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セカンドエピソード ~魔界戦争~
65.現れたもう一人の鳥魔
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ゼインファード、ロージュが率いる、妖魔のほぼ全軍は今鳥魔界の本丸である敵の居城が視認できる距離にいた。ゼインファードの超広範囲転移魔法により瞬間移動する事でこの機動力を得た訳だが、未だ彼らは鳥魔軍には気付かれていない。
というのも、魔力の扱いに長けた彼らだからこその魔力を利用したレーダーなり、バリアーなりが使用できるわけであり、全ての間族が一様に行える訳では無いのである。
つまり、鳥魔族にはある程度の距離にいる敵は感知できない。
それは、彼らの圧倒的な戦力からくる驕りによるものでもあるだろう。攻め込まれたとしても、迎え撃てばいいだけ、と。
「陛下、攻め込むならすぐの方がいいッスよ!エアの……エアの仇討を……!」
「おーい、落ち着けロージュ君。焦ったが負けなのが戦争だぜ?とりあえず各部隊に全方位魔狼の陣を展開させて待機させておけよ」
鳥魔族の居城はかなりのサイズ感であった。妖魔の宮殿もバンバスたちからすれば相当大きいものではあったが、もし彼らがこれを見たのならさらに驚愕していただろう。およそ地球では考えられない大きさである。
それを、全ての方角からぐるっと取り囲むようにして全軍を六つに分け、さながら弓矢の矢のように陣形を組む。突撃形態である。
「よしよし、スムーズでよろしい。さて、おっぱじめるとするかァ!全軍、敵居城に向け範囲魔法で牽制!!盛大な花火を打ち上げてやれ!!」
ゼインファードの一声が発せられた後、すぐに全軍の魔法攻撃が始まった。周囲が魔法で明るくなり、夜であることを忘れさせるほどの眩さである。
ある程度攻撃を続けていると、居城から巣を刺激された蜂のように鳥魔兵が出撃してきた。
それを待っていましたというように、ゼインファードがさらなる命令を発令する。
「よぉっし!敵さんがおいでなすったぜ、お前らァ!全軍突っ込め!!」
「「うぉぉぉぉお~~~!!」」
鳥魔界にて、妖魔と鳥魔の何度目かの激戦の火蓋が切って落とされた。
「おおお!!当たったら怪我じゃ済まないッスよ~~~!!」
ここが敵のホームであろうとなかろうと、ロージュは相も変わらず無茶苦茶な強さで敵軍を翻弄した。その身に携えるまさに一振り十首の大剣が、次々に鳥魔兵を吹き飛ばし、叩き斬り、薙ぎ払っていく。
蹴散らされていく鳥魔兵たちの中に、一人。ただならぬ実力を持った兵がいることも気が付かずに。
「よぉぉおいしょ~~!!」
流れるように片手で繰り出されるロージュの大剣。それがまたもや、鳥魔兵たちを蹴散らすものと思われたその瞬間である。
この世のものとは思えないほどの金属音が辺りに鳴り響いたのだ。それが金属音と判別したものも多くないだろう。その轟音でその場周辺の時が、一瞬止まった。
誰もが動きを止め、その状況を目に焼き付けた。
ロージュの大剣を、これもまた剣で受け止めている兵がいる。その、異常事態を。
「ッ!やるッスね~、これを止めたことがあるのは筆頭くらいのものッスよ」
「フ、確かに妖魔が放ったとは思えぬ剛剣よ……これでは我が軍の兵では止められぬのも無理はあるまい。故に、貴様はこの私がここで斬る!!」
ロージュの大剣を受け止めていた剣が、徐々にロージュを押し返していく。信じ難い事だが、その兵は体格も、そして剣の大きさも、全てロージュには及んでいない。特に剣に関しては受け止めただけで折れてしまいそうに見える。
だがそれでも確かに、ゆっくりと、少しずつではあるが、ロージュを押している。
「ッ、このパワー……!?」
「妖魔の強き者よ。これは力では無い……技だ」
瞬間。その兵の剣が返され、ロージュの大剣は地面に叩きつけられた。
「ハァッ!!」
すぐさまロージュ目掛けて剣が伸びてくる。その素早さを、ロージュは知っていた。かつてゼノと改まって手合わせした際の、その時のキレが、今こうして襲いかかってきたのだ。
この時、地面に大剣が叩きつけられた際に、ロージュが咄嗟の判断で剣を離し後ろに飛びさすっていなければ、間違いなく腕を斬り落とされていただろう。
その一瞬の判断が、ロージュの頬を掠めるだけに留まった。
「ほう……天性の勘、というものか。しかしながらそれも実力!いいだろう、剣をとれい!無手の者を斬殺する趣味は私にはない……」
「なんッスって~?自分を馬鹿にしてるッスか?敵に武器を取りに行かせるなんて正気じゃないッスね~……それともその隙に斬る算段ッスか?」
このロージュ、大剣だけが武器ではない。妖魔人にしては珍しく、体術にも相当の定評があった。その剛拳はまさに魔族最強の原魔族のように強力であると言われているほどである。
しかしこの戦場において、敵に武器を拾えと言うそれは侮辱以外の何物でもない。
「フッ、そんな汚い真似はせんよ……私はカルダロースとは違うのでな。さあ剣を!私は正々堂々と一騎打ちを所望する」
