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セカンドエピソード ~魔界戦争~
59.激烈戦線
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妖魔と鳥魔のぶつかり合い。
そして、わずかに人間。そんな奇妙な闘いではあるが、しかしやらねばならないだろう。
この闘いに敗れれば、妖魔全体として敗北を喫することになる。否、この闘いだけではない。今後どの闘いにも敗けられない。
「さあ、次に叩き斬られたいのは誰だ!!」
そんな中で、バンバスは絶好調だった。有象無象の鳥魔軍を相手に手こずることもなく次から次に斬っては妖魔軍の士気を上げることに貢献している。
ティムも銃だから後方からの射撃、というわけではない。そう、近かろうが遠かろうが関係はないのだ。
「うおおおお!!」
射撃と格闘を織り交ぜた、ティム本来の戦闘が、彼の中で思い出され始めていた。若かりし頃の闘いが記憶として蘇る。
思えばあの頃は闘って闘って、強くなることだけ考えていた。まさか三十路を超えてからこんな事になるとは思いもよらなかった。
だが一つ、自分達の気持ちに釈然としない感情があった。
妖魔の者達は自分達の為に闘う、それは当然である。では自分達は何の為に闘うのか?ということである。
妖魔という友軍を見捨ててはおけないから?それともここで見捨てれば自分が納得いかないから?関係なく助けてあげたいから?
どれも違うのだ。
「斬ッッッ!!」
ああして次々に敵を斬り続けているバンバスも同じことを考えているのだろうか?
それとも自分だけかはわからないが、しかしそれはティムにとって大きい部分だった。闘う理由。なんの為の闘いなのかが、彼にはハッキリとしていなかった。
エアが見限られた時、彼は確かに憤りや悔しさを感じて自分の無力を呪った。それは戦友としてである。
では妖魔全体を救ってやりたいと感じているかと言われればそうではないのだ。いや、無論救ってやれればそれが一番だが、それが理由で闘っている訳ではなかった。
そんな聖人君子のような思考ではない。
そうして考え事にふけりながら闘っていると、状況が動いた。
なんと銃身を斬り落とされたのだ。もう一丁残ってはいるが二丁拳銃を得意とするティムにとってこれは痛手である。
「この……ッ!」
咄嗟に銃身を斬ったその鳥魔兵に狙いをつける。
そこで彼は気がつくのだ。
こいつは、あの時の鳥魔兵であると。
「ヒヒ……人間、ここにも人間がいるぜ……ったくよォ、なんなんだオメーら。戦争に参加して英雄きどりかァ?!」
「ッッッ!!」
カルダロース。不死の鳥と名乗るあの男が、一気に剣による連撃を放ってくる。それまで感じなかった、危機感がティムに押し寄せる。危機感、というよりは斬られるかもしれないという恐怖感、と言った方が正確かもしれない。
「こんのォ!!」
その剣を持つ手を蹴り上げ、なんとか連撃を止める。そうしてその状態から、残った銃で一撃を放った。
狙いはコアではない。ゼノがコアを貫いたはずなのに生きていたり、ヴァックスも話によれば同じ現象が起きていたようなので、この男にコアへの攻撃は有効打ではないのかもしれないと考えたからだ。
だから、ティムは頭を狙った。
「頭を吹っ飛ばしてやる!!」
至近距離から放たれる、メガキャノン。その反動でティムは後方に吹っ飛び、カルダロースはそれを直撃した。
だが、やはり、というか当然。すぐにダメージの再生が始まりやはり決定打ではない。
「くそ……!こいつどうなってんだよ!」
「ヒヒ……誰も俺を殺せない、あの四天王筆頭のゼノでさえこの俺は殺せなかった!お前ごときが俺を殺せる訳ねえよァ!!」
すぐにティムは立ち上がって、改めてもう一発メガキャノンを放った。そうしなければ距離を詰めてきそうな雰囲気を感じ取ったからだ。
だがそれを悠々と回避され、カルダロースはティムの予想通りに距離を詰めてきた。
「くっ……そ!!」
翼での空中浮遊のスピードが異常な速さなのだ。狙い撃つ事も出来るが、だがどこを撃てばいいのか?
