精霊秘話

琴音

文字の大きさ
上 下
2 / 2

ひとりぼっち2

しおりを挟む
帰ってきて、母さんに心配された僕は人間界で感じたこと、やったことを沢山話した。母さんは困ったような顔をしながら僕の話をうんうんと相槌多めに聞いてくれる。せっかく人間界に行ったのに人に会うことが出来なかった話をすると母さんは何故か安心したような顔をした。
「今日は会えなかったけど明日は人里にたどり着きたいな!」
僕は明日も人間界に行くと話すと母さんはまた不安丸出しの顔をして言ってきました。
「明日は行かなくてもいいんじゃない?ほら、今日は沢山歩いて疲れたでしょう?べつにまいにちいかなくてもにんげんかいはにげないわよ?」
「でもまだ人間に逢えてないし...人に会って友達作るために行ったのに目的のもの時も果たせてないんだよ。友達が直ぐにできるとは思ってないけど、話してみたい!」
「この頑固なところは誰に似たのかしら。」
「べ、別に頑固じゃないよ!自分が悪ければ認めるし!相手の意見も尊重するよ!理由を述べて僕が納得出来たらね!でも母さん理由話してくれないじゃん!理由なく僕を停められるなんて思わないでよね!」
そう。母さんは理由を話さずに僕を止めようとしていた。人間界はそんなに危険な場所なのか。例えば悪い人間がいて僕をさらおうとするとか?でも、悪い精霊もいるし、たまに子供がさらわれたって話を聞かないこともない。そう考えると人間界も精霊界も余り変わらないのかもしれない。だって、色んな性格の人、がいるのは僕達精霊も変わらない。精霊にだって気の強いやつもいれば、弱い奴もいる、話しかけるのが得意なやつもいれば逆に苦手なヤツだっている。母さんが小さい頃聞かせてくれた人間界の話はそんな感じだった。その話を聞いたから僕は人間と仲良くなってみたい、そう感じたんだ。
「母さん、父さん僕は人という種族について何も知らない。母さんは昔言ったよね?知らないことは見て、触れて感じる。それが一番理解する近道なんだって。だから僕は人間界に行きたいんだ。」
「...」
母さんは不安を隠そうともせず僕をただ見つめるだけだった。

次の日
僕はまた門を通り人間界へ降りた。
昨日は青空が拡がっていて、暖かい中を冷たい風が吹いていたが今日は曇って灰色の空に気温は低め、そこに昨日と同じ冷たい風が吹いていて肌寒さを感じた。
「無、今日は昨日と違って寒いな。歩いてれば暖かくなるかな。」
なんて独り言を言いながら歩き始める。歩き始めて直ぐに空から水滴が落ちてきた。
「わっ、空から水が!これが母さんの言ってた雪?それとも雨?」
母さんは僕に人間界の話をする時まず天気というものの話から始めていた。人間界は精霊界と違ってその日その日で晴れていたり、空から氷の結晶?が降っていたり、水滴が降ってきたり色々するんだと教えてくれていた。精霊界はずっと、同じ気温で何も降ったりしないのに。
僕は、この冷たい水滴が降ってきたらどこかものの下に隠れるか、精霊界に帰らなきゃ行けない合図だと母さんが話してくれたのを思い出し、来たばっかりではあったが、帰ることにした。濡れすぎると、風邪という病にかかり、精霊は死ぬ危険があると母さんは言っていた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...