36 / 81
狙われた真尋
36
しおりを挟む
真尋のアパートの近くの路肩に車を停めた海里は、車内から部屋のドアを見つめた。
「おい、俺は車を近くの駐車場に停めてくるから、お前は先に行け!部屋は何処だ?」
「2階だ。205」
怜司に言われ、海里は車のキーを手渡すと部屋の番号を伝えながら車を降りた。
階段を駆け上がりながら、部屋の合鍵くらい預かっておけば良かったと悔やむ。
鍵をかけないでいてくれるといいが···
海里はドアの前で部屋の番号を確認すると、ドアのレバーハンドルに手をかけた。勢いよく引くと、鍵はかけられておらずドアを開ける事が出来た。
「──── っ!!」
家の中を見た海里の目に飛び込んできた光景は、玄関先の廊下の床に後ろ手に縛られ三浦に組み敷かれている真尋の姿だった。
ワイシャツのボタンは全て外され、乱れたシャツの間から白い肌が露わになっている。三浦に左手で肩を床に抑えつけられ、もう片方の手は前を寛がせ真尋の半身に伸ばされていた。
突然の訪問者に驚きドアの方を振り返った三浦と視線が合う。
海里は三浦のスーツの襟首を掴むと力いっぱい後ろに引き、真尋から引き離した。
狭い玄関の壁に背中を打ちつけた三浦は小さく呻き声を洩らす。
「痛っ···な··んで元宮課長が···」
今すぐにでも殴り倒したい衝動を抑え、海里は自分のスーツの上着を脱ぐと真尋に近寄り躰にかけた。そして背中へと手を伸ばし、縛られている手の戒めを解く。
「大丈夫か?」
そっと声をかけると、真尋は起き上がり海里の胸に顔を埋めた。海里の腕をシャツを握った真尋の手が微かに震えている。
「···もう大丈夫だから」
小さく頷いた真尋の背中に手を回し、そっと抱きしめた。
「おい、お前の部下は無事か!?」
遅れて怜司がドアを開け入ってきた。
怜司は二人の姿を確認すると三浦に近き、座り込んでいる彼の胸倉を掴んだ。
「本間先輩まで···?」
真尋に駆け寄った海里を見た三浦は、てっきり彼が真尋の付き合っている恋人かと思ったが、怜司まで現れどうなっているのかと二人を交互に見た。
そんな三浦の表情に気づいた怜司は、こいつにあの二人が恋人だと知られれば、またつき纏われる隙を作りかねないな、と考える。
立ち回りの上手い海里ならともかく、恋人の方はつけこまれそうだ。
「お前のスマホに隠し撮りのような写真を見かけて俺が海里に頼んで電話かけてもらったんだよ」
部下を心配した上司がかけたんだと強調するように怜司は言い、更に言葉を続けた。
「電話の途中で争うような音が聞こえてきたから慌てて駆けつけてみれば···お前、辞めた笹原にも同じ事をしたのか!?」
「···あの電話···もう切れたと思ったのに繋がってたのか···」
ははっ、と三浦は乾いた笑いを洩らした。
「もう少し慎重に迫ればよかったな···笹原の時は邪魔が入らなかったのにね···残念」
少しも悪びれる様子のない三浦に怜司は握りしめた拳が怒りで震える。
「下衆野郎が···」
絞り出すような声で怜司は呟いた。
「俺はどうせクビだろ?真尋を襲って懲戒解雇でもいいけど···男に襲われたなんて会社に居づらくなるんじゃないの?」
三浦の言葉に真尋は顔を伏せたまま、躰がビクッと震える。
「何が言いたい···」
不快な視線で怜司は三浦を睨みつける。
「黙って会社辞めるからさ、自主退職にしてよ。真尋にも二度と近づかないって約束するから」
「お前の言葉を信じろ···とでも?」
それまで黙っていた海里が感情のない冷たい瞳を向けながら三浦に言った。
その冷たさに、三浦はそれまで浮べていた薄っぺらい笑みが消える。
「お、俺だって仕事につけなきゃ生活出来ないんだから守るよ!」
三浦の提案に乗るのは癪だが、懲戒免職ともなれば、理由を詮索する者もいるだろう。そうなれば被害者であっても面白可笑しく噂にされるのは真尋だ。
「······。怜司、後は任せる」
海里の迫力に呑まれていた怜司は海里に声をかけられ、
「お、おう。三浦に退職届けを書かせて、人事部に報告しとくよ。まあ···急に田舎の両親の面倒を看ないといけなくなったとでも言えばいいだろ···」
と、少しぎこちなく言った。
次に三浦が視界に入ろうものなら殺しかねない···そんな殺伐とした空気を纏わりつかせている海里が怜司は少し心配になる。
···恋人が目の前で襲われていたんだ
当たり前か···
だが、優しく真尋を抱きしめている彼の腕を見て、流石に無茶はしないかと思い直した。
「おい、俺は車を近くの駐車場に停めてくるから、お前は先に行け!部屋は何処だ?」
「2階だ。205」
怜司に言われ、海里は車のキーを手渡すと部屋の番号を伝えながら車を降りた。
階段を駆け上がりながら、部屋の合鍵くらい預かっておけば良かったと悔やむ。
鍵をかけないでいてくれるといいが···
海里はドアの前で部屋の番号を確認すると、ドアのレバーハンドルに手をかけた。勢いよく引くと、鍵はかけられておらずドアを開ける事が出来た。
「──── っ!!」
