上司と部下の恋愛事情

朔弥

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同棲の始まり

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 当面の間、必要な衣類等だけ持って海里のマンションに移った真尋は、使われていない一室に通された。
「この部屋、自由に使っていいから。クローゼットは備えつけのがあるから服はそこに···。他に必要な物や真尋の家から持ってくる物はまた来週あたりにするとして···ベッドも暫くは俺と一緒でいい?」
 そう海里に聞かれ、それは毎日するという事だろうか···と海里を見た。
 そんな気持ちが表情かおに表れていたようで、海里にくすりと笑われる。
「すぐにベッドのような大きな物は運び入れられないからね。一人で寝た方が仕事の疲れもとれるのに、俺の隣でゴメンねって意味だったんだけど···シテ欲しかった?」
「っ!! 違っ!」
 恥しくて顔を真っ赤にして否定するが、海里は嬉しそうに口元に笑みを浮かべながら真尋の耳元に唇を寄せて囁いた。
「真尋が求めてくれて嬉しいよ···毎日だって抱いてあげる···」
 求めてない!と首を横に振るが、抱きしめてきた海里の手は腰の辺りを撫でている。
「せっかく今日から真尋が一緒に住んでくれるんだから···朝までしようか···」
「······無理」
 ボソッと呟くが、海里の瞳に欲動の光が宿るのを見て、今夜は寝かせてもらえないかもしれない···と頬を引き攣らせた。



「···はぁ、はっ···あっ···もう無理···」
 結局その夜、真尋は海里のベッドで四つん這いになり、背後から激しく腰を打ちつける海里の欲望を受け入れていた。
 傷つけない為に入れられた潤滑剤と、一度イった海里の精液が真尋の中で混ざり合い、海里のたぎった雄が動くたびに肌が触れ合う音と卑猥な濡れた音を立てる。
「あっ··あっ···やあっ···海里···も···終わらせ···て···ぁあっ···」
 しなやかに背を仰け反らせ、真尋は終わらない律動に懇願と甘い喘ぎをあげる。
「もう···無理?真尋の中はもっと···って絡みついてくるのに?」
 羞恥を煽る言葉を囁かれた真尋は腰に甘い痺れを感じてしまい、中にいる海里を締めつけるように動いたのを自覚する。
「あっ、あっ···やぁ···違っ···んんっ···あぅ···」
「何が違うの?今···締めつけたの···自分でもわかったんじゃない?」
「やだ···言わない···で···あっ、んっ··んんっ···」
 奥深くまで埋め込まれたまま腰を揺すられ、その動きに合わせるように、悩ましげな甘い声が洩れる。
 緩やかな動きは甘い心地良さを感じるが、淫らな熱が帯びるような快楽にはならず、次第にもどかしさを感じ始めた。
「どうする?もう無理ならやめる?」
 真尋の腰が焦がれるように揺れ始めたのを知りながら、海里は聞いた。
「······ゃ···だ···」
 小さな声で真尋は呟く。
「嫌だしか言ってくれないね···もっと甘い言葉で教えて···」
 グッと奥深くに腰を押しつけながら、海里は真尋に覆いかぶさり首筋に口づけた。
「あっ··んぅっ···はぁ··あっ···海里ぃ···動い···て···お願い···」
 海里の方へ顔を向け強請ねだる顔はあでやかで欲情をそそられる。
 海里は真尋の手に自分の手を上から重ね指を絡めると、腰の動きを大きくした。
「あっ··ぁあっ···っつ···はぁ··あっ···」
「はぁ··はぁ···真尋···好きだよ···」
 荒く呼吸を繰り返す海里の額から滴り落ちる汗が真尋の背中を濡らす。
「あっ···んぅっ···海里···俺も···もっと中を海里ので···いっぱいに··あっ···ンンッ···して···」
 真尋の言葉に海里は幸せそうな柔らかな笑みを浮かべる。
「いっぱい注いであげるから···中で俺を感じて···真尋···」
 囁きと共に最奥へと愛液を注ぎ込んだ。
「んんっ···」
 奥に感じる熱に、真尋は酔いしれるように背を震わせた。
 真尋の中から自身を抜くと、海里は向き合うように真尋を抱きしめた。
 まだ呼吸を乱している真尋の唇に軽く口づける。
「大丈夫?」
「ん···」
 快楽に逆上のぼせた表情かおで真尋は微かに頷くと、上になっている右手を海里の背中に回し顔を胸に埋めた。
「···海里の温もり···もっと近くで感じたい···」
「真尋···」
 左手首に残る擦り傷が目に映る。

 
 激しく抱けば何も考えれず疲れて眠れるだろうと思ったが···。いつもより真尋が自分に甘えてくるのは、ふとした瞬間に襲われた事を思い出してしまうからだろう。


 海里は優しく真尋の頭を撫でた。
「ずっと抱きしめているから···安心して眠っていいよ···」
 暫くすると、真尋の寝息が聞こえ始める。
 安心しきって眠る真尋の表情に海里はホッと胸を撫で下ろした。


 ─── もう誰にも···


 傷つけさせないから ───



 ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇



 日曜日は昼過ぎまで眠ってしまい、午後もリビングのソファーで海里に抱きしめられながら、のんびりとした休日を過ごした。
 昨日の事が現実だったとは思えないほど、穏やかな時間に真尋は幸せを感じていた。

「ああ、そうだ···」
 海里は何かを思いつき、ちょっとごめんね、と立ち上がりリビングから出ていく。
 すぐに戻ってきた海里は再び真尋の横に座ると、真尋の手をとり掌に何かを乗せた。金属のヒヤリと冷たい感触を感じ、見ると鍵が置かれていた。
「······鍵」
「家の鍵。明日も会社が終わったら、ちゃんとここに帰ってきて···」
 真尋は鍵を大切に握りしめると、海里の胸にトンっと額をあてた。



 うん···帰ってくるよ···



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