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甘い蜜
3 ※
しおりを挟む暗い表情で押し黙ってしまったカイゼルの唇から指を離すと、マティアスは手にしていたハチミツの入っている硝子瓶をカイゼルの躰の上で傾けた。
ハチミツはカイゼルの胸の辺りに零れ落ちシャツの上を広がっていく。
「な···にを···」
ハチミツで濡れたシャツは薄っすらと透け、ハチミツの冷たい液体に触れたカイゼルの胸はシャツ越しにも見て分かるほどツンと勃ち上がっていた。
「お前があまり食欲がないと聞いて一緒に食事を取れば少しは食べれるかと思って、俺もまだ食べていないからな···」
ハチミツをテーブルに戻したマティアスは、ハチミツに濡れたカイゼルの胸に視線を落とす。
何をされるか察したカイゼルは、
「···一緒に食べて···頂かなくても···ちゃんと食べるので···」
怯えた表情でマティアスから逃げるように僅かに身動いだ。
「遠慮するな」
不敵な笑みを浮かべると、マティアスは指をカイゼルの胸の上を滑らせるように撫でた。
「──っつ」
ハチミツで濡れた胸の尖りは外部の刺激に敏感になっており、指で少し撫ぜられただけなのに淫靡な快楽が生まれ、カイゼルは身を硬くした。
「···んうっ···やめて···下さ···い···」
ハチミツの所為で布の擦れる摩擦は少なくなり、滑るように指で愛撫される。
「ふ···ぅっ···」
快楽が湧き上がるのを必死に堪えるように、カイゼルは唇から零れそうになる吐息を押し殺す。
「本当に止めて欲しいのか?ここはそうは言っていないように見えるがな」
楽しそうに笑みを浮かべながら、マティアスはいつの間にか反応をし始めていたカイゼルの半身を人差し指で擦るように指を下から上へと滑らせた。
「···ち、違っ···」
胸を触られたぐらいで反応するとは思っていなかったカイゼルは戸惑いの声を上げる。ましてやお金の為に男に触られて半身を硬くするなんて···。
「男に抱かれたのはあの日が初めてだった筈だが···素質がありそうだな」
楽しませてくれそうだ、とマティアスはにやりと口角を上げ笑う。
「······ちが··います···そんなんじゃ···」
目尻に涙を滲ませながらカイゼルの唇から震えるような小さな声が零れる。
認めたくないのに半身はいやらしい熱を帯び、欲情の形をしてしまっている現実にカイゼルは泣きたくなるほど、自分が色欲にあさましいように感じていた。
「受け入れたらどうだ?カイゼル。お前は男の俺に胸を弄られただけで欲情する躰だと···」
扇情的な言葉を吐かれ、カイゼルは頬に朱を走らせる。
「······」
羞恥に耐えられず顔を背けたカイゼルを、上から眺めていたマティアスは満足そうに眺めると、彼の半身に手を伸ばした。
「っ!」
マティアスの手が触れた途端、カイゼルは怯えたようにビクンと躰を大きく揺らした。
やめて下さい!と言いたい言葉をカイゼルは無理矢理飲み込み、硬く瞳を閉じた。
拒絶出来る立場にない事は分かっているが、気持ちが追いついていかない。
「······そんなに俺にされるのが嫌か」
言葉にしなくても強張った躰が拒絶を表している。
マティアスは小さな声でぽつりと呟いた。
── 拒否できない状況に追い込んで無理矢理抱いたんだ···無理はないか
分かってはいた事とはいえ、こうも全身で拒絶されると堪えるな···と瞳に影を落とした。
だが、それでも彼を手に入れたいと覚悟を決めたのは自分だ。
もう後戻りは出来ない。
「いつまでその態度でいられるのか見物だな···」
内心はカイゼルの拒絶の態度に傷つきながらも、そんな態度は一切見せず、挑発的な口調で更に言葉を続ける。
「ここに来たのは食事をとらないお前の様子を見に···というのもあるが、今夜から寝室は俺のベッドに来いと伝える為だったんだが······もし、俺がお前を俺を求めなければ、今後もこの部屋で寝ていいぞ」
「···!」
マティアスの言葉に思わず瞳を開けた。
彼の深い色の瞳と視線が交わる。
「···そ···れは······」
抱かれなくてもいいという事だろうか、と僅かな期待がカイゼルの表情に表れる。
「ああ···、俺の仕事を手伝ってはもらうが····」
マティアスは余裕に満ちた笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「だが少しでも俺を欲しがる言葉を口にした時は ──··」
分かっているな、と耳元で囁いた。
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