頭にメガキャノンを直撃させてもダメだった。コアを攻撃しても死ななかった。
この男はどうすれば倒せるのか?
「ヒヒ!!テメェなんぞ細切れにしてやるぜェェ!!この下等生物がよォォォ!!」
「チッ!!」
投擲したのは、譲りうけた小刀だった。ナイフほどの大きさのそれを放るのは容易で、エネルギーを込めたそれはすぐにカルダロースに到達した。だが狙いをつけてマトに投げた訳では無い為、あらぬ方向へそれは飛んだ。
脳天か、コアに刺さればいい。そう考えていたのが、右胸に行ったのだ。これでは意味がない。頭にメガキャノンを直撃しても有効ではなかったのに、右胸にナイフが刺さった程度では。
「ぐうッ?!」
と、思っていた。
右胸にナイフが刺さった程度ではどうにもならないと。
「おごッ……おのれこの下等生物がッ……!!」
なにやら悶えている。エネルギーを込めたからか、深く刺さったのだろうか?確かに再生が出来たとしても痛みは感じるだろうが。
しかし動きを止めたのは好都合である。棚からぼたもちではあるが、しかしこの好機を逃す手はない。
「あり弾全部持っていけ!!」
空中で動きの止まったカルダロースに残った弾を次々速射していく。素早いリロードで隙を作らない。
このカルダロースという男、他の鳥魔兵と違い鎧を来ていないのだ。上半身は何か麻布のようなものを羽織ってはいるが、鎧ではない。
それが結果として全弾命中に繋がった。もしも鎧を装備していたならエネルギー弾でなければいけなかったろう。
「ごッ!!がッ!!ぐッ!!」
決定的に先程までとは違う。手応えがある。そして、カルダロース自体にも余裕が無いようだ。
そうして全弾撃ち尽くしたティムは、最後に天に向けて閃光を放った。
一筋の光が戦場で天に昇って行く。
そして、わずかに人間。そんな奇妙な闘いではあるが、しかしやらねばならないだろう。
この闘いに敗れれば、妖魔全体として敗北を喫することになる。否、この闘いだけではない。今後どの闘いにも敗けられない。
「さあ、次に叩き斬られたいのは誰だ!!」
そんな中で、バンバスは絶好調だった。有象無象の鳥魔軍を相手に手こずることもなく次から次に斬っては妖魔軍の士気を上げることに貢献している。
ティムも銃だから後方からの射撃、というわけではない。そう、近かろうが遠かろうが関係はないのだ。
「うおおおお!!」
射撃と格闘を織り交ぜた、ティム本来の戦闘が、彼の中で思い出され始めていた。若かりし頃の闘いが記憶として蘇る。
思えばあの頃は闘って闘って、強くなることだけ考えていた。まさか三十路を超えてからこんな事になるとは思いもよらなかった。
だが一つ、自分達の気持ちに釈然としない感情があった。
妖魔の者達は自分達の為に闘う、それは当然である。では自分達は何の為に闘うのか?ということである。
妖魔という友軍を見捨ててはおけないから?それともここで見捨てれば自分が納得いかないから?関係なく助けてあげたいから?
どれも違うのだ。
「斬ッッッ!!」
ああして次々に敵を斬り続けているバンバスも同じことを考えているのだろうか?
