄様が有能でも、まったく影響がないということはないのではないかしら?)
サラの頭の中は不安でいっぱいになっていく。
自分の教室に入ると、リーリウムとローラが出迎えてくれた。
「アンドレアス様は大丈夫でしたか?」
リーリウムが声をかける。
「それより、サラ様も顔色が悪いわ。」
ローラも心配して、顔を覗き込んでくれている。
(まだ、二人には言えないわ……。)
「大丈夫でした。ご心配いただいて、ありがとうございます。」
サラは友だちにすべてを話してしまいたいのを飲み込んで、精一杯笑顔を作った。
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる