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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
33.お友だち作戦開始!
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リーリウムやルドヴィクと別れ、自分の教室へ向かうプリムラ。
レオポリス語作戦が上手くいったことには満足しているが、やはりルドヴィクといっしょに授業が受けられないことに寂しさも感じていた。
「プリムラ様!」
後ろから呼び止められ、振り返ると友人たちの姿があった。
上位貴族も下位貴族も分け隔てなく付き合うプリムラには、学園にすでにたくさんの友人がいる。
「まあ、みなさん、おはようございます。」
プリムラは多くの友人たちに囲まれて、きらきらとした笑顔を取り戻していった。
教室に入ると、これまで面識がなかった令嬢や子息たちにも、プリムラは自分から声をかける。
そのプリムラの美しさと気さくさに、みんなが魅了されていく。
一年生の教室は、プリムラを中心に大きな輪ができつつあった。
プリムラは、教室の隅の席に座り、静かに本を読む一人の少女に目をやった。
ジョンの妹、マリー・ハモンドだ。
プリムラを抑えて新入生総代を務めた才女だが、13歳の少女にしては長身で、背中を恥ずかしそうに丸めて本に顔をうずめるように読書する姿は、お世辞にも美しいとは言い難かった。
「マリー嬢は、あまりお友だちを作りたくないみたいですよ。
先ほど、挨拶をしたのですが、無視されてしまいましたもの。」
プリムラの視線に気づいたエレナ・トンプソン伯爵令嬢が、がっかりしながら話した。
「あら、そうですの……。」
少し思案したあと、プリムラはマリーの席へ近づいていく。
プリムラの周りに集まっていた生徒たちも固唾をのんで見守っている。
「マリー様、おはようございます。
わたくし、プリムラ・ウェスペルと申します。
ぜひ、お友だちになっていただきたいわ。」
プリムラは、輝くばかりの笑顔でマリーに握手を求めた。
「……。」
マリーは一瞬固まってプリムラの顔を見つめていたが、無言を貫いている。
「お友だちになってくださる??」
プリムラはひるまず、右手を突き出してさらに握手を求める。
「……す……。」
おずおずと手を出すマリーは、何事かをしゃべっている。
「ん?」
プリムラが聞き返すと、幾分か声のボリュームを上げる。
「よろしく、おねがいします……」
小さな声だが、確かに聞き取れた。
プリムラはそっとマリーの手を握ると、やさしく握手をする。
「これで、わたくしたちはお友だちね。」
マリーは、その言葉に少し驚いた顔をしたあと、ほのかに笑みを浮かべた。
(あらあら、まあ、とってもかわいらしいお顔だわ。)
美しいものやかわいらしいものが大好きなプリムラは、マリーのことが一気に大好きになった。
(もっと笑顔が見たいわ。)
「さきほど、エレナ嬢が挨拶に来たと思うのだけど……」
そう問われると、マリーは困った顔を浮かべる。
「わたくし、挨拶を返したのですが、声が小さくてエレナ嬢に届かなかったのです……」
やはり、小さな声でプリムラに答える。
「そうでしたの? エレナ様、こちらにいらっしゃって。」
急に声をかけられ、びっくりしつつもエレナはプリムラとマリーのそばにやってきた。
プリムラが事情を話して、無視をしたわけではないことを伝える。
「まあ、そうでしたか。わたくし、全く気が付かなくて……。
誤解をしてしまい、申し訳ありません。」
エレナが心底申し訳なさそうに謝罪をすると、マリーは手のひらをブンブンとふる。
「いえ、わたくしの方こそ!
わたくしなんかに話しかけてくださる令嬢がいらっしゃるとは思っていなくて……。
緊張をして声が出せなくて……。」
慌てながら、謝罪をする。
「わたくし、マリー様にお礼を言いたかったのです。
先日、おばあさまがあなたのお父さまのハモンド子爵様に診ていただいて、元気になったの。
おばあさまはお薬が苦手なのだけど、
それを聞いたハモンド子爵はお薬の代わりにチョコレートを処方してくださって……。
症状に合わせて、マリー様がチョコレートを作ってくださったと聞いたわ。
本当にありがとう。」
エレナから話しかけた理由を聞いたマリーは、びっくりした顔をしていた。
誰かに感謝されることなど、家族以外になかったからだった。
「ありがとうございます……。」
小さいが、しっかりとした声でエレナに礼を言うマリーは、先ほどと同じようにささやかだが微笑んでいた。
「チョコレートがお薬になるの?」
プリムラが聞くと、マリーはちょこんとうなずく。
「チョコレートの原料のカカオには、体にいい栄養がいっぱい詰まっています。
そこに、症状に合わせたスパイスなどを混ぜれば、薬のような効果も期待できます。
ただ、スイーツ店で買えるようなチョコレートは、お砂糖やミルクがたっぷり入っていて、あまり食べすぎると肥満や肌荒れに繋がってまうので、注意しなくてはいけません。」
「そうなのね。
美しくなれるチョコレートもあるのかしら?」
「そうですね……。いろいろとあります。
美肌や痩身の直接的なものもありますし、
便秘解消やストレス解消、不眠症解消をすることで女性の輝きを引き出すこともできます。」
