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ファーストエピソード
番外編.大型連休
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大型連休。それは、人を幸せにする魔法の言葉。
人によって様々な過ごし方はあるだろう。家族サービスに努めるもの、大型連休など関係なく勤務に励むもの。友人と楽しく過ごしたり、恋人と淡いひと時を過ごすのも良いだろう。
だが、この三人はどうも大型連休の使い方を理解していなかった。
「だからよー、せっかくこんだけ休みがあんだぜ?家でダラつく絶好のチャンスじゃねえか、なんでわざわざ外に出て疲れなきゃなんねーんだよ」
こう言いながら眠そうにあくびをするのは、ヴァン・クロノウ。面倒臭がりな性格が全面に出ていてとてもそうとは思えないが、これでも本作主人公である。
「お前って本当に人間か?こう言う時だからこそ普段なかなか行けないような所に遊びに行くんだろ!」
そう毒ずくのはそのヴァンの親友である、ティム・シルバー。ヴァンとは違い積極的に活動するタイプである。だからと言ってヴァンが根暗でネガティブな性格というわけではないが、彼の場合は面倒臭いというのが全てなのだ。
「やれやれ………仕方のない奴らだな。大型連休の使い方、というものを全く心得ていない。全くもって話にならんな」
最後に呆れ口調でこう語るのは、二人とは最近知り合ったバンバス・リン。最近というのがわからなくなるほどに彼ら三人は打ち解けていた。案外いい三人なのかもしれない。
「バンバステメー、そこまで言うからには俺が動きたくなるような案があるんだろうな?」
「当たり前だ。お前みたいなウジムシでも、家から出たいと思いたくなる案がある」
「てんめェ……誰がウジムシだコラ」
「まあまあ…で?バンバス、その案てのは何なんだ?」
三人が話し込んでいるのは、リオスにある小洒落た喫茶店。高校生の頃からヴァンとティムのたまり場だった。しかしヴァンの家からさほど離れていないここに来るのですら、相当苦労したものだ。そんなヴァンを連れ出す、ヴァンが自ら動きたくなるような案とは何なのか。
「キャンプだ」
「………はァ??」
「………え?え??」
キャンプ。いわゆる野宿。
仲の良い友人や家族と一緒に川や海、山でテントを張って外でバーベキューでもしながら数日過ごす、あのキャンプ。
例えば身近な部分で言えば、火を一つ点けるのも家とは勝手が違う。上級者にもなるとよりサバイバルな状況を作り出し、それを楽しむのだとか。
「テメーよォ…行きたいわけねえじゃん…なんでそんな、何よりもめんどくせぇことしなくちゃならねーワケ?キャンプってあれだろ?家から外に出て寝泊まりする事で、何もかもを不自由に追い込んで楽しむ、マゾヒストどもの戯れだろ?」
「※この主張は一個人の主張であり、考え方には個人差があります。………あのなあヴァン、いちいちお前のそういう爆弾発言にフォロー入れる俺の身にもなれよ…しかしバンバス、なんでキャンプなんだ?確かにキャンプは楽しいけどよ、ヴァンを動かすには一番、と言っていいほど無理があるだろ」
キャンプなんて口にすれば、面倒臭がりのヴァンがいよいよ本気で面倒臭くなってより動かなくなることなど誰でもわかることだ。それがわからないバンバスでもないだろうに…とコーヒーをくいっと飲み干す。バンバスは、と言うと、自信たっぷりな表情で紅茶を飲んでいた。
ここの紅茶確かに美味いんだよなぁ…シフォンケーキなんかと組み合わせると最高なんだっけ…とか考えながらじっくりとバンバスの思考を探る。
なぜ、このタイミングでキャンプなのか。
確かにキャンプは楽しい、それは間違いない。だがそれは、人によると言うものだ。キャンプというのは準備や後始末が大変なぶん、取っつきにくいものだ。しかし同じ理由で、楽しいモノでもある。しかし前述したように、そこのところの感じ方は人それぞれなのだ。
「お前らしくもない、いわゆる地雷を踏んだというやつだろこの状況は」
