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      ジークバルト

 朝、ハルの様子がおかしかった。
 
 昨夜のキスのせいか?
 いや、俺が服を脱がし肌を撫でたから?
 恥ずかしかったのだろうか?

 違う。
 少し怒ってる。
 何故か、わからない。

 聞いて答えてくれるのだろうか?
 嫌い?そう思うだけで、胸が引きちぎられそうだ。
 怖い。

 いままで、俺より強い奴はいた。
そいつに挑む時にも、怖いだなんて思った事はない。
 今、怖いのはハルを失う事。
 ハルがこの国からいなくなったら?
 生きていられない。
 生きる意味がない。
 心が死ぬんだ。
 ハル、ハル、ハル、ハル
 大切な大切な、愛しい俺のハル。
 早く顔を見たい。
 抱きしめたい。キスしたい。抱きたい。
 ハル、お願いだ。俺の前からいなくならないでくれ。



 目の前の、書類の山が全然減らない。
 そして、宰相に怒られた。
 レオには、呆れられる。

 「ジーク、お前、幸せボケか?」

 「・・・・・」

 「うおぉぉい!ジーク!本当にどうしたんだ?」

 「・・・レオ、うるさい」

 「ジーク、ここは、皇帝陛下の執務室ですよ。言葉に気をつけなさい。」

 「・・・宰相閣下、申し訳ございませんでした。」

 「わかればよろしい。で、どうした?」

 「・・・いや、特には。」

 「はぁ、仕事してください。それ、終わらないと、帰れませんよ。」

 俺の前の書類の山を指差す。

 俺は、ハッとして、ものすごい勢いで書類を捌く。

 早く帰ってハルに会いたい。

 定刻より、少し遅くなってしまったが、書類の山は、消えた。
 まぁ、明日にはまた山のような書類が置かれるんだろうが、今日は、終わりだ。

 急いで、執務室から出ようと部屋から出て、王城の廊下を早歩きしてると、声を掛けられる。

 「サーヴァント公爵閣下!」

 「チッ」
 軽く舌打ちをしながら、返事をする。

 「リーシャス侯爵。」

 「もう、お帰りですかな?何やら番様が見つかったとか?本当のお話しですか?」

 面倒くさい。
 たぬき侯爵め!自分の娘を俺に娶らせようと、何度も、何度も、鬱陶しい。
 ハルが現れたから、何だと言うんだ。

 「ええ、それが何か?」

 「誠ですか!それはよろしゅうごさいましたな。ならば、うちの娘を第二夫人に、どうですかな?」

 「いえ、結構です。はっきり申しますが、私は番以外興味ございません。」

 では、失礼
 サッと踵を返して、我が家へ急ぐ。
 あの調子だと、屋敷に来そうだな。
 セバスに言っておこう。
 ハルに接触しようものなら、絶対許さない。

 屋敷に着き扉を開ける。
 あぁぁハルが居てくれた。
 笑顔でおかえりなさいって言ってくる。
 ハルを抱きしめる。あぁハルだ。
 愛しい愛しい俺のハル。
 ただいまのキスを額に送る。

 そのまま抱き上げて、食事をとる。

 朝と違い、いつも通りのハルだった。

 俺の考えすぎだったのか?
 食事を済ませて、部屋へ行く。

 そこで、俺は衝撃を受けた。

 ハルが俺にヤキモチを妬いていたのだ。
 何で?
 もう、それはそれは可愛い疑問だった。

 「ジークはカッコいいし、優しくて、強くて、、、そんな人が恋人が居ない訳ないもの。」

 って、くぅぅ嬉しい。
 ハルに褒められた。
 「その、、、あのキ、キスも慣れてる感じだったし、、、そう思ったら、前に彼女がいたのかなって、そうしたら、胸がムカムカして、、、そのジーク、ごめんね?僕の態度悪かったよね?」

 ハルが赤くなりながら話した内容が可愛い過ぎる。
 そんな風に思ってたなんて。
 「ハルが初めてだよ。」
 って言った時のハルの顔が、可愛くて、可笑しくて、なんて愛しいんだろう。

 彼女なんているわけない。
 俺はずっとずっと番だけを探してた。
 見つからなければ、1人で生きて行こうと思ってた。
 公爵家嫡男としては、失格だ。
 後継者が必須なのは、わかっていたが、番以外を娶ろうとは、思っていなかった。
 だから、後継者はヴィーとレオの子を何人か産んでもらって、その内の1人を後継者に育てようと思っていたんだ。
 
 だから、何をするのも、ハルが初めて。
これからも、キスするのも、抱く事も、ハルしかしない。
 いや、ハル以外出来ない。

 ハルは、僕もだよ。
 僕の初めては全部ジークのものだよ。

 そう言ってくれた。
 それがどれだけ嬉しい事か。
 大切に大切にするから、俺の側にいて。
 
 好きで、好きで、大好きでハル以外何もいらない。
 俺の最愛。
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