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ファーストエピソード ~決戦へ~
26.ラストステージ
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「う、うおおお!!」
体中を包んでいた、あの白い、優しいエネルギーが、どんどん抜けていくのがわかった。
離れていく。突風が吹いているように、抗えない力が働いている。その中心にいるのはレクスァ、あの黒の象徴なのだ。
「貴様ごときがやってのける技を、この私が出来ないとでも思ったか?それに、吸収が貴様の専売特許と思うな」
さらに力を増し、レクスァは高らかに笑う。
「貴様の白が全てを塗り替えるならば、私の黒は全てを飲み込む……どんな色も関係ない、全ては闇に還る」
山はすぐに荒れ果てた。もともとヴァンにこれでもかと言うほど吸い上げられていた状態から、今度はレクスァにより一層強烈に吸い上げられたのだ、突然である。
その効果範囲も脅威的であった。広範囲に渡り、あたり一面が暗黒に包まれる。空も地も海も、全てが闇の中に。
「こっ、この中の生物が対象になってるってのかよ!」
「その通りだ……まあ、こんな所か」
しばらくしてようやくその吸収は留まった。もはやヴァンが吸収できる生命力は何一つとて残ってはいない。なんとかレクスァの吸収も街までは及んでいないようだが、それでもこの辺りは死んでしまった。
そして同時に、目の前の闇はかつてないほどに膨れ上がっている。
「ま、参ったぜ……せっかく見えてた勝機が……」
これを使ったところで、勝てないかもしれない……という、ルーツァークの言葉を思い出し、ヴァンは思わず口元が緩んだ。
あの時は構わないと思っていたが、いざ本当に勝てないという状況に追いやられると、なぜだ、なんて理不尽なことを考えるものなのだと。
「俺のエネルギーはまだ尽きちゃいねえ……黒は全てを飲み込むと言ったな、それは間違いだぜ。現に俺のエネルギーは飲み込めなかったようだしなァ」
しかし、それでも。究極燃焼による外部からのエネルギー供給も、レクスァからの吸収も出来なくなり、かつレクスァは強烈なパワーアップ。
状況が最悪なのは誰の目にも明らかである。
「フン、しかしまあ……この決戦にこの荒野は似つかわしくあるまい」
やせ細り、死んだ大地。自分たちの手でそうしておいて、よくも言ったものだが。
「な、なにをする気だ!」
「決まっている……貴様にももっとやる気を出してもらう為に新しいステージを用意してやるだけのこと」
そう言うとレクスァは地面に手を開いて構える。次第にその手のひらにエネルギーが集まり始め、渦を巻く。
渦は段々と範囲を広めていき、そして次の瞬間に一気に収束。放たれたそれは矢のように地を貫いていった。
視界が揺れる。
のではない。大地が振動したのだ。
ほんの一瞬ではあるが、まるで山がひっくり返るのではないかと思うような振動。
「て、テメェ~!何をしやがった!」
「来い……灼熱よ」
地面のそこからどんどんと迫ってくるものがある。恐怖心を覚えながら、直感的にそれが何なのかすぐにヴァンは理解した。
噴火だ。
「うおおおーーーッッ!!」
耳をつんざく激しい炸裂音。轟音。マグマが噴き出し山が赤く染まるまで時間はかからなかった。ほんの一瞬の出来事。夢のような現実。
「フハハハハ!!さあ、これで貴様にも時間は無いぞ!早くしなければ自分の身が無事には済まない……もっとも私を倒したところで、リオスは灼熱に焼かれているかもしれないがなァ!!」
「この……ッ!!」
リオスまでは、この裏山からは距離はあるにはある。この噴火で直接的な被害が出ることは考えにくいが、万が一という事もある。レクスァが起こしたこれがどれほどの規模のものなのかはわからないが、しかし油断はできない。