「フッ……ハッハッハ!バカなやつらだ…まあ、行きたくないというのなら構わんさ、お前らの一生は物悲しく終わっていくだろうよ!どうせキャンプに行ったことなど一度も無いんだろう、愚か者どもめ」
高らかに笑いながら再び紅茶に手をつけ始めるバンバス。店員を呼び止めると、シフォンケーキを注文し始めた。紅茶のお代わりとともに。
なんてやつだ、この店での最強の組み合わせを一発で見抜くとは…と、ティムは歯ぎしりをしていると、ヴァンが飲んでいたメロンソーダをテーブルにゴン!と置いた。
「なんだとォ……?キャンプが一体どれほどのモンだっつーんだよ!あんなモンかったるいだけじゃねぇか!何がそんなにテメーの中でキャンプを信仰させてんだこのマゾが」
「フン、それは実際に行ってみた者にしかわからない事だ。しかし表面上の事しか見ずに面倒だなどというくだらん理由で却下するお前には、楽しめないかもしれないがなァ」
「このッ…言えってんだよ!なにがそんなにおもしれぇんだ!キャンプのなにが!」
なんという事だろうか。徐々にヴァンが興味を持ち始めている。どころか、完全に関心を持って焦りが生まれている。ティムが見るに、完全に場の空気はバンバスが支配していた。
「フハハ!知りたければ行くしかないな!何もせずに得られるものばかりと思うなよ!むしろこの世はそんなものほとんどない!」
格好つけてとても良いことを言っているが、その実、たかがキャンプを誘っている男とそれを面倒臭がっている男の会話なのだ。およそ喫茶店でするような会話ではなかったが、面白そうなのでティムは黙って見ていることにした。
「面白えじゃねえか…ならこの俺をキャンプに連れて行ってもらおうか!」
「ハン!そう簡単に連れて行けるか!面倒臭がりな性格などはキャンプにおいては最もタブーとされることよ。行きたきゃお前から頼むんだな!連れて行ってくださいバンバス様、とな!」
「図に乗ってんじゃあねえぞ!ちっとは興味が湧いてきたところだったのによ……オメーがそこまで言うんだからどれほどのモンなのかと思ったが、まあやっぱ大したことはねえんだろうなァ」
上手い、とティムは率直に感じた。こんな言い方をされては、何を持ってそんなに面白いものなのかという説明をしたくなるのが人情というもの。さらには実際に連れて行き、さあどうだ面白いだろう、と見せつけることで精神的優位に立ちたくなるような言い回しをされてしまったバンバス。
「言い返せねえか!まあそうだろうなァ、実際は大したことねえんだろ、ああ?」
(さあバンバス、吐いて楽になっちまえよ!テメーの魂胆なんてお見通しだぜ、俺をうまいこと挑発、誘導して外に連れ出すのが目的なんだろうがそうは行かねえ……俺はこの連休は動かねえ!)
この時点で優位にいるのはヴァンのように見えた。それは誰の目にもそう見えるだろう。
だがしかし、そんな余裕をかましてメロンソーダをもう一杯追加で注文するヴァンに、不敵な笑みを見せつけるバンバス。
「浅はかだなお前は…その楽しみを事前に知っているのと知らないのではまるで違う…プレゼントの中身が何かを知っていたら、その楽しみなど半減以上だろう。お前は今、それと同じことを自ら進んでやろうとしているんだ」
(くっ…ヴァンも見事だったが、バンバスも流石だ…この苦境を難なく乗り越えて行きやがった…確かに正論だ。そんな言い方をされたら、ますます気になってしまう!現に俺がちょっと行きたくなっている!)
だが、ティムと違いヴァンは意地っ張りである。ここまで言ったからには引き下がれないものがあるのも事実である。つまり、その頑なな意地を折った方が勝ちを手にするというわけだ。
「ヴァン、素直になれよ。本当のところは行きたいんだろう?行ってどれだけ面白いものなのか確かめてみたいんだろう?いいだろう、今なら必要なものは俺が用意してやる。お前は身一つで参加できるというわけだ」
(こ、この策士め…バンバス、ここに来て早くも勝負を仕掛けて来たか…いったん落ち着いてヴァンの側にメリットが働くことを提示して見せることで、意地の部分をヴァンが折りやすいようにした…!つまり、普通に行くのは嫌だが、そこまで言うならまあ行ってやらなくもない、というプライドが保たれる上、この場の体裁も守れる!あえて逃げ道を作ることで敵の陥落を誘ったか……!!)
