上 下
10 / 30

10

しおりを挟む


       10、蓮


やっと、顔の腫れも治り、身体の痛みも良くなった。
さぁ、今日から仕事がんばる!

「蓮、今日から店に出るのか、大丈夫か無理はするなよ。」
「うん、ありがとう叔父さん。もう大丈夫だよ。少しだけ胸の所が痛いけど、普通にしてれば大丈夫。さて、がんばるよ!」
「無理は駄目だぞ。肋骨は多分折れてはいないだろうが、ヒビが入ってる。蓮、病院に行って診てもらった方がいい。」
「大丈夫、大丈夫。心配かけてごめんねでも、病院に行ったらね、、、」
「わかった。蓮がそう言うなら。でも、次はないからな。わかったな。」
「うん。わかってる。それじゃ早めに要さんの所に向かうね。」
「あぁ、気をつけて。いってらっしゃい」
「いってきます!」


僕は、ゆっくり歩きながら、
「叔父さんごめんね。」
無理矢理病院に連れて行く事も出来るのに僕が嫌がるから、家で手当てしてくれる。
だって、病院に連れて行かれたら、お父さんが警察に捕まってしまう。
それは、嫌なんだ。
僕が我慢すればいいだけだ。
でも、今回は酷かったな。
お酒の量も増えてるし。
困ったな。
また、叔父さんに相談してみよう。

さぁ、お仕事がんばるぞっ!

要さんの会社に着き、受付の人に挨拶する
「おはようございます。今日からまた、よろしくお願いしますね。」
「蓮君!大丈夫なの?風邪だって聞いたから。」
「はい。もうすっかり良くなりました。」
「そう、良かったわ。社長はじめ皆心配してたわよ。元気な顔が見れて良かった。また後で寄ってね。」
「はい。ご心配をおかけしました。ありがとうございます。また、後で!」

そして、エレベーターの所に行くまで、色々な人に声をかけられる。
皆優しいな。
嬉しくて笑顔になる。

最上階の要さんの居る部屋をノックする。
いつもは、秘書の橘さんが出てくるんだけど、今日は、要さんが迎えてくれた。
「おはよう!蓮君!具合はどう?」
「おはようございます。要さん。ご心配ありがとうございます。もう、大丈夫です」
「そう、良かった。」
「あ、そうだ。お見舞いありがとうございました。フルーツとっても美味しく頂きました。」
「口にあって良かった。では、蓮君お願い出来るかな?」
「はいっ!」

僕は、元気よく返事をして、花を飾る為に部屋に入る。

僕が、花を変えたりしている所を要さんがずっと見てるので、少し緊張しながら作業してると、
「社長、そんなに蓮君を見てると、蓮君に穴が空いてしまいますよ。はい、コーヒーでも飲んで待っててあげて下さい。」
と、コーヒーを要さんの前に置くと
要さんは、
「なっ!橘、何て事言うんだ!俺は、元気になって良かったなっ!って思っただけだよ!」
へぇ~要さん「俺」って言うんだ。
いつもは「私」って言うのに。
と、全然関係ない事考えてた、僕だった。

「もう、大丈夫なんだよね?」
と要さんが言うから、
「はい。もう大丈夫です。心配してもらいありがとうございます。」
「あまり無理しないでね。花を飾るのも、ここだけもいいからね。」
「大丈夫ですよ。色々な所を飾るのも楽しいですから。あ、あの、迷惑なら、、、」
「いや!迷惑なんて思わないから!会社も明るくなって、皆喜んでるよ。ありがとうね。」
そう言ってくれる要さんが、優しい笑顔で僕が嬉しくなる。

それからは、会社に花を飾って、店に戻り、仕事して忙しくしていた。
まだ、急に動いたりすると、胸が痛む時がある。
叔父さんには、
「あまり、無理をしたら、駄目だよ。力仕事は、叔父さんがやるから、蓮は、軽い物だけにするんだよ。」
叔父さんが気を使うのが、分かるから申し訳ないな。と、思いながらも言葉に甘えてしまう。

その日も、無理はしないようにと、何度も言われながら、要さんの会社に向かう。

いつも通り、花の水を変えたり、水あげしながら、仕事していたんだけど、ふと、足元のセロファンにあしが乗り、ズルッと滑りそうになり、身体に力を入れた途端に胸に激痛が走る。
「ウッ!」
と、胸を押さえて倒れた。
痛みで、気を失いそう。
「蓮君!蓮君!大丈夫か?救急車呼ぼう」
そう、遠くから聞こえる。
「ダメ、よ…よばな……で……」
僕は、多分そう言うと、完全に意識を失った。



ふっ、と意識が戻って目を開ける。
目の前には、要さんが泣きそうに心配顔で僕を見ていた。
僕は、ハッとして、胸を押さえながらゆっくり起き上がる。
要さんは、背中を支えてくれた。
「蓮君?大丈夫?」
「は、はい。僕、、倒れちゃったんですね。迷惑かけてごめんなさい。」
「全然迷惑じゃないから。そんな謝らないでいいから。送って行こうか?」
「い、いえいえ、大丈夫です。ありがとうございます。えっと、じゃあ僕、帰りますね。また、明日。」

そう言って部屋から出た僕は、自分の着ている服が乱れてないのを確認して、ホッとする。
要さんに見られたかな?
この身体を要さんに見られのは嫌だなぁ
嫌われるかな?
こんな身体、誰が好きになってくれる?
好き?
僕は、要さんに嫌われたくない。
何故?
僕が要さんが好きだから。
そうなんだ。
僕は、要さんが好きなんだ。
でも、待って!
要さん、男の人だよね?そうだよ。
人として好き。
ずっと側にいたい。
それって、恋愛感情。 
そうだ。
僕は、要さんが好きなんだよ。
優しくて、カッコよくて、ドキドキする。

でも、それは僕の心の中に、しまっておこう。
身分的にも、叶わないしね。
いいんだ。
僕は、要さんに会えるだけで幸せ。
その気持ちだけで、生きていける。
想うだけならいいよね。
大事に大事にしまっておこう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の恋人

ken
BL
僕は愛されている。 優しい僕の恋人。 大好きな、愛しい僕の恋人。 僕を愛してくれる。 気持ちいいと言ってくれる。 僕に触ってくれる。 いつも話しかけてくれるし、泣いていたら抱きしめてもくれる。 僕の作ったご飯を美味しいと言って食べてくれる。 こんなにも情緒が不安定な僕を、笑って許してくれる。 僕は愛されてる。 それなのにどうしてこんなに苦しいのだろう。

【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと
BL
ひょんな事から第3王子のエドワードの婚約者になってしまったアンドル。 容姿端麗でマナーも頭も良いと評判エドワード王子なのに、僕に対しては嘘をついたり、ちょっとおかしい。その内エドワード王子を好きな同級生から意地悪をされたり、一切話す事や会う事も無くなったりするけれど….どうやら王子は僕の事が好きみたい。 婚約者の主人公を好きすぎる、容姿端麗な王子のハートフル変態物語です。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。 攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。 なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!? ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

βの僕、激強αのせいでΩにされた話

ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。 αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。 β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。 他の小説サイトにも登録してます。

配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!

ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて 素の性格がリスナー全員にバレてしまう しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて… ■ □ ■ 歌い手配信者(中身は腹黒) × 晒し系配信者(中身は不憫系男子) 保険でR15付けてます

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。

処理中です...