なにより、今現在最も危険であるのは自分なのだから。
「こんの無茶苦茶ヤローが~~~!!」
マグマは近づいてきていない。だが強烈な砲弾のような噴出岩が次々に飛来して来ている。
どうやらマグマは噴出せず、中で爆発を起こしているようだ。さきほどから地鳴りがやまないのはその為だろう。
「一気にケリをつけるしかねぇ!!」
全身のエネルギーを爆発させ、特攻する。もはや後先など考えていられない。今の状態でどれくらいエネルギーが持続するかはわからないが、ヴァンは全開でアクセルを踏んだ。
「フハハハハ!!あとが無いなァ!さあ来い!完膚無きまでに打ち砕いてくれる!!」
飛んでくる噴出岩を避けながら、レクスァを相手取る。
いつか、これに似た修行をしたな……と、ヴァンは思い返していた。この状況でも、意外に落ち着いた精神の中で、過去を振り返る。
ああ、そうだ。
あの二人と……こんな修行をした。
「避けるんじゃねえ……見切る!!」
目で追うのではない。
エネルギーで捉える。
前にバンバスがやっていたように、エネルギーの膜を広げて探知する。
次に来るのは……アレだ。
「どけェ!!」
エネルギーを全開でまとわせた拳による裏拳で、迫り来る噴出岩を粉砕した。
まさか、あんな修行かこんな形で役に立つことになるなんて、と。あの二人にも感謝しなくちゃな……などと、精神だけが切り離されたようにヴァンは思考を巡らせていた。
「ほう、やるものよ……ふんッッッ」
しかし、それを傍観していたレクスァが、ついに動いた。
地を蹴り、一気に空中から迫るヴァンに接近する。噴出岩などにやらせはしない、自らの手で……という意志が見える、そんな覇気である。
「その左目の傷!!十四年前は貴様を仕留め損ねたが、今度はしっかりとトドメを刺してやるぞ!!」
「ケッ!!親父の墓前でそんなみっともねぇ姿は見せられねぇなァ!!」
再び、拳と掌底がぶつかり合う……。
体中を包んでいた、あの白い、優しいエネルギーが、どんどん抜けていくのがわかった。
離れていく。突風が吹いているように、抗えない力が働いている。その中心にいるのはレクスァ、あの黒の象徴なのだ。
「貴様ごときがやってのける技を、この私が出来ないとでも思ったか?それに、吸収が貴様の専売特許と思うな」
さらに力を増し、レクスァは高らかに笑う。
「貴様の白が全てを塗り替えるならば、私の黒は全てを飲み込む……どんな色も関係ない、全ては闇に還る」
山はすぐに荒れ果てた。もともとヴァンにこれでもかと言うほど吸い上げられていた状態から、今度はレクスァにより一層強烈に吸い上げられたのだ、突然である。
その効果範囲も脅威的であった。広範囲に渡り、あたり一面が暗黒に包まれる。空も地も海も、全てが闇の中に。
「こっ、この中の生物が対象になってるってのかよ!」
「その通りだ……まあ、こんな所か」
しばらくしてようやくその吸収は留まった。もはやヴァンが吸収できる生命力は何一つとて残ってはいない。なんとかレクスァの吸収も街までは及んでいないようだが、それでもこの辺りは死んでしまった。
そして同時に、目の前の闇はかつてないほどに膨れ上がっている。
「ま、参ったぜ……せっかく見えてた勝機が……」
これを使ったところで、勝てないかもしれない……という、ルーツァークの言葉を思い出し、ヴァンは思わず口元が緩んだ。
あの時は構わないと思っていたが、いざ本当に勝てないという状況に追いやられると、なぜだ、なんて理不尽なことを考えるものなのだと。
「俺のエネルギーはまだ尽きちゃいねえ……黒は全てを飲み込むと言ったな、それは間違いだぜ。現に俺のエネルギーは飲み込めなかったようだしなァ」
しかし、それでも。究極燃焼による外部からのエネルギー供給も、レクスァからの吸収も出来なくなり、かつレクスァは強烈なパワーアップ。
状況が最悪なのは誰の目にも明らかである。
「フン、しかしまあ……この決戦にこの荒野は似つかわしくあるまい」
やせ細り、死んだ大地。自分たちの手でそうしておいて、よくも言ったものだが。
「な、なにをする気だ!」
「決まっている……貴様にももっとやる気を出してもらう為に新しいステージを用意してやるだけのこと」
そう言うとレクスァは地面に手を開いて構える。次第にその手のひらにエネルギーが集まり始め、渦を巻く。
渦は段々と範囲を広めていき、そして次の瞬間に一気に収束。放たれたそれは矢のように地を貫いていった。
視界が揺れる。
のではない。大地が振動したのだ。
ほんの一瞬ではあるが、まるで山がひっくり返るのではないかと思うような振動。
「て、テメェ~!何をしやがった!」
「来い……灼熱よ」
地面のそこからどんどんと迫ってくるものがある。恐怖心を覚えながら、直感的にそれが何なのかすぐにヴァンは理解した。
噴火だ。
「うおおおーーーッッ!!」
耳をつんざく激しい炸裂音。轟音。マグマが噴き出し山が赤く染まるまで時間はかからなかった。ほんの一瞬の出来事。夢のような現実。
「フハハハハ!!さあ、これで貴様にも時間は無いぞ!早くしなければ自分の身が無事には済まない……もっとも私を倒したところで、リオスは灼熱に焼かれているかもしれないがなァ!!」
「この……ッ!!」
リオスまでは、この裏山からは距離はあるにはある。この噴火で直接的な被害が出ることは考えにくいが、万が一という事もある。レクスァが起こしたこれがどれほどの規模のものなのかはわからないが、しかし油断はできない。
なにより、今現在最も危険であるのは自分なのだから。
「こんの無茶苦茶ヤローが~~~!!」
マグマは近づいてきていない。だが強烈な砲弾のような噴出岩が次々に飛来して来ている。
どうやらマグマは噴出せず、中で爆発を起こしているようだ。さきほどから地鳴りがやまないのはその為だろう。
「一気にケリをつけるしかねぇ!!」
全身のエネルギーを爆発させ、特攻する。もはや後先など考えていられない。今の状態でどれくらいエネルギーが持続するかはわからないが、ヴァンは全開でアクセルを踏んだ。
「フハハハハ!!あとが無いなァ!さあ来い!完膚無きまでに打ち砕いてくれる!!」
飛んでくる噴出岩を避けながら、レクスァを相手取る。
いつか、これに似た修行をしたな……と、ヴァンは思い返していた。この状況でも、意外に落ち着いた精神の中で、過去を振り返る。
ああ、そうだ。
あの二人と……こんな修行をした。
「避けるんじゃねえ……見切る!!」
目で追うのではない。
エネルギーで捉える。
前にバンバスがやっていたように、エネルギーの膜を広げて探知する。
次に来るのは……アレだ。
「どけェ!!」
エネルギーを全開でまとわせた拳による裏拳で、迫り来る噴出岩を粉砕した。
まさか、あんな修行かこんな形で役に立つことになるなんて、と。あの二人にも感謝しなくちゃな……などと、精神だけが切り離されたようにヴァンは思考を巡らせていた。
「ほう、やるものよ……ふんッッッ」
しかし、それを傍観していたレクスァが、ついに動いた。
地を蹴り、一気に空中から迫るヴァンに接近する。噴出岩などにやらせはしない、自らの手で……という意志が見える、そんな覇気である。
「その左目の傷!!十四年前は貴様を仕留め損ねたが、今度はしっかりとトドメを刺してやるぞ!!」
「ケッ!!親父の墓前でそんなみっともねぇ姿は見せられねぇなァ!!」
再び、拳と掌底がぶつかり合う……。
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