「ほ、ほ~う…面白え、譲歩するってわけかよ」
(この…バンバスのヤロー…!そこまでの自信があるって事かよ!舐めやがって…だがこんなところで引くわけには行かねえ…!)
意を決してヴァンが動いた。
「だがよ……そもそもそこまでの譲歩をしなけりゃ面白くならないような、そんな程度のモンなんじゃあねえのか?」
(なんてこった…一見苦しい言い分には聞こえるが、その実反論のしようが無い…!ヴァンめ、なかなかやるな…!さてバンバスはどうする…?)
「なに、この譲歩はこちら側からの提供だ。お前がいらないと言うのなら、俺もそれでいいさ」
紅茶とシフォンケーキに舌鼓を打ちながら、余裕そうな表情を見せるバンバス。
(さあ、おちろヴァンめ!一度歩み寄るように見せてすぐに引く!この戦法でお前はキャンプに行かざるを得ない!さあ!認めろヴァン!)
「な、なんだよ、いらないなんて言ってねえだろ?ただ俺は心配になっただけだぜ…そんな程度のモンに誘われてんのかってな……ああ、もうわかったよ!行きゃあいいんだろ!?行きゃあ!」
どっかりソファの背もたれにもたれ掛かるヴァン。なんとも無駄に思えるような争いだったが、事はようやく進展した。この大型連休は、三人でキャンプ。
大仰な心理戦や話術が繰り広げられてはいたが、キャンプ。
「決まったな。では明日出発するとしよう。用意はさっき言った通り、俺がしておくからお前らは身一つで来い。むしろ何も持ってくるな」
何もだぞ、とやたらに念押ししてバンバスは喫茶店から出て行った。
「やれやれ…仕方ねえな。そんじゃあ俺たちも帰ろうぜ、ティム」
「俺ちょっと楽しみかも…」
「あ?なんか言ったか?」
「いえ、何も」
そんなこんなで、彼らの楽しい大型連休が始まろうとしていた…。
人によって様々な過ごし方はあるだろう。家族サービスに努めるもの、大型連休など関係なく勤務に励むもの。友人と楽しく過ごしたり、恋人と淡いひと時を過ごすのも良いだろう。
だが、この三人はどうも大型連休の使い方を理解していなかった。
「だからよー、せっかくこんだけ休みがあんだぜ?家でダラつく絶好のチャンスじゃねえか、なんでわざわざ外に出て疲れなきゃなんねーんだよ」
こう言いながら眠そうにあくびをするのは、ヴァン・クロノウ。面倒臭がりな性格が全面に出ていてとてもそうとは思えないが、これでも本作主人公である。
「お前って本当に人間か?こう言う時だからこそ普段なかなか行けないような所に遊びに行くんだろ!」
そう毒ずくのはそのヴァンの親友である、ティム・シルバー。ヴァンとは違い積極的に活動するタイプである。だからと言ってヴァンが根暗でネガティブな性格というわけではないが、彼の場合は面倒臭いというのが全てなのだ。
「やれやれ………仕方のない奴らだな。大型連休の使い方、というものを全く心得ていない。全くもって話にならんな」
最後に呆れ口調でこう語るのは、二人とは最近知り合ったバンバス・リン。最近というのがわからなくなるほどに彼ら三人は打ち解けていた。案外いい三人なのかもしれない。
「バンバステメー、そこまで言うからには俺が動きたくなるような案があるんだろうな?」
「当たり前だ。お前みたいなウジムシでも、家から出たいと思いたくなる案がある」
「てんめェ……誰がウジムシだコラ」
「まあまあ…で?バンバス、その案てのは何なんだ?」
三人が話し込んでいるのは、リオスにある小洒落た喫茶店。高校生の頃からヴァンとティムのたまり場だった。しかしヴァンの家からさほど離れていないここに来るのですら、相当苦労したものだ。そんなヴァンを連れ出す、ヴァンが自ら動きたくなるような案とは何なのか。
「キャンプだ」
「………はァ??」
「………え?え??」
キャンプ。いわゆる野宿。
仲の良い友人や家族と一緒に川や海、山でテントを張って外でバーベキューでもしながら数日過ごす、あのキャンプ。
例えば身近な部分で言えば、火を一つ点けるのも家とは勝手が違う。上級者にもなるとよりサバイバルな状況を作り出し、それを楽しむのだとか。
