上 下
79 / 122
セカンドエピソード ~魔界戦争~

65.現れたもう一人の鳥魔

しおりを挟む
ゼインファード、ロージュが率いる、妖魔のほぼ全軍は今鳥魔界の本丸である敵の居城が視認できる距離にいた。ゼインファードの超広範囲転移魔法により瞬間移動する事でこの機動力を得た訳だが、未だ彼らは鳥魔軍には気付かれていない。

というのも、魔力の扱いに長けた彼らだからこその魔力を利用したレーダーなり、バリアーなりが使用できるわけであり、全ての間族が一様に行える訳では無いのである。

つまり、鳥魔族にはある程度の距離にいる敵は感知できない。

それは、彼らの圧倒的な戦力からくる驕りによるものでもあるだろう。攻め込まれたとしても、迎え撃てばいいだけ、と。

「陛下、攻め込むならすぐの方がいいッスよ!エアの……エアの仇討を……!」

「おーい、落ち着けロージュ君。焦ったが負けなのが戦争だぜ?とりあえず各部隊に全方位魔狼の陣を展開させて待機させておけよ」

鳥魔族の居城はかなりのサイズ感であった。妖魔の宮殿もバンバスたちからすれば相当大きいものではあったが、もし彼らがこれを見たのならさらに驚愕していただろう。およそ地球では考えられない大きさである。

それを、全ての方角からぐるっと取り囲むようにして全軍を六つに分け、さながら弓矢の矢のように陣形を組む。突撃形態である。

「よしよし、スムーズでよろしい。さて、おっぱじめるとするかァ!全軍、敵居城に向け範囲魔法で牽制!!盛大な花火を打ち上げてやれ!!」

ゼインファードの一声が発せられた後、すぐに全軍の魔法攻撃が始まった。周囲が魔法で明るくなり、夜であることを忘れさせるほどの眩さである。

ある程度攻撃を続けていると、居城から巣を刺激された蜂のように鳥魔兵が出撃してきた。

それを待っていましたというように、ゼインファードがさらなる命令を発令する。

「よぉっし!敵さんがおいでなすったぜ、お前らァ!全軍突っ込め!!」

「「うぉぉぉぉお~~~!!」」

鳥魔界にて、妖魔と鳥魔の何度目かの激戦の火蓋が切って落とされた。









「おおお!!当たったら怪我じゃ済まないッスよ~~~!!」

ここが敵のホームであろうとなかろうと、ロージュは相も変わらず無茶苦茶な強さで敵軍を翻弄した。その身に携えるまさに一振り十首の大剣が、次々に鳥魔兵を吹き飛ばし、叩き斬り、薙ぎ払っていく。

蹴散らされていく鳥魔兵たちの中に、一人。ただならぬ実力を持った兵がいることも気が付かずに。

「よぉぉおいしょ~~!!」

流れるように片手で繰り出されるロージュの大剣。それがまたもや、鳥魔兵たちを蹴散らすものと思われたその瞬間である。

この世のものとは思えないほどの金属音が辺りに鳴り響いたのだ。それが金属音と判別したものも多くないだろう。その轟音でその場周辺の時が、一瞬止まった。

誰もが動きを止め、その状況を目に焼き付けた。

ロージュの大剣を、これもまた剣で受け止めている兵がいる。その、異常事態を。

「ッ!やるッスね~、これを止めたことがあるのは筆頭くらいのものッスよ」

「フ、確かに妖魔が放ったとは思えぬ剛剣よ……これでは我が軍の兵では止められぬのも無理はあるまい。故に、貴様はこの私がここで斬る!!」

ロージュの大剣を受け止めていた剣が、徐々にロージュを押し返していく。信じ難い事だが、その兵は体格も、そして剣の大きさも、全てロージュには及んでいない。特に剣に関しては受け止めただけで折れてしまいそうに見える。

だがそれでも確かに、ゆっくりと、少しずつではあるが、ロージュを押している。

「ッ、このパワー……!?」

「妖魔の強き者よ。これは力では無い……技だ」

瞬間。その兵の剣が返され、ロージュの大剣は地面に叩きつけられた。

「ハァッ!!」

すぐさまロージュ目掛けて剣が伸びてくる。その素早さを、ロージュは知っていた。かつてゼノと改まって手合わせした際の、その時のキレが、今こうして襲いかかってきたのだ。

この時、地面に大剣が叩きつけられた際に、ロージュが咄嗟の判断で剣を離し後ろに飛びさすっていなければ、間違いなく腕を斬り落とされていただろう。

その一瞬の判断が、ロージュの頬を掠めるだけに留まった。

「ほう……天性の勘、というものか。しかしながらそれも実力!いいだろう、剣をとれい!無手の者を斬殺する趣味は私にはない……」

「なんッスって~?自分を馬鹿にしてるッスか?敵に武器を取りに行かせるなんて正気じゃないッスね~……それともその隙に斬る算段ッスか?」

このロージュ、大剣だけが武器ではない。妖魔人にしては珍しく、体術にも相当の定評があった。その剛拳はまさに魔族最強の原魔族のように強力であると言われているほどである。

しかしこの戦場において、敵に武器を拾えと言うそれは侮辱以外の何物でもない。

「フッ、そんな汚い真似はせんよ……私はカルダロースとは違うのでな。さあ剣を!私は正々堂々と一騎打ちを所望する」

「そんなものに構ってるヒマは無いッスね~!!自分は筆頭の代わりにこの位置にいるんスよ!!」

「ならば貴様がその気になるまで私が仕掛けるまでよ!!我が名はブリーダス!鳥魔界王ジーグリードの片腕なり!!」











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...