「そんなものに構ってるヒマは無いッスね~!!自分は筆頭の代わりにこの位置にいるんスよ!!」
「ならば貴様がその気になるまで私が仕掛けるまでよ!!我が名はブリーダス!鳥魔界王ジーグリードの片腕なり!!」
というのも、魔力の扱いに長けた彼らだからこその魔力を利用したレーダーなり、バリアーなりが使用できるわけであり、全ての間族が一様に行える訳では無いのである。
つまり、鳥魔族にはある程度の距離にいる敵は感知できない。
それは、彼らの圧倒的な戦力からくる驕りによるものでもあるだろう。攻め込まれたとしても、迎え撃てばいいだけ、と。
「陛下、攻め込むならすぐの方がいいッスよ!エアの……エアの仇討を……!」
「おーい、落ち着けロージュ君。焦ったが負けなのが戦争だぜ?とりあえず各部隊に全方位魔狼の陣を展開させて待機させておけよ」
鳥魔族の居城はかなりのサイズ感であった。妖魔の宮殿もバンバスたちからすれば相当大きいものではあったが、もし彼らがこれを見たのならさらに驚愕していただろう。およそ地球では考えられない大きさである。
それを、全ての方角からぐるっと取り囲むようにして全軍を六つに分け、さながら弓矢の矢のように陣形を組む。突撃形態である。
「よしよし、スムーズでよろしい。さて、おっぱじめるとするかァ!全軍、敵居城に向け範囲魔法で牽制!!盛大な花火を打ち上げてやれ!!」
ゼインファードの一声が発せられた後、すぐに全軍の魔法攻撃が始まった。周囲が魔法で明るくなり、夜であることを忘れさせるほどの眩さである。
ある程度攻撃を続けていると、居城から巣を刺激された蜂のように鳥魔兵が出撃してきた。
それを待っていましたというように、ゼインファードがさらなる命令を発令する。
「よぉっし!敵さんがおいでなすったぜ、お前らァ!全軍突っ込め!!」
「「うぉぉぉぉお~~~!!」」
鳥魔界にて、妖魔と鳥魔の何度目かの激戦の火蓋が切って落とされた。
「おおお!!当たったら怪我じゃ済まないッスよ~~~!!」
ここが敵のホームであろうとなかろうと、ロージュは相も変わらず無茶苦茶な強さで敵軍を翻弄した。その身に携えるまさに一振り十首の大剣が、次々に鳥魔兵を吹き飛ばし、叩き斬り、薙ぎ払っていく。
蹴散らされていく鳥魔兵たちの中に、一人。ただならぬ実力を持った兵がいることも気が付かずに。
「よぉぉおいしょ~~!!」
流れるように片手で繰り出されるロージュの大剣。それがまたもや、鳥魔兵たちを蹴散らすものと思われたその瞬間である。
この世のものとは思えないほどの金属音が辺りに鳴り響いたのだ。それが金属音と判別したものも多くないだろう。その轟音でその場周辺の時が、一瞬止まった。
誰もが動きを止め、その状況を目に焼き付けた。
ロージュの大剣を、これもまた剣で受け止めている兵がいる。その、異常事態を。
「ッ!やるッスね~、これを止めたことがあるのは筆頭くらいのものッスよ」
「フ、確かに妖魔が放ったとは思えぬ剛剣よ……これでは我が軍の兵では止められぬのも無理はあるまい。故に、貴様はこの私がここで斬る!!」
ロージュの大剣を受け止めていた剣が、徐々にロージュを押し返していく。信じ難い事だが、その兵は体格も、そして剣の大きさも、全てロージュには及んでいない。特に剣に関しては受け止めただけで折れてしまいそうに見える。
だがそれでも確かに、ゆっくりと、少しずつではあるが、ロージュを押している。
「ッ、このパワー……!?」
「妖魔の強き者よ。これは力では無い……技だ」
瞬間。その兵の剣が返され、ロージュの大剣は地面に叩きつけられた。
「ハァッ!!」
すぐさまロージュ目掛けて剣が伸びてくる。その素早さを、ロージュは知っていた。かつてゼノと改まって手合わせした際の、その時のキレが、今こうして襲いかかってきたのだ。
この時、地面に大剣が叩きつけられた際に、ロージュが咄嗟の判断で剣を離し後ろに飛びさすっていなければ、間違いなく腕を斬り落とされていただろう。
その一瞬の判断が、ロージュの頬を掠めるだけに留まった。
「ほう……天性の勘、というものか。しかしながらそれも実力!いいだろう、剣をとれい!無手の者を斬殺する趣味は私にはない……」
「なんッスって~?自分を馬鹿にしてるッスか?敵に武器を取りに行かせるなんて正気じゃないッスね~……それともその隙に斬る算段ッスか?」
このロージュ、大剣だけが武器ではない。妖魔人にしては珍しく、体術にも相当の定評があった。その剛拳はまさに魔族最強の原魔族のように強力であると言われているほどである。
しかしこの戦場において、敵に武器を拾えと言うそれは侮辱以外の何物でもない。
「フッ、そんな汚い真似はせんよ……私はカルダロースとは違うのでな。さあ剣を!私は正々堂々と一騎打ちを所望する」
「そんなものに構ってるヒマは無いッスね~!!自分は筆頭の代わりにこの位置にいるんスよ!!」
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