それとも自分だけかはわからないが、しかしそれはティムにとって大きい部分だった。闘う理由。なんの為の闘いなのかが、彼にはハッキリとしていなかった。
エアが見限られた時、彼は確かに憤りや悔しさを感じて自分の無力を呪った。それは戦友としてである。
では妖魔全体を救ってやりたいと感じているかと言われればそうではないのだ。いや、無論救ってやれればそれが一番だが、それが理由で闘っている訳ではなかった。
そんな聖人君子のような思考ではない。
そうして考え事にふけりながら闘っていると、状況が動いた。
なんと銃身を斬り落とされたのだ。もう一丁残ってはいるが二丁拳銃を得意とするティムにとってこれは痛手である。
「この……ッ!」
咄嗟に銃身を斬ったその鳥魔兵に狙いをつける。
そこで彼は気がつくのだ。
こいつは、あの時の鳥魔兵であると。
「ヒヒ……人間、ここにも人間がいるぜ……ったくよォ、なんなんだオメーら。戦争に参加して英雄きどりかァ?!」
「ッッッ!!」
カルダロース。不死の鳥と名乗るあの男が、一気に剣による連撃を放ってくる。それまで感じなかった、危機感がティムに押し寄せる。危機感、というよりは斬られるかもしれないという恐怖感、と言った方が正確かもしれない。
「こんのォ!!」
その剣を持つ手を蹴り上げ、なんとか連撃を止める。そうしてその状態から、残った銃で一撃を放った。
狙いはコアではない。ゼノがコアを貫いたはずなのに生きていたり、ヴァックスも話によれば同じ現象が起きていたようなので、この男にコアへの攻撃は有効打ではないのかもしれないと考えたからだ。
だから、ティムは頭を狙った。
「頭を吹っ飛ばしてやる!!」
至近距離から放たれる、メガキャノン。その反動でティムは後方に吹っ飛び、カルダロースはそれを直撃した。
だが、やはり、というか当然。すぐにダメージの再生が始まりやはり決定打ではない。
「くそ……!こいつどうなってんだよ!」
「ヒヒ……誰も俺を殺せない、あの四天王筆頭のゼノでさえこの俺は殺せなかった!お前ごときが俺を殺せる訳ねえよァ!!」
すぐにティムは立ち上がって、改めてもう一発メガキャノンを放った。そうしなければ距離を詰めてきそうな雰囲気を感じ取ったからだ。
だがそれを悠々と回避され、カルダロースはティムの予想通りに距離を詰めてきた。
「くっ……そ!!」
翼での空中浮遊のスピードが異常な速さなのだ。狙い撃つ事も出来るが、だがどこを撃てばいいのか?
頭にメガキャノンを直撃させてもダメだった。コアを攻撃しても死ななかった。
この男はどうすれば倒せるのか?
「ヒヒ!!テメェなんぞ細切れにしてやるぜェェ!!この下等生物がよォォォ!!」
「チッ!!」
投擲したのは、譲りうけた小刀だった。ナイフほどの大きさのそれを放るのは容易で、エネルギーを込めたそれはすぐにカルダロースに到達した。だが狙いをつけてマトに投げた訳では無い為、あらぬ方向へそれは飛んだ。
脳天か、コアに刺さればいい。そう考えていたのが、右胸に行ったのだ。これでは意味がない。頭にメガキャノンを直撃しても有効ではなかったのに、右胸にナイフが刺さった程度では。
「ぐうッ?!」
と、思っていた。
右胸にナイフが刺さった程度ではどうにもならないと。
「おごッ……おのれこの下等生物がッ……!!」
なにやら悶えている。エネルギーを込めたからか、深く刺さったのだろうか?確かに再生が出来たとしても痛みは感じるだろうが。
しかし動きを止めたのは好都合である。棚からぼたもちではあるが、しかしこの好機を逃す手はない。
「あり弾全部持っていけ!!」
空中で動きの止まったカルダロースに残った弾を次々速射していく。素早いリロードで隙を作らない。
このカルダロースという男、他の鳥魔兵と違い鎧を来ていないのだ。上半身は何か麻布のようなものを羽織ってはいるが、鎧ではない。
それが結果として全弾命中に繋がった。もしも鎧を装備していたならエネルギー弾でなければいけなかったろう。
「ごッ!!がッ!!ぐッ!!」
決定的に先程までとは違う。手応えがある。そして、カルダロース自体にも余裕が無いようだ。
そうして全弾撃ち尽くしたティムは、最後に天に向けて閃光を放った。
一筋の光が戦場で天に昇って行く。
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