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      ジークバルト

 ハルは、凄いな。
 ピアノだけでも、この国がどうなるのかわからないのに、ましてや、菓子まで作ってしまう。
 まぁ、送り人とは、そう言うものだ。と
何か、この国を発展させる為に送られてくるのだと、レオが言ってたな。
 前の送り人は、医療に特化していた。
 薬や、医療関係、を発展させ、今でも語り継がれている。
 侍医のモーリスの、曾祖父だったな。
 今度、話を聞いてみよう。
 何か、書き残した物があるかも知れないからな。

 ハルは、俺に逢う為にこの国に来たのだとばかり思っていたが、、、
 それだけでは、無いのかもしれないな。
 ピアノ、菓子、まだあるのだろうか?
 俺の腕の中で大人しくしてる存在でいいのに、そうはならなそうだな。
 まぁ、いいさ。ハルが幸せなら、、、
 俺も幸せだ。



 ハルがクッキーとなる物を作る姿を見ていて、本当に何をさせても、可愛い。
 本当に嬉しそうに作る。

 ハルのお母さんの事を思い出してるのか孤児院の子供達の事を考えてるのか、ニコニコと笑ってる。
 料理長は、ハルの作る所を食い入るように見てる。
 多分、すぐに作るんだろうな。
 出来上がるまで、ハルは片付けようとして、皆に止められたにも関わらず、自分で片付けをする。
 その様子見ていた、使用人達は驚愕していたな。
 ハルの国では、それが当たり前なんだろう、だから俺は、皆に、ハルの好きなようにしてやってくれ。と声を掛けた。

 出来上がったクッキーなる物を、ハルが1つ食べる。
 うん、美味しい。
 俺に、1つくれる。
 口に入れると、サクッとして、ほろ甘くて、、、美味しい!!
 なんだこれ?甘い物はほとんど食べないが、これは美味い!何個でも食べれる。
 もう1つの方も食べてみる。
 果物の甘さと、ナッツのザクザクした感じが、面白くて美味い!!
 ハルは天才だな。

 両親も、ビックリして食べて
 「これは、大変だ!」
 慌てて走って出て行った。
 あーあれ、多分前陛下の所に報告に行ったな。何個か持って行ったしな。
 そう、何故かこの国の前陛下が、うちの領地にいる。
 引退して、うちに来るって、、、
 いや、将来レオもそうかもしれんな。
 あっちに帰ったらあれこれ聞かれそうだな。
 忙しくなりそうで嫌だな。
 ハルとの時間が減るのが、1番嫌だ。
 ずっと、傍にいたい。
 だから、もうすぐ向こうに帰らないといけない事が本当に嫌だな。
 が、しょうがない。
 ハルのチャリティーの件もあるし、帰らないと、そろそろヴィーのハル切れが発動しそうだしな。


 次の日、ハルはクッキーを焼いて、それを大事そうに持って、孤児院の子供達に会いに行く。

 それを貰った子供達の表情は、可愛いものだったな。
 あんな物を食べた事のない子供達は、恐る恐る口に入れる。
 入れた途端に、皆が笑顔になる。
 それを見てたハルが笑顔になる。
 なんて、幸せな光景なんだろうと。

 ハルは、そのクッキーをバザーで売れば良いと言う。
 どう言う事か、聞くと、また俺はハルの凄さに感心した。

 このクッキーの作り方は、この孤児院だけに教える。
 作った物をここで売る。(子供でも買える安さにする)
  そのお金で子供達が将来の為に勉強する事が出来るように、そのお金を使う。
 なるほどな。
 子供達の将来の為に。

 そうか、この国の子供達の将来の仕事の選択はない。
 大半は、親の後を継ぐ。
 貴族は、そのまま貴族を、平民は、親の事業や店を継ぐ。
 次男、三男ともなれば、自由に出来るかもしれないが、親がいればそれなりの援助をして貰える。
 が、孤児院の子供達となると、何をするにも、大変ではある。
 今までは、何処かに奉公にでたりする事が多い。
 自分での、選択はなかなか出来ない。
 だが、勉強出来る環境が出来れば、職業の選択は広がる。
 ハルは、それを子供達に与えたいと。
 
 だが、ハルに聞いてみる。

 「ハル、孤児院だけに、クッキーの作り方を教えても、真似したり、もっと美味しい物を作る人が出て来るかもしれん。そうなると、クッキーも売れなくなると思うが。」
 
 ハルは、ちょっと得意げな顔をして

 「ふふっ。それ僕も考えたんだよ。真似したり、もっと美味しい物を作る事は、凄くいい事だと思うんだ。甘い物は、人を幸せにするんだよ。だから、このお菓子が広まればいいな。ジーク。僕って今から色々な人と出会うでしょ?そしたら、僕の黒髪黒目って珍しいでしょ?僕は、ちょっとした有名人だよね?」
 
 「有名人処ではない。貴重な存在で、国の宝になる。俺の番で、最愛の人だ。」

 「いや、最愛のは、まぁ置いといて、そう!そんな存在が、初めて作った物を唯一再現出来る孤児院のクッキー!そうなると?買い求める人は、一定数いると、思うんだ。どう?」

 ははっ!ハルは凄いな。
 頭いいな!!

 その話を両親に伝える。


 父上は、絶句。
 母上は、うちの息子はなんて凄いの!

 と、しばらく固まっていた父上は、バレリを呼び、料理長に箝口令をしく。
 こうしちゃおれん!!
 叫びながら部屋から出て行った。

 その場に残った、母上。
 「ハルちゃんは、どこまでいい子なのかしらね。」
 窓の外を見ながら、ポツリと呟く。
 
 本当にな。
 ハルがこの先、色々な事に巻き込まれそうだが、俺はそんなハルを守る。
 決意を新たにしたのだった。
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