家の中を見た海里の目に飛び込んできた光景は、玄関先の廊下の床に後ろ手に縛られ三浦に組み敷かれている真尋の姿だった。
ワイシャツのボタンは全て外され、乱れたシャツの間から白い肌が露わになっている。三浦に左手で肩を床に抑えつけられ、もう片方の手は前を寛がせ真尋の半身に伸ばされていた。
突然の訪問者に驚きドアの方を振り返った三浦と視線が合う。
海里は三浦のスーツの襟首を掴むと力いっぱい後ろに引き、真尋から引き離した。
狭い玄関の壁に背中を打ちつけた三浦は小さく呻き声を洩らす。
「痛っ···な··んで元宮課長が···」
今すぐにでも殴り倒したい衝動を抑え、海里は自分のスーツの上着を脱ぐと真尋に近寄り躰にかけた。そして背中へと手を伸ばし、縛られている手の戒めを解く。
「大丈夫か?」
そっと声をかけると、真尋は起き上がり海里の胸に顔を埋めた。海里の腕をシャツを握った真尋の手が微かに震えている。
「···もう大丈夫だから」
小さく頷いた真尋の背中に手を回し、そっと抱きしめた。
「おい、お前の部下は無事か!?」
遅れて怜司がドアを開け入ってきた。
怜司は二人の姿を確認すると三浦に近き、座り込んでいる彼の胸倉を掴んだ。
「本間先輩まで···?」
真尋に駆け寄った海里を見た三浦は、てっきり彼が真尋の付き合っている恋人かと思ったが、怜司まで現れどうなっているのかと二人を交互に見た。
そんな三浦の表情に気づいた怜司は、こいつにあの二人が恋人だと知られれば、またつき纏われる隙を作りかねないな、と考える。
立ち回りの上手い海里ならともかく、恋人の方はつけこまれそうだ。
「お前のスマホに隠し撮りのような写真を見かけて俺が海里に頼んで電話かけてもらったんだよ」
部下を心配した上司がかけたんだと強調するように怜司は言い、更に言葉を続けた。
「電話の途中で争うような音が聞こえてきたから慌てて駆けつけてみれば···お前、辞めた笹原にも同じ事をしたのか!?」
「···あの電話···もう切れたと思ったのに繋がってたのか···」
ははっ、と三浦は乾いた笑いを洩らした。
「もう少し慎重に迫ればよかったな···笹原の時は邪魔が入らなかったのにね···残念」
少しも悪びれる様子のない三浦に怜司は握りしめた拳が怒りで震える。
「下衆野郎が···」
絞り出すような声で怜司は呟いた。
「俺はどうせクビだろ?真尋を襲って懲戒解雇でもいいけど···男に襲われたなんて会社に居づらくなるんじゃないの?」
三浦の言葉に真尋は顔を伏せたまま、躰がビクッと震える。
「何が言いたい···」
不快な視線で怜司は三浦を睨みつける。
「黙って会社辞めるからさ、自主退職にしてよ。真尋にも二度と近づかないって約束するから」
「お前の言葉を信じろ···とでも?」
それまで黙っていた海里が感情のない冷たい瞳を向けながら三浦に言った。
その冷たさに、三浦はそれまで浮べていた薄っぺらい笑みが消える。
「お、俺だって仕事につけなきゃ生活出来ないんだから守るよ!」
三浦の提案に乗るのは癪だが、懲戒免職ともなれば、理由を詮索する者もいるだろう。そうなれば被害者であっても面白可笑しく噂にされるのは真尋だ。
「······。怜司、後は任せる」
海里の迫力に呑まれていた怜司は海里に声をかけられ、
「お、おう。三浦に退職届けを書かせて、人事部に報告しとくよ。まあ···急に田舎の両親の面倒を看ないといけなくなったとでも言えばいいだろ···」
と、少しぎこちなく言った。
次に三浦が視界に入ろうものなら殺しかねない···そんな殺伐とした空気を纏わりつかせている海里が怜司は少し心配になる。
···恋人が目の前で襲われていたんだ
当たり前か···
だが、優しく真尋を抱きしめている彼の腕を見て、流石に無茶はしないかと思い直した。
14
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
銀色の精霊族と鬼の騎士団長
柊
BL
スイは義兄に狂った愛情を注がれ、屋敷に監禁される日々を送っていた。そんなスイを救い出したのが王国最強の騎士団長エリトだった。スイはエリトに溺愛されて一緒に暮らしていたが、とある理由でエリトの前から姿を消した。
それから四年。スイは遠く離れた町で結界をはる仕事をして生計を立てていたが、どうやらエリトはまだ自分を探しているらしい。なのに仕事の都合で騎士団のいる王都に異動になってしまった!見つかったら今度こそ逃げられない。全力で逃げなくては。
捕まえたい執着美形攻めと、逃げたい訳ありきれいめ受けの攻防戦。
※流血表現あり。エリトは鬼族(吸血鬼)なので主人公の血を好みます。
※予告なく性描写が入ります。
※一部メイン攻め以外との性描写あり。総受け気味。
※シリアスもありますが基本的に明るめのお話です。
※ムーンライトノベルスにも掲載しています。
あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~
sae
恋愛
