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はぁぁもう良かった!
反対されると思ってたのに、案外あっさりしてたな。
ライへの想いを断ち切る為にも、帝国で頑張ろうと、思ってたんだけど、付いてくるとか・・・・
でも、さすがに留学までは付いて来ないよね?
・・・どうしてかな?
心配してくれるのは、嬉しいけど。
でも、まぁ、とりあえず僕は勉強頑張らないと。

アンナ先生が言うには、試験自体はさほど難しくはないらしい。
僕は、先生の推薦があるから、大丈夫だろうと。
大変なのは、学校に入ってからだと。
とにかく覚える事が山のようにあるし、寝る間もないくらいに。
だから、僕は先生に
「僕の身体では、無理じゃないですか?」
そう、聞いてみたところ、
「ルーカス様なら、大丈夫。今回倒れた原因は貧血ですが、それは学校に通うまでは完治するでしょう。元々身体が弱いと思っておいででしょうが、調べた結果特には異常はありませんでした。私、思うんですがルーカス様は、思い込んでいたんではないかと。家族から、身体が弱いとか、あれはダメ、これはダメだとか。外には出ず家にこもっていては、良くなるものも、良くなりません。だから、これからは、どんどん外に出て陽の光を感じたり、気持ちいい風に当たって見てください。目的を見つけたルーカス様なら、きっと良い方に向かうはずです。」

アンナ先生の言葉に、僕は知らない間に涙が頬を伝っていた。

今まで、身体が弱いからと思って過ごしてきた僕。
そうか、そうだよね。
小さな頃から、何度となく医師に診てもらったけど、特にどこが悪いだとか、聞いた事なかったよね。
周りが過保護過ぎたのも原因かも知れないけど、でも僕はそれが悪いとは思っていない。
皆が、僕を愛してくれたから。
大切に大切に育ててくれたから。
ありがとう。

公爵家と言う家に産まれてきて、貴族として生きて、国の為民の為に自分に出来る事をずっと探して、やっと見つけたんだ。

ノブレス・オブリージュ
地位の高い者は、それに相応しい義務を負って然るべきである。
そう、ずっと考えていた事だ。
僕に出来る事。

やれるだけやってみよう。
改めて、アンナ先生に
「頑張ります。僕を今まで支えてくれた人達の為にも、僕自身の為にも。」
アンナ先生は、笑顔で頷いてくれた。


そんな話をした、次の週に僕とアンナ先生は、城下の診療所と、孤児院を訪問した。


城下の街には、初めて来るから緊張していたが、賑やかな景色と雰囲気に、緊張もとれてキョロキョロと周りを見てしまい、アンナ先生に腕を引かれて、迷子にならないでね。と言われる。
・・・恥ずかしい・・・
でも、僕に護衛も付いてるから、大丈夫だろうけど、本当に迷子になってしまったら迷惑かけるよね。
反省、反省。

なるべくよそ見をしないように歩くと、診療所に到着した。

そこには、すでに沢山の人達が並んでる。
えっ?
こんなに体調の悪い人達がいるのかと、ビックリする。
そんな僕に、アンナ先生は
「全員が全員体調が悪い人ではないんですよ。ここの診療所は、週に2日しか開けないんですよ。だから、こうやって並んでるんですよ。」

週に2日・・・だけなんだ。
それだけ、病気に対して不安なんだよね。
体調が悪いからと、すぐに診て貰えていた僕は、なんて恵まれていたんだ。
まぁ、それが貴族だから・・・・
と、言えばそうなんだろう。

とても考えさせられた日だ。
僕は、やっぱり甘えの中で生きていたんだな。
やれるだけ頑張ろう。
皆が、幸せに笑っていられるように。

だけど、孤児院に行った僕は、その考えを更に強く持つ事になった。





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