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本編
97.貧民街で白豚王子を巡る一悶着
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一夜明けて、黒狼王子は王宮での政務を終え、再び貧民街へと視察に訪れる。
黒狼王子一行が到着すると、そこには貧民達や難民達に混ざり作業する白豚王子の姿があった。
近付いていくと、黒狼王子目の前に貧民の少年チョコミントが立ちはだかり、敵愾心を露にして大声で問う。
「あんたか! ラズベリーを追い回してるって隣国の王子様は!!」
御共達が前に出て対応しようとするが、黒狼王子は手で制して少年に答える。
「いかにも、俺はショコラ・ランド王国の第六王子、ガトーだ。ラズベリーと言うのは、第一王子の事か? 名前が違うように思うが……」
「ラズベリーは運悪く悪名高い白豚王子と見た目がそっくりなだけで、中身は心優しい全くの別人だ! だから、ラズベリーを追い回すのはもう止めろ!!」
「俺は第一王子の悪名高い噂が事実だとは思っていない……だが、心優しく善良な事は同意する。しかし……」
少年が声を荒げる騒ぎを聞きつけ、貧民達や難民達が周囲に集まってくる。
「誰が相手だろうと、ラズベリーを虐めるような奴は絶対に許さないからな!」
黒狼王子を睨み付けて少年が大声で言い放つと、貧民達も口々に言い牽制する。
「そうだそうだ、ラズベリーに悪さする奴は許さんぞ!」
「ラズベリーを困らせるような奴は、俺達が追い返してやる!」
「王子様だろうが何だろうが、この鍛え抜いた筋肉で返り討ちにしてくれるわ!」
そんな言動や向けられる感情から、黒狼王子は白豚王子が貧民達から大切に思われている事がよく分かった。
白豚王子は黒狼王子の出現に驚き、隠れて見守っていたのだが、何やら勘違いして黒狼王子を責め立てる貧民達の姿を見て、慌てて止めに入る。
「うわーーーー! 待って待って待って、違うんだ! 彼は悪くないんだ! 僕が、僕が悪いんだよ! 僕が彼のお菓子を全部食べちゃったからーーーー!!」
「なっ! 違っ――」
白豚王子の明け透けな言動に黒狼王子は驚き、咄嗟に弁解しようと思ったのだが、身元を隠している様子の白豚王子と、魔鉱石の事情が複雑なだけに目が泳いで言い淀んでしまう。
「――くも、ない……な……」
「はぁ? なんだそれ? 菓子を食べられたくらいで、延々と追い回してたのか?」
「……ぅ……うむ……」
貧民達からはじとーと胡乱な視線を向けられ、難民達からは可哀想な子を見るような目を向けられ、黒狼王子は居た堪れない気持ちになって呻く。
「くっ……そんな目で俺を見るな……」
「ガトー殿下も悪気は無かったんですよ」
「ただちょっと誤解されやすい質なんです」
御共達に妙なフォローまでされて、黒狼王子は堪りかねて白豚王子に視線を向け訴える。
「逃げなければ追い回したりしなかった……俺は話がしたかっただけなんだ……」
「話たかっただけなのか? ラズベリーも話しくらい聞いてやれば良かったのに」
「え、そうなの? 話くらいならいくらでも……」
「本当か? なら、話たい事が沢山あったんだ……」
黒狼王子はホッと胸を撫で下ろし、白豚王子に近付こうと歩みを進めていく。
白豚王子は黒狼王子に近付かれるほどに青褪めていき、プルプルと震えだす。
(あ、ヤバい……話しするのは良いけど、近付かれるのは不味いよ! あの美味しそうな匂い嗅いだら、また襲いかかっちゃう!? ど、ど、ど、どうしよう……)
白豚王子はもうこれ以上とんでもない事をしでかして嫌われたくないと焦り、目前まで来ようとしていた黒狼王子に向かって――
「ご、ごめんなさい! やっぱり怖いーーーー!! 近付くの無理ーーーー!!!」
――大声で叫び、白豚王子は脱兎の如く逃走していった。
その場に取り残された黒狼王子は愕然として呟く。
「……そんな……怖くないと言ったのに……」
悲愴な面持ちで黒狼王子は立ち尽くし、周りにはどんよりと重苦しい空気が覆う。
異様なほどに落ち込む黒狼王子を見て、御供達はどう慰めるのが正解か分からず、オロオロとするばかり。
絶望感漂う余りの落ち込みように、周囲に集まっていた人々も黒狼王子が少々不憫に思えてくる。
見かねた少年が励まそうと、黒狼王子に声をかける。
「あ、えぇと、なんと言うか……その、元気出せよ……」
「………………」
少年が背中をポンポンと軽く叩くが、黒狼王子は心ここにあらずといった様子で、反応が薄い。
「あ、そうだ。ラズベリーが作った菓子あるけど、食べる?」