気付くと、マリーやプリムラの周りには令嬢たちが集まってきていた。
13歳とはいえ、貴族令嬢。
みんな美しさを常に求めているのである。
レオポリス語作戦が上手くいったことには満足しているが、やはりルドヴィクといっしょに授業が受けられないことに寂しさも感じていた。
「プリムラ様!」
後ろから呼び止められ、振り返ると友人たちの姿があった。
上位貴族も下位貴族も分け隔てなく付き合うプリムラには、学園にすでにたくさんの友人がいる。
「まあ、みなさん、おはようございます。」
プリムラは多くの友人たちに囲まれて、きらきらとした笑顔を取り戻していった。
教室に入ると、これまで面識がなかった令嬢や子息たちにも、プリムラは自分から声をかける。
そのプリムラの美しさと気さくさに、みんなが魅了されていく。
一年生の教室は、プリムラを中心に大きな輪ができつつあった。
プリムラは、教室の隅の席に座り、静かに本を読む一人の少女に目をやった。
ジョンの妹、マリー・ハモンドだ。
プリムラを抑えて新入生総代を務めた才女だが、13歳の少女にしては長身で、背中を恥ずかしそうに丸めて本に顔をうずめるように読書する姿は、お世辞にも美しいとは言い難かった。
「マリー嬢は、あまりお友だちを作りたくないみたいですよ。
先ほど、挨拶をしたのですが、無視されてしまいましたもの。」
プリムラの視線に気づいたエレナ・トンプソン伯爵令嬢が、がっかりしながら話した。
「あら、そうですの……。」
少し思案したあと、プリムラはマリーの席へ近づいていく。
プリムラの周りに集まっていた生徒たちも固唾をのんで見守っている。
「マリー様、おはようございます。
わたくし、プリムラ・ウェスペルと申します。
ぜひ、お友だちになっていただきたいわ。」
プリムラは、輝くばかりの笑顔でマリーに握手を求めた。
「……。」
マリーは一瞬固まってプリムラの顔を見つめていたが、無言を貫いている。
「お友だちになってくださる??」
プリムラはひるまず、右手を突き出してさらに握手を求める。
「……す……。」
おずおずと手を出すマリーは、何事かをしゃべっている。
「ん?」
プリムラが聞き返すと、幾分か声のボリュームを上げる。
「よろしく、おねがいします……」
小さな声だが、確かに聞き取れた。
プリムラはそっとマリーの手を握ると、やさしく握手をする。
「これで、わたくしたちはお友だちね。」
マリーは、その言葉に少し驚いた顔をしたあと、ほのかに笑みを浮かべた。
(あらあら、まあ、とってもかわいらしいお顔だわ。)
美しいものやかわいらしいものが大好きなプリムラは、マリーのことが一気に大好きになった。
(もっと笑顔が見たいわ。)
「さきほど、エレナ嬢が挨拶に来たと思うのだけど……」
そう問われると、マリーは困った顔を浮かべる。
「わたくし、挨拶を返したのですが、声が小さくてエレナ嬢に届かなかったのです……」
やはり、小さな声でプリムラに答える。
「そうでしたの? エレナ様、こちらにいらっしゃって。」
急に声をかけられ、びっくりしつつもエレナはプリムラとマリーのそばにやってきた。
プリムラが事情を話して、無視をしたわけではないことを伝える。
「まあ、そうでしたか。わたくし、全く気が付かなくて……。
誤解をしてしまい、申し訳ありません。」
エレナが心底申し訳なさそうに謝罪をすると、マリーは手のひらをブンブンとふる。
「いえ、わたくしの方こそ!
わたくしなんかに話しかけてくださる令嬢がいらっしゃるとは思っていなくて……。
緊張をして声が出せなくて……。」
慌てながら、謝罪をする。
「わたくし、マリー様にお礼を言いたかったのです。
先日、おばあさまがあなたのお父さまのハモンド子爵様に診ていただいて、元気になったの。
おばあさまはお薬が苦手なのだけど、
それを聞いたハモンド子爵はお薬の代わりにチョコレートを処方してくださって……。
症状に合わせて、マリー様がチョコレートを作ってくださったと聞いたわ。
本当にありがとう。」
エレナから話しかけた理由を聞いたマリーは、びっくりした顔をしていた。
誰かに感謝されることなど、家族以外になかったからだった。
「ありがとうございます……。」
小さいが、しっかりとした声でエレナに礼を言うマリーは、先ほどと同じようにささやかだが微笑んでいた。
「チョコレートがお薬になるの?」
プリムラが聞くと、マリーはちょこんとうなずく。
「チョコレートの原料のカカオには、体にいい栄養がいっぱい詰まっています。
そこに、症状に合わせたスパイスなどを混ぜれば、薬のような効果も期待できます。
ただ、スイーツ店で買えるようなチョコレートは、お砂糖やミルクがたっぷり入っていて、あまり食べすぎると肥満や肌荒れに繋がってまうので、注意しなくてはいけません。」
「そうなのね。
美しくなれるチョコレートもあるのかしら?」
「そうですね……。いろいろとあります。
美肌や痩身の直接的なものもありますし、
便秘解消やストレス解消、不眠症解消をすることで女性の輝きを引き出すこともできます。」
気付くと、マリーやプリムラの周りには令嬢たちが集まってきていた。
13歳とはいえ、貴族令嬢。
みんな美しさを常に求めているのである。
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