「テメーよォ…行きたいわけねえじゃん…なんでそんな、何よりもめんどくせぇことしなくちゃならねーワケ?キャンプってあれだろ?家から外に出て寝泊まりする事で、何もかもを不自由に追い込んで楽しむ、マゾヒストどもの戯れだろ?」
「※この主張は一個人の主張であり、考え方には個人差があります。………あのなあヴァン、いちいちお前のそういう爆弾発言にフォロー入れる俺の身にもなれよ…しかしバンバス、なんでキャンプなんだ?確かにキャンプは楽しいけどよ、ヴァンを動かすには一番、と言っていいほど無理があるだろ」
キャンプなんて口にすれば、面倒臭がりのヴァンがいよいよ本気で面倒臭くなってより動かなくなることなど誰でもわかることだ。それがわからないバンバスでもないだろうに…とコーヒーをくいっと飲み干す。バンバスは、と言うと、自信たっぷりな表情で紅茶を飲んでいた。
ここの紅茶確かに美味いんだよなぁ…シフォンケーキなんかと組み合わせると最高なんだっけ…とか考えながらじっくりとバンバスの思考を探る。
なぜ、このタイミングでキャンプなのか。
確かにキャンプは楽しい、それは間違いない。だがそれは、人によると言うものだ。キャンプというのは準備や後始末が大変なぶん、取っつきにくいものだ。しかし同じ理由で、楽しいモノでもある。しかし前述したように、そこのところの感じ方は人それぞれなのだ。
「お前らしくもない、いわゆる地雷を踏んだというやつだろこの状況は」
「フッ……ハッハッハ!バカなやつらだ…まあ、行きたくないというのなら構わんさ、お前らの一生は物悲しく終わっていくだろうよ!どうせキャンプに行ったことなど一度も無いんだろう、愚か者どもめ」
高らかに笑いながら再び紅茶に手をつけ始めるバンバス。店員を呼び止めると、シフォンケーキを注文し始めた。紅茶のお代わりとともに。
なんてやつだ、この店での最強の組み合わせを一発で見抜くとは…と、ティムは歯ぎしりをしていると、ヴァンが飲んでいたメロンソーダをテーブルにゴン!と置いた。
「なんだとォ……?キャンプが一体どれほどのモンだっつーんだよ!あんなモンかったるいだけじゃねぇか!何がそんなにテメーの中でキャンプを信仰させてんだこのマゾが」
「フン、それは実際に行ってみた者にしかわからない事だ。しかし表面上の事しか見ずに面倒だなどというくだらん理由で却下するお前には、楽しめないかもしれないがなァ」
「このッ…言えってんだよ!なにがそんなにおもしれぇんだ!キャンプのなにが!」
なんという事だろうか。徐々にヴァンが興味を持ち始めている。どころか、完全に関心を持って焦りが生まれている。ティムが見るに、完全に場の空気はバンバスが支配していた。
「フハハ!知りたければ行くしかないな!何もせずに得られるものばかりと思うなよ!むしろこの世はそんなものほとんどない!」
格好つけてとても良いことを言っているが、その実、たかがキャンプを誘っている男とそれを面倒臭がっている男の会話なのだ。およそ喫茶店でするような会話ではなかったが、面白そうなのでティムは黙って見ていることにした。
「面白えじゃねえか…ならこの俺をキャンプに連れて行ってもらおうか!」
「ハン!そう簡単に連れて行けるか!面倒臭がりな性格などはキャンプにおいては最もタブーとされることよ。行きたきゃお前から頼むんだな!連れて行ってくださいバンバス様、とな!」
「図に乗ってんじゃあねえぞ!ちっとは興味が湧いてきたところだったのによ……オメーがそこまで言うんだからどれほどのモンなのかと思ったが、まあやっぱ大したことはねえんだろうなァ」
上手い、とティムは率直に感じた。こんな言い方をされては、何を持ってそんなに面白いものなのかという説明をしたくなるのが人情というもの。さらには実際に連れて行き、さあどうだ面白いだろう、と見せつけることで精神的優位に立ちたくなるような言い回しをされてしまったバンバス。
「言い返せねえか!まあそうだろうなァ、実際は大したことねえんだろ、ああ?」
(さあバンバス、吐いて楽になっちまえよ!テメーの魂胆なんてお見通しだぜ、俺をうまいこと挑発、誘導して外に連れ出すのが目的なんだろうがそうは行かねえ……俺はこの連休は動かねえ!)