イケメン、高学歴、愛想も良くてモテ人生まっしぐらに見える高宮駿(たかみやしゅん)は、過去のトラウマからろくな恋愛をしていない拗らせた男である。酔った勢いで同じ会社の美山燈子(みやまとうこ)と一夜の関係を持ってまう。普段なら絶対にしないような失態に動揺する高宮、一方燈子はひどく冷静に事態を受け止め自分とのことは忘れてくれと懇願してくる。それを無視できない高宮だが燈子との心の距離は開いていく一方で……。
☆双方向の視点で物語は進みます。
☆こちらは自作「ゆびさきから恋をする~」のスピンオフ作品になります。この作品からでも読めますが、出てくるキャラを知ってもらえているとより楽しめるかもです。もし良ければそちらも覗いてもらえたら嬉しいです。
⭐︎本編完結
⭐︎続編連載開始(R6.8.23〜)、燈子過去編→高宮家族編と続きます!お付き合いよろしくお願いします!!
ワンナイトラブした英雄様が追いかけてきた
茜菫
恋愛
アメリは二十一歳の誕生日に、三年付き合っていた恋人の浮気現場に遭遇してしまった。そのままお別れを宣言し、自棄酒したアメリはうっかり行きずりの男とワンナイトラブしてしまう。
その男がこの国で英雄と讃えられている男だとは知らず、名を明かさなかった彼女を探し出し、追いかけてくるとは思わずに。
「あなたにしか、勃たなくなったんだ!」
「ええ…」
トラウマ持ちで不能の英雄様が、運命の人だと掃除をしながら追いかけてきたお話です。
かっこいいヒーローはいません。
本編33話+番外編2話、19時更新予定
ムーンライトノベルズでも投稿しています。
恋に臆病な僕らのリスタート ~傷心を癒してくれたのはウリ専の男でした~
有村千代
BL
傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専。淫猥なようであたたかく切ない、救済系じれじれラブ。
<あらすじ>
サラリーマンの及川隆之は、長年付き合っていた彼女に別れを告げられ傷心していた。
その手にあったのは婚約指輪で、投げやりになって川に投げ捨てるも、突如として現れた青年に拾われてしまう。
彼の優しげな言葉に乗せられ、飲みに行った先で身の上話をする隆之。しかしあろうことか眠り込んでしまい、再び意識が戻ったときに見たものは…、
「俺に全部任せてよ、気持ちよくしてあげるから」
なんと、自分の上で淫らに腰を振る青年の姿!? ウリ専・風俗店「Oasis」――ナツ。渡された名刺にはそう書いてあったのだった。
後日、隆之は立て替えてもらった料金を支払おうと店へ出向くことに。
「きっと寂しいんだよね。俺さ――ここにぽっかり穴が開いちゃった人、見過ごせないんだ」
そう口にするナツに身も心もほだされていきながら、次第に彼が抱える孤独に気づきはじめる。
ところが、あくまでも二人は客とボーイという金ありきの関係。一線を超えぬまま、互いに恋愛感情が膨らんでいき…?
【傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専(社会人/歳の差)】
※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています
※全10話+番外編1話(ほぼ毎日更新)
※イチャラブ多めですが、シリアス寄りの内容です
※作者X(Twitter)【https://twitter.com/tiyo_arimura_】
※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】
※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
明け方に愛される月
行原荒野
BL
幼い頃に唯一の家族である母を亡くし、叔父の家に引き取られた佳人は、養子としての負い目と、実子である義弟、誠への引け目から孤独な子供時代を過ごした。
高校卒業と同時に家を出た佳人は、板前の修業をしながら孤独な日々を送っていたが、ある日、精神的ストレスから過換気の発作を起こしたところを芳崎と名乗る男に助けられる。
芳崎にお礼の料理を振舞ったことで二人は親しくなり、次第に恋仲のようになる。芳崎の優しさに包まれ、初めての安らぎと幸せを感じていた佳人だったが、ある日、芳崎と誠が密かに会っているという噂を聞いてしまう。
「兄さん、俺、男の人を好きになった」
誰からも愛される義弟からそう告げられたとき、佳人は言葉を失うほどの衝撃を受け――。
※ムーンライトノベルズに掲載していた作品に微修正を加えたものです。
【本編8話(シリアス)+番外編4話(ほのぼの)】お楽しみ頂けますように🌙
※こちらには登録したばかりでまだ勝手が分かっていないのですが、お気に入り登録や「エール」などの応援をいただきありがとうございます。励みになります!((_ _))*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる