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    17、受付嬢の呟き


あれは、いつの事だったか。
社長の秘書の橘さんが、受付に来られて、
(何か失敗したかしら?)
と、内心ドキドキしていたら、
「明日、こちらに[フラワー凛]から、蓮様と、名乗る方がいらっしゃいます。社長の来客ですので、丁重にお願いします。」
「かしこまりました。ご来客の方を社長室にご案内すればよろしいのですね。」
「えぇ、花をお持ちだと思いますので、花瓶に生けるように伝えて下さい。」
「はい。」

始めは、社長の見合い相手かと、思っていたけど、違うみたい。

この会社の受付は、3人いる。
その中で、私が1番経歴は長い。
皆に、申し送りをしておく。
彼女達も、よく状況がわからない感じで、まぁ、来れば分かるわよ。
と、当日を迎えたんだけど、9時に訪問と聞いていたんだけど、10分前に来たわよ。

とっても可愛らしい子が!
花束を抱えて!
なんなの!この可愛い子!
周りがキラキラしてるわ!!
他の2人も固まってるわ。
落ち着くのよ私。

そして、まぁ声まで可愛い。
長年培った表情筋を駆使して、笑顔で対応出来たわ。
じゃないと、顔が崩れてしまう。

社長室に案内して、花瓶と水場の場所を教える。
笑顔で「ありがとうございます。」なんて言ってくれる。
なんて、いい子なのかしら!

て、ゆうか、社長とどんな関係性なのかしら?
歳も随分と若いし、社長と接点無さそうよね?
気にはなるが、とりあえず、受付に戻る。

やっぱり話題は、あの子!蓮君ね。
しばらくすると、蓮君がロビーに現れた。
受付の私達にきちんと、挨拶をして帰って行く。

「ねぇ、蓮君可愛過ぎない?」
「思った!そこらのアイドルより可愛らしいわ!」
「そうよね?えっ?社長……ショタ好き?
なの?」
「えぇ?ないわよぉ~いや、待って!今までお見合い何回もしてるわよね。どれも上手く言ってないけど。。そうなの?」
「わからないけど、でも、でも、お似合いじゃない?」
「えっ?男の子よね?」
「そこ、こだわる?」
「えぇぇー?いや、そうね。ありかも?」
「あるある!」

ここにも、腐った女子がいたのね・・・
まぁ、私もその1人なんだけど、ね?

そんな会話を楽しんでいたんだけど。
急に蓮君が、来ない。
社内が、ソワソワしてるのが分かる。
社内は、蓮君にメロメロなのよね。

ある常務は、
「蓮君が来たら、直ぐに知らせくれ。」
ある課は、
「蓮君は、いつ来るか聞いてるか?」
などなど、まぁ大変。

得意先のお客様には、
「この花は、誰が管理してるの?」
何度聞かれたか。
秘書の橘さんには、
「蓮君の名前は、出さないように。」
と、言われ、誤魔化すのが大変なのよ。

そして、蓮君が来た。
風邪をひいたみたいで、少し痩せたみたい
儚さ全開で、微笑む蓮君は、可愛らしさの中に、色気まで出てくるようで、腰砕けになりそう……
 
珍しく、社長が迎えに来てたわ。
何、あのカップル!
素敵すぎるわ!
 あぁぁ尊い。尊いわぁぁぁ!
私達に見えないように、囲い込む社長。
あれ、絶対蓮君の事好きでしょう?
社長の顔よ!顔!
溶けてるわ!デレデレじゃない!
まぁ、蓮君には気付かれてないようだけどね。


そして、ある話を聞いたの。
社長と蓮君が一緒に視察に行くと。
ある課から、聞いたのだけど、これは、、
何か、進展がありそうよね。

視察の次の日、
蓮君は、ニコニコ笑顔で私達に挨拶をしながら、社長室に行ったわ。

私達は、
「上手くいったんじゃない?」
「そう思う?」
「蓮君の笑顔みれば分かるわよ。」
「だよね!」
「社長、良かったわね。」
「本当に。」
私達は、ウンウンと頷く。

この会社は、本当にいい会社よね。
ほとんど入れ替わりはないし、新人が入っても、辞める事は、ほぼ無い。
社内の雰囲気が凄くいいんだけど、蓮君が花を飾りだしてからは、もっと良くなって社内が明るい。
まぁ、社長の人柄がいいと言うのも多いにあるんだけどね。
確か、お兄さんが居たと思うんだけど、あまりいい噂は聞かないな。

あっ!蓮君が降りて来て、受付に来る。
「あの、花を飾りたい場所があるんですけど、何か、置く台座ってありますか?」
「お疲れ様、蓮君。そうね、、、蓮君、一緒に来てくれない。」
そう言って、受付を他の子に頼むと、物置の部屋へ、蓮君を案内する。
「蓮君、この部屋の物はどれでもいいからね。いい物があればいいけど。」
「はい、ありがとうございます。」
そう言って、探し出した、蓮君に聞く。
「蓮君、花をどこに飾るの?」
「えっと、あの、エレベーターの所に。」
「エレベーター?」
「はい。エレベーターって待つでしょう?待ってる間に、花でも見れたらと。」
「あぁ、なるほど。」
「あっ!これ!いいですか?」
蓮君が選んだのは、ガラスの楕円形の花瓶だった。
「それがいいの?」
「はい。」
「じゃあ、台座を用意して置くから、花瓶持って行って花をお願い出来る?」
「はい。ありがとうございます。僕行って来ます。」
「はぁ~い。よろしくねぇ~」

それから、少しして、蓮君が花瓶を持って来たわ。
私は、思わず、ホゥと息を吐いた。
この子は、天才か天使なのかな?
とにかく、可愛い!
絶対、女子が好きなやつ!!
なんて、センスがいいのか。
「凄いわ!蓮君!可愛らしいわ!」
「ふふっ、ありがとうございます。これなら待ってる間に見て貰えそうですね。」
「見過ぎて、エレベーター乗り損ねそうねぇ?ありがとうね、蓮君。」
「いえいえ。喜んで貰って良かったです」

それから、蓮君は社長と一緒に降りて来てエレベーターの花を一緒に見てたわ。

2人の甘い雰囲気に、私達はもう悶える事しか出来ないわ。
しかも!会社の外まで見送る社長。
その時よ!
社長が、蓮君のおでこにキスしてるじゃないの!!?

社長・・・隠す気はないのですね。
まぁ、当たり前か。
そんな、社長だから。。。
隠すようなら、蓮君を愛でる会が許しませんけどね?!
社員全員、敵に回ります。

社長、蓮君と幸せになって下さい。
私達は、切に願っています。

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