「……いただく」
優しい少年の提案に黒狼王子は頷いて、重苦しかった空気が少しだけ和らいだのだった。
◆
黒狼王子一行が到着すると、そこには貧民達や難民達に混ざり作業する白豚王子の姿があった。
近付いていくと、黒狼王子目の前に貧民の少年チョコミントが立ちはだかり、敵愾心を露にして大声で問う。
「あんたか! ラズベリーを追い回してるって隣国の王子様は!!」
御共達が前に出て対応しようとするが、黒狼王子は手で制して少年に答える。
「いかにも、俺はショコラ・ランド王国の第六王子、ガトーだ。ラズベリーと言うのは、第一王子の事か? 名前が違うように思うが……」
「ラズベリーは運悪く悪名高い白豚王子と見た目がそっくりなだけで、中身は心優しい全くの別人だ! だから、ラズベリーを追い回すのはもう止めろ!!」
「俺は第一王子の悪名高い噂が事実だとは思っていない……だが、心優しく善良な事は同意する。しかし……」
少年が声を荒げる騒ぎを聞きつけ、貧民達や難民達が周囲に集まってくる。
「誰が相手だろうと、ラズベリーを虐めるような奴は絶対に許さないからな!」
黒狼王子を睨み付けて少年が大声で言い放つと、貧民達も口々に言い牽制する。
「そうだそうだ、ラズベリーに悪さする奴は許さんぞ!」
「ラズベリーを困らせるような奴は、俺達が追い返してやる!」
「王子様だろうが何だろうが、この鍛え抜いた筋肉で返り討ちにしてくれるわ!」
そんな言動や向けられる感情から、黒狼王子は白豚王子が貧民達から大切に思われている事がよく分かった。
白豚王子は黒狼王子の出現に驚き、隠れて見守っていたのだが、何やら勘違いして黒狼王子を責め立てる貧民達の姿を見て、慌てて止めに入る。
「うわーーーー! 待って待って待って、違うんだ! 彼は悪くないんだ! 僕が、僕が悪いんだよ! 僕が彼のお菓子を全部食べちゃったからーーーー!!」
「なっ! 違っ――」
白豚王子の明け透けな言動に黒狼王子は驚き、咄嗟に弁解しようと思ったのだが、身元を隠している様子の白豚王子と、魔鉱石の事情が複雑なだけに目が泳いで言い淀んでしまう。
「――くも、ない……な……」
「はぁ? なんだそれ? 菓子を食べられたくらいで、延々と追い回してたのか?」
「……ぅ……うむ……」
貧民達からはじとーと胡乱な視線を向けられ、難民達からは可哀想な子を見るような目を向けられ、黒狼王子は居た堪れない気持ちになって呻く。
「くっ……そんな目で俺を見るな……」
「ガトー殿下も悪気は無かったんですよ」
「ただちょっと誤解されやすい質なんです」
御共達に妙なフォローまでされて、黒狼王子は堪りかねて白豚王子に視線を向け訴える。
「逃げなければ追い回したりしなかった……俺は話がしたかっただけなんだ……」
「話たかっただけなのか? ラズベリーも話しくらい聞いてやれば良かったのに」
「え、そうなの? 話くらいならいくらでも……」
「本当か? なら、話たい事が沢山あったんだ……」
黒狼王子はホッと胸を撫で下ろし、白豚王子に近付こうと歩みを進めていく。
白豚王子は黒狼王子に近付かれるほどに青褪めていき、プルプルと震えだす。
(あ、ヤバい……話しするのは良いけど、近付かれるのは不味いよ! あの美味しそうな匂い嗅いだら、また襲いかかっちゃう!? ど、ど、ど、どうしよう……)
白豚王子はもうこれ以上とんでもない事をしでかして嫌われたくないと焦り、目前まで来ようとしていた黒狼王子に向かって――
「ご、ごめんなさい! やっぱり怖いーーーー!! 近付くの無理ーーーー!!!」
――大声で叫び、白豚王子は脱兎の如く逃走していった。
その場に取り残された黒狼王子は愕然として呟く。
「……そんな……怖くないと言ったのに……」
悲愴な面持ちで黒狼王子は立ち尽くし、周りにはどんよりと重苦しい空気が覆う。
異様なほどに落ち込む黒狼王子を見て、御供達はどう慰めるのが正解か分からず、オロオロとするばかり。
絶望感漂う余りの落ち込みように、周囲に集まっていた人々も黒狼王子が少々不憫に思えてくる。
見かねた少年が励まそうと、黒狼王子に声をかける。
「あ、えぇと、なんと言うか……その、元気出せよ……」
「………………」
少年が背中をポンポンと軽く叩くが、黒狼王子は心ここにあらずといった様子で、反応が薄い。
「あ、そうだ。ラズベリーが作った菓子あるけど、食べる?」
「……いただく」
優しい少年の提案に黒狼王子は頷いて、重苦しかった空気が少しだけ和らいだのだった。
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