この時点で優位にいるのはヴァンのように見えた。それは誰の目にもそう見えるだろう。
だがしかし、そんな余裕をかましてメロンソーダをもう一杯追加で注文するヴァンに、不敵な笑みを見せつけるバンバス。
「浅はかだなお前は…その楽しみを事前に知っているのと知らないのではまるで違う…プレゼントの中身が何かを知っていたら、その楽しみなど半減以上だろう。お前は今、それと同じことを自ら進んでやろうとしているんだ」
(くっ…ヴァンも見事だったが、バンバスも流石だ…この苦境を難なく乗り越えて行きやがった…確かに正論だ。そんな言い方をされたら、ますます気になってしまう!現に俺がちょっと行きたくなっている!)
だが、ティムと違いヴァンは意地っ張りである。ここまで言ったからには引き下がれないものがあるのも事実である。つまり、その頑なな意地を折った方が勝ちを手にするというわけだ。
「ヴァン、素直になれよ。本当のところは行きたいんだろう?行ってどれだけ面白いものなのか確かめてみたいんだろう?いいだろう、今なら必要なものは俺が用意してやる。お前は身一つで参加できるというわけだ」
(こ、この策士め…バンバス、ここに来て早くも勝負を仕掛けて来たか…いったん落ち着いてヴァンの側にメリットが働くことを提示して見せることで、意地の部分をヴァンが折りやすいようにした…!つまり、普通に行くのは嫌だが、そこまで言うならまあ行ってやらなくもない、というプライドが保たれる上、この場の体裁も守れる!あえて逃げ道を作ることで敵の陥落を誘ったか……!!)
「ほ、ほ~う…面白え、譲歩するってわけかよ」
(この…バンバスのヤロー…!そこまでの自信があるって事かよ!舐めやがって…だがこんなところで引くわけには行かねえ…!)
意を決してヴァンが動いた。
「だがよ……そもそもそこまでの譲歩をしなけりゃ面白くならないような、そんな程度のモンなんじゃあねえのか?」
(なんてこった…一見苦しい言い分には聞こえるが、その実反論のしようが無い…!ヴァンめ、なかなかやるな…!さてバンバスはどうする…?)
「なに、この譲歩はこちら側からの提供だ。お前がいらないと言うのなら、俺もそれでいいさ」
紅茶とシフォンケーキに舌鼓を打ちながら、余裕そうな表情を見せるバンバス。
(さあ、おちろヴァンめ!一度歩み寄るように見せてすぐに引く!この戦法でお前はキャンプに行かざるを得ない!さあ!認めろヴァン!)
「な、なんだよ、いらないなんて言ってねえだろ?ただ俺は心配になっただけだぜ…そんな程度のモンに誘われてんのかってな……ああ、もうわかったよ!行きゃあいいんだろ!?行きゃあ!」
どっかりソファの背もたれにもたれ掛かるヴァン。なんとも無駄に思えるような争いだったが、事はようやく進展した。この大型連休は、三人でキャンプ。
大仰な心理戦や話術が繰り広げられてはいたが、キャンプ。
「決まったな。では明日出発するとしよう。用意はさっき言った通り、俺がしておくからお前らは身一つで来い。むしろ何も持ってくるな」
何もだぞ、とやたらに念押ししてバンバスは喫茶店から出て行った。
「やれやれ…仕方ねえな。そんじゃあ俺たちも帰ろうぜ、ティム」
「俺ちょっと楽しみかも…」
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「